ゴルフスウィングに「正解」はあるのか? プロゴルファーのスウィングも人それぞれ個性があるし、結局はその人に合ったスウィングが「正解」に思える。しかし、統計的データ分析をゴルフに応用して研究し、プロゴルファーにもアドバイスするという専門家、ゴウ・タナカ氏は、「スウィングには統計的データと科学が導き出した“正解”があります」という。異色のゴルフ理論家に、詳しく話を聞いてきた!

超一流“だけ”に共通するインパクトのカタチがあった!

ーー統計学と言われても、ゴルフとどう結びつくのか、パッとイメージできません。まず、統計学からわかることを教えてもらえますか?

ゴウ・タナカ氏(以下、タナカ):そうですね、統計とは、仮説を立ててデータを取り、なにか特徴がないか分析することを言います。ゴルフの話をする前に、まずは野球を例にとってみましょうか。たとえば大リーグで活躍するダルビッシュ有投手が、初球に投げる球種はなにか、100球分のデータを取ったとします。100球のうち90球がストレートで、9球がスライダー、1球がスローカーブだったとしましょう。どの球種を狙うと、ヒットが打ちやすいと思いますか?

ーーストレートでしょうね。

タナカ:ですよね。「なぜそうなるのか」という理由はさておいて、データを分析することで、とりあえず優位性のある結論を導き出すことができるのが、統計的データ分析なんです。たとえば、ダルビッシュ投手の初球はストレートとスライダーが半々だというデータが出たら、「初球は絞りきれないから見逃すほうが良い」という結論が出るかもしれません。その統計的データを、科学・理屈・数値などでより明確に説明できるようにする。これが、私の提唱する統計的データと科学の融合した形です。

ーーでは、ゴルフにおける統計的データ分析について、具体的に教えてください。

タナカ:まず私は仮説を立てました。ゴルフにおいてもっとも重要なことはスウィング。ならば、超一流のプレーヤーのスウィングには、なんらかの共通点があるのではないか? ということです。では、それをどうやってデータ分析すればいいのか。まず、スウィングをアドレス、グリップ、ハーフウェイバック、トップ、切り返し、ダウンスウィング、タメ、軸、インパクト、フォロースルー、フィニッシュに細分化しました。これらの中から、超一流に共通するパーツがないかを、調べていったんです。

ーー面白いですね。それで、どのようなパーツが共通したのでしょうか?

タナカ:実は、当初はなかなか見つからなかったんです。超一流と定義した世界ランク30位以内の選手と、ランダムにピックアップしたアマチュア、そして成績が安定しないプロとを比較したのですが、どのパーツにも、はっきりとした相関は見出せなかったんです。その結果に私は違和感を覚え、超一流の定義を「世界ランク30位以内の選手」から「世界ランク30位以内を5年の選手」に絞り込み、再度共通するパーツを探したところ、ある発見があったんです。

ーーそれは?

タナカ:インパクトの瞬間の形は、超一流に共通点があることがわかったんです。それは、インパクトの瞬間に腕とシャフトにより作り出される角度です。腕とシャフトが一直線のときを180度と考えた場合、超一流はその角度が160度以内であることがわかったんです。

画像: タイガー(左)と松山(右)のインパクト。腕とクラブが作る角度はともに160度以内。その角度は驚くほど似ている!

タイガー(左)と松山(右)のインパクト。腕とクラブが作る角度はともに160度以内。その角度は驚くほど似ている!

ーーなぜ、その角度に注目したんですか?

タナカ:タイガー・ウッズと自分のスウィングを比較したときに、その点が大きく異なっていたからです。具体的には、私の角度は170度で、10度以上違ったんです。分析したタイミングで20名いた超一流のうち、その角度の枠から外れていたのはわずかに一人。95%が160度以内に収まっていました。この割合は、データ的には非常に強いデータだと言えるんです。

ーー大発見ですね! ただ、そう思う一方で、冷静に考えると「一流プレーヤーは手首の角度をキープしている」というだけ、という気もしてしまうのですが……。

タナカ:おっしゃる通り。この角度を重要だと言っている理論はほかにも当然あります。しかし、ここで重要なのは“優先順位”なんです。統計的データ分析の結果、スウィングにおいてはインパクトの形が160度以下であることが重要であることがわかっただけでなく、それがほかのどのスウィングの瞬間より重要なポイントであるということがわかったことに価値があるんです。私はこの理論を、「R160(ルールヒャクロクジュウ)」と名付けることにしました。

ーーでは、なぜ160度以内のインパクトがいいんでしょうか?

タナカ:ここから先は科学と理屈の出番ですね。R160を満たすということは、クラブが本来の形状の理想通りの角度でボールに当てられるということなんです。180度でインパクトした場合、クラブヘッドはトウダウンした状態になりますが、160度以内ならトウダウンは起きません。インパクトでクラブはトウダウンよりもトウアップの状態のほうが良いことも、この分析結果からは言えるんです。角度がある程度あったほうが力を入れやすいなど、ほかにも色々理由はあります。

ーー非常に興味深いです。

タナカ:このR160を強く意識した練習をしていたプレーヤーに、片山晋呉選手がいます。優先順位はともかく、片山選手はインパクトの角度を重要視していたのがわかります。

画像: (常に手元の高さを意識して練習する片山。インパクトでR160も当然満たしている ※写真は2014年)

(常に手元の高さを意識して練習する片山。インパクトでR160も当然満たしている ※写真は2014年)

タナカ:片山選手の安定した成績はいうまでもありませんし、R160も当然満たしています。では、松山英樹選手は? 彼も、当然のように満たしています。超一流選手には超一流選手である理由があり、R160はその理由を示しているんです。

写真:姉崎正、岡沢裕行

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.