2017年の「日本オープン」で、90年ぶりの快挙となるアマチュア優勝にあと一歩まで迫った東北福祉大学一年生、19歳の金谷拓実くん。いったいどんなゴルファーなのか? その横顔をよく知る二人に話を聞いた。

松山英樹の背中を追いかける、東北福祉大ゴルフ部の“後輩”

「東北福祉大のゴルフ部には、谷原秀人、宮里優作、池田勇太、松山英樹と強い卒業生が多くいます。松山にも、在学中から“世界を目指せ”と指導をしてきましたが、現在在籍している部員たちは、その松山の背中を見て、松山のように世界で活躍するためには今なにをすべきか、それを考えるよう指導しています。もちろん、ゴルフ部1年の金谷も同じです」

そう語ってくれたのは、金谷くんが在籍する東北福祉大学ゴルフ部の阿部靖彦監督。実は金谷くんは高校卒業後、男子ツアー出場権をかけた試合(QT/クオリファイングトーナメント)に出場している。要するに、すぐにプロになろうと挑戦したが、結果は163位と出場権獲得に至らず、東北福祉大の門を叩いたという経緯がある。そのこともあり、阿部監督は金谷くんに対し、「自分になにが足りないかをよく知っている」と評価する。

「私は常々、将来像を思い描き、それを実現するためにはなにが足りないかを考えるよう指導していますが、金谷はそれを自分でよくわかっている。それが何かといえば、技術もメンタルもそうですが、彼の場合はやはり体です。体づくりを中心に据えて、ゴルフ部生活を送っている姿からは、自分に足りないものをしっかり把握できている、と感じます」

阿部監督は、2017年4月に金谷くんと松山がラウンドを共にした際の面白いエピソードを教えてくれた。金谷くんが松山に、「阿部監督に(体づくりのために)入らないくらいメシを食べさせられましたよ」と笑って言うと、松山が「俺もだよ」と返したというのだ。

松山も、大学入学当時は今よりはるかに細かった。阿部監督の指導のもと、食事やトレーニングを通じて体を大きくした松山は、細かった体が大きくなるについて、世界のトップへと上り詰めていった。体づくりの大切さを誰よりも知っている松山は、まだ線の細い金谷君に、昔の自分を重ね合わせていたのかもしれない。

打ち方も攻め方もシンプル。ひとつことしかやらないから、その精度が凄い

もともと金谷くんは2015年に17歳で日本アマチュアを制するなど、早くから頭角を現し、将来を嘱望され続けているゴルファー。しかし、アマチュアの頂点に立ったからといって、すぐにプロで活躍できるかといえばそんなことはない。

松山の背中を追いかけながら東北の地で黙々と体づくりに励んでいる19歳の若者は、なぜ日本オープンを“勝ちかける”ことができたのかプロ目線での意見を聞いてみたい。というわけで、金谷くんと同じ広島県出身で、親交のある田村尚之プロにも話を聞いてみた。

「彼はゴルフが非常にシンプルなんですよ。打ち方もシンプルだし、攻め方もシンプル。それがまさに彼の強さの秘密なんです」(田村)

田村プロは、金谷くんを「いろいろやらずに単純なことを突き詰められる子」と評する。たとえば、パターのフェース面にボールの幅だけ残して爪楊枝を貼り、芯でしっかりと打つ練習。極めて地味な練習だが、金谷くんはこのような練習をずっとひたすら続けることができる。

画像: 「芯で打つためにフェースに2本つまようじを貼って打つ練習をしています」金谷拓実くん

「芯で打つためにフェースに2本つまようじを貼って打つ練習をしています」金谷拓実くん

「彼のゴルフをスウィング面から見れば、フェースターンをせずになるべくボールを真っすぐ飛ばす打ち方をしています。そのスウィングで、シンプルにコースを真っすぐ攻める。自分ができないことはやらず、できることだけをひょうひょうと続けることができるんです。実は、こういうシンプルな攻め方が、日本オープンのような難しいセッティングで活きるんです。それが、今回の活躍の最大の要因ではないでしょうか」(田村)

そして、田村プロは、今回の敗北は金谷くんにとって素晴らしい経験になると、こうまとめてくれた。
「僕は、金谷くんは今回負けてかえって良かったとさえ思っています。技術的、メンタル的な部分での収穫もそうですし、今回負けたことで、大学に在籍する残りの3年間、より一層体づくりに励もうというモチベーションになったはずだからです。彼は、95%で満足せず、100%を目指すことができますから、今回の敗戦を糧に、世界に通ずる精度を磨いてもらいたいと、そう思います」

170センチ、67キロの決して現状で大きいとは言えない体格で、日本オープンのビッグタイトルに片手をかけた金谷拓実くん。来年、文字どおり一回り大きくなってタイトルを奪いにくる姿を、楽しみに待ちたい。

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