毎月第3木曜日の夜に、THE FACTORYで行う少人数(原則定員10名)のワークショップ「Workshop@THE FACTORY」。いまメディア業界でもっともアツいと言えるDMP(データマネジメントプラットフォーム) について学ぶスペシャルな勉強会を開催中です。
前後編に分けてパブリックDMPとプライベートDMPを無料で比較検討できちゃうお得なワークショップ。後編は、プライベートDMPを提供する、シーセンス株式会社(以下シーセンス) 代表取締役社長 江川亮一氏 を講師に迎えて、DMPを活用してパブリッシャーが考えていくべきビジネスモデルについて研究しました。

前回のおさらい(パブリックDMPとプライベートDMP)

まず、リボルバーの小川より、前回のワークショップにおけるDAC 西橋講師のお話を振り返り、DMPとはなんなのか、パブリックDMPとプライベートDMPの違いはなんなのか、そしてDMPを使って期待できるビジネスモデルとはなんなのかの総括を行いました。

画像: 前回のレポートをおさらい

前回のレポートをおさらい

ざっくり要点を書くと、

DMP(データマネジメントプラットフォーム)は、ユーザーに関係するデータを一元的に集約して管理するプラットフォームで、以下の二つに大別される。
【プライベートDMP:1st Party データを管理】
自社メディアの訪問ユーザーのデータを管理するためのDMP
【パブリックDMP:3rd Party データを管理】
自社メディア以外の外部のユーザーのデータを管理するためのDMP

DMPを導入することで、パブリッシャー(メディア運営者)は、以下の3つビジネスモデルを期待できる。
A) 外部在庫を活用した広告商品開発(PTD=パブリッシャートレーディングデスク)
B) オーディエンスレポートの開発/提供
C) データ販売による広告主のマーケティング支援

詳しくは、下記リンクから、レポートをお読みください。

オーディエンスデータを解析し活用することの重要性を一貫して訴求

DMPにはパブリックDMPとプライベートDMPがあり、前回のワークショップで取り上げたAudienceOneはパブリックDMP。今回の講師である江川さんのシーセンスのDMPはプライベートDMP、という位置付けになります。

シーセンスの前身はエンタープライズサーチエンジンのファーストサーチ&トランスファ

「シーセンスの本社はノルウェー。エンタープライズサーチエンジンを開発していたファストサーチ&トランスファがマイクロソフトに買収されたあとに、その創業メンバーが独立して作った会社である」と江川さんは自社を紹介しました。
「プライベートDMPを利用することで、メディアは1st Party Data(ファーストパーティデータ=自社メディアの訪問ユーザーのデータ)を活用したビジネスを行うことができるようになります。シーセンスは創業から一貫してサイト訪問者=オーディエンスのデータの重要性に着目し、活用することを提案してきた会社です」

パブリックDMPのデータはDMP提供会社のモノだが、プライベートDMPのデータはメディアのモノ

メディアにしてもEコマースにしても、自社サイトの訪問者のデータを集め、解析することによって「データを活用し個々の趣味嗜好、デバイス情報を貯蓄することで、パーソナライズ化を実現、最適な商品・広告をレコメンド」することができる、江川さんは指摘します。
「シーセンスは、いまでは世界16億人分のユーザープロファイル、国内では450サイトのオーディエンスデータを蓄積しています。もちろんそれらのデータは各メディアの運営者の所有物であり、シーセンスはデータをお預かりして解析を行うことによって、その活用手段と機会をご提供しているだけです」

ちなみに、プライベートDMPに格納していくデータは、例えばメディアにログインしてもらうことで得た具体的なユーザー属性(性別、メールアドレス、年齢、職業など)、つまり1st Party Dataとなりますが、パブリックDMPと組み合わせて使うことで、さらにオーディエンスデータの拡張を行うことが可能です。
パブリックDMPでは、ユーザーの趣味嗜好や行動から類推した類似ユーザー予測を行っています。これをLAL(lookalike)と言いますが、このLALで拡張したオーディエンスデータと自分たちのデータを紐づけて管理することができるのです。

画像: パブリックDMPのデータはDMP提供会社のモノだが、プライベートDMPのデータはメディアのモノ
画像: シーセンス株式会社(Cxense Co. Ltd.)の江川社長 www.cxense.com

シーセンス株式会社(Cxense Co. Ltd.)の江川社長

www.cxense.com

GoogleとFacebookによるデジタル広告予算のDuopoly(複占)に対抗するには?

「世界のデジタル広告市場は拡大している」と江川さんは言います。江川さんによれば、スポンサーとなる多くのブランドや企業のデジタルマーケティング予算は拡大し続けています。しかし多くのパブリッシャーはその恩恵を被っていない、と江川さんは言うのです。

それはなぜか?

答えは、成長するデジタル広告予算のほとんどをGoogleとFacebookの”二強が独占(複占=Duopoly)”してしまっていて、従来のパブリッシャーはデジタル予算拡大の恩恵を被っていないからです。

Google、Facebookの2社はデジタル広告において他社を大きく引き離している。パブマティックがeマーケター(eMarketer)とモルガンスタンレーのリサーチを独自に分析したところによると、Google、Facebookはデジタル広告費の46%に当たる890億ドル(約8兆9000億円)を握り、54%に当たる1060億ドル(約10兆6000億円)を残りのパブリッシャーが分け合っている。しかも、2社でデジタル広告費の伸びの85%を占めている。

日本国内のメディアの多くは、その収益源をアドネットワークプラットフォームに依存していますが、実際には拡大し続けているように見えるデジタル広告市場の伸び代のほとんど(上記引用を元にすると伸び代の85%)をGoogleとFacebookが抑えているので、その他のアドネットワークに流れている予算は、残りの15%にすぎません。

その少ない枠の中では、多くの中間業者が存在し、それぞれがマージンを取っていくので、結局パブリッシャー自身の実入りは非常に小さくなる。だから儲からない、と江川さんは言います。

「出版社や新聞、テレビ局など、インターネット以外の既存のパブリッシャーは、紙やテレビなどの従来の媒体への広告予算が削減されていくのに対して、なすすべがありませんでした」と江川さんは指摘します。

さらに、最近話題になっている分散型メディアについても、江川さんは否定的な意見を述べます。
「ただコンテンツを流すだけでは意味がなく、自分たちのところにユーザーをもってこなくてはいけません。そうでなくてはパブリッシャーはマネタイズする手段を持つことができません」

ではどうしたらよいのか??

「米国ではアドネットワークに依存するメディアはほとんどありません」と江川さんは言います。
「アドネットワークに頼っていては儲かりません。彼らに依存するのではなく、自社の力で広告主と直接対話し、ブランディング広告(純広告)を勝ち取るほかありません」

アドネットワーク依存を脱却し、ブランディング広告(純広告)への回帰を目指せ

アドネットワーク依存をやめ、ブランディング広告を収益の柱にするー。

確かに理想ですが、広告主を獲得するにはどうするか?
それには、広告主に、パブリッシャーと直接コンタクトし、広告を制作し、配信することのメリットを理解してもらわねばなりません。広告主にメディアのeCPM(注1)の価値を認めてもらわねばならないのです。

(注1)eCPMとは、実際はインプレッション課金でないクリック課金型の広告をCPMに換算して、課金形態の違いによらずに、インプレッションに対してどれだけコストがかかるかを測るために使用する指標です。広告コスト÷インプレッション数×1,000(回)で算出できるため、意味はCPMと同じです。インプレッション課金ではない広告のCPMがeCPMです。

「メディアにはその価値があります」と江川さんは言います。「メディアには多くのオーディエンスがあり、そのデータを解析していくことで、広告主にアピールすることが可能です」

しかし、多くのメディアは自分たちの価値を知らない、それが問題です、と江川さんは続けます。「メディアが持つ多くのコンテンツとユーザーを活用すべきであり、自分たちはなにに強みを持つコンテンツを持っているか、自己分析することが必要です」

江川さんは「多くの中間業者によってマージンが削り取られていくとはいえ、アドネットワークからはいってくる収入はメディアにとって大きいので、すぐはやめられないでしょうが、一刻も早くブランディング広告にシフトしていくべきです。われわれは、広告主とメディアの距離を近くしたい。そのためにこそ、DMPをはじめとするシーセンスのさまざまなソリューションを試していただきたいと思います」と語りました。

パブリッシャートレーディングデスクこそパブリッシャーのデジタルマーケティングが目指すべき場所

とはいえ、もちろんDMPは魔法の箱ではないので、そこにデータを貯めただけでは何にもならない、と江川さんは注意を促します。

「プライベートDMPを導入すれば、CRM(顧客関係管理=Customer Relationship Management)を使うより簡単に、それ以上のデータが集まるのではないかと簡単に考えたりすることが多いが、それは間違い。また、パブリックDMPを導入して外部データを集めれば、自社のデータにはない発見があるのではないか?と安易に期待したり、導入さえすれば広告出稿が増えるのではないかと考えたりしがちです」と江川さんは指摘します。

しかし、と江川さんは続けます。「実際にはDMPを導入してから、それをどのように使いこなしていくかが重要です」デジタルマーケティングにおけるトレンドをもっと理解していかなくてはならず、パブリッシャーはデジタルマーケッターとしての知見がもっと必要だし、逆にマーケターはコンテンツをどう作るか、どう生かすかについてもっと考えていく必要がある、と江川さんは言います。
コンテンツを作る編集サイドと、広告を作ったり販売したりするマーケティングサイドの双方が歩み寄り、互いの知見の接点を増やさなければならないと江川さんは言うのです。

「パブリッシャーは、デジタルエージェンシーに代わりコンテンツ提案まで行うことが必要。つまり自分たち自身がトレーディングデスクとなるべき」と江川さんは言います。

パブリッシャーはDMPを導入し、使い倒して、パブリッシャートレーディングデスク事業に取り組むべき

江川さんは、デジタル時代のパブリッシャーが一刻も早く意識するべきいくつかのポイントをあげました。
オーディエンスを知ること
・ロイヤルカスタマーはだれ?
いわゆるパレートの法則のように、大抵のメディアでも、2割のユーザーが8割の利益を作っているものです。ロイヤリティをもってリピート訪問してくれる読者たちの属性や嗜好をパブリッシャーは正確に知っておく必要があります。

カスタマー視点の取り組み(パーソナライゼーション)
・UU(ユニークユーザー数)・PV(ページビュー)などの既存指標からの脱却
これまでのメディアはUUやPVのみを増やす努力をしてきましたが、実際にはどんなロイヤルカスタマーがいて、どんなコンテンツを読んでいるか、どれだけの時間を使ってくれているかなどのデータを把握する必要があります。
・アノニマスユーザーからメンバーシップへ
ロイヤルカスタマーを作り、さらにロイヤルティを向上させるには、”単によく訪問してくれる読者”ではなく”お得意様”として扱う必要があります。つまりログインユーザーを増やし、メンバーシップを取得してもらうことが重要です。これによって、自社メディアを訪れる1st Party Dataの精度を上げ、より価値のあるデータとすることが可能になります。

広告主との価値共有
上記のような施策を行なっていくことで、広告主には、広告の成果レポートや記事を読んだユーザー属性の共有などが可能になります。メディアの価値を広告主に理解してもらうことができるのです。

このように、戦略的にDMPを活用していくことで、広告主と直接コンタクトして、ブランディング広告(≒スポンサードコンテンツ)の制作や配信を行う、パブリッシャートレーディングデスクという事業を行う道が拓けてきます。

江川さんはこう続けます。「コンテンツを制作する編集者たちは、どうやってロイヤリティカスタマーを作り、会員を増やしていくか、タイアップにどういうオーディエンスをもってくるか、あるいはどういうセグメントを設けてどのような施策を売ったかを、マーケティングサイドの担当者と一緒に考えていく必要があります」

その結果として、パブリッシャーは「PTD(パブリッシャートレーディングデスク)の実現を目指すべき」と江川さんは結論づけました。

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