第一生命保険株式会社(以下、第一生命)と日立が「InsTech」によるイノベーション創出をスタートさせました。その第1弾が約1,000万人の医療ビッグデータの分析による「生活習慣病に起因する将来の入院可能性とその日数を予測する定量評価モデル」の開発です。これにより、従来なら健康状態を理由に加入できなかった保険や特約の引き受け基準が見直され、加入範囲を拡大できます。今後も顧客要望にきめ細かく応える商品開発やサービスの拡充が期待されています。

日本の保険業界にも押し寄せるデジタル化の波

デジタル技術を活用して新しいイノベーションを創出する——。これは多くの企業にとって共通のテーマだといえるでしょう。実際に日本の保険業界にもデジタル化の波が押し寄せています。その先端を走るのが、第一生命です。同社では保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた“InsTech(インステック)”という概念を2015年に提唱し、グループ最優先の戦略課題として推進しています。

2015年12月には、社内の各部門から約30名の精鋭を集めた「InsTechイノベーションチーム」を発足。「ヘルスケア」「アンダーライティング(保険の引き受け・査定)」「マーケティング」の3つのビジネス領域で、ビッグデータやAIなどデジタル技術を活用して生命保険業界独自のイノベーションを創出する取り組みを行っています。

その背景には、超高齢社会が進む一方で、健康寿命の延伸やQOL(Quality of Life)の向上といった要請が高まっている社会環境の変化があります。「従来の生命保険は、病気にかかってからでは加入することができなかったり、通常よりも高い保険料を支払うことになるなど、保険を必要としている人ほど、加入しにくい状況にありました。保険会社の社会的使命を果たすために、InsTechによって一人でも多くのお客さまに、他のお客さまと同じ保険料でご加入いただけ、安心をお届けできる保険をご提供したいという想いがあったのです」と、同チームでアンダーライティングに関わる商品・サービスの開発を担当する板谷 健司氏は語ります。

協業パートナーに日立を選定
ビッグデータ分析で新たな価値を創出

テクノロジーの進展もInsTechの取り組みを後押しします。これまで保険会社は、被保険者が加入時に提出する健康診断データや、告知情報、給付実績などをもとに保険の引き受けリスクを判断してきました。ですが、医療ビッグデータの分析環境が整備されてきたことで、さまざまな分析軸から、どのような経過で病気になり、どう悪化(あるいは改善)していったのかという経過予測を迅速に得ることが可能となってきたのです。

とはいえ、最先端のテクノロジーやノウハウが必要なInsTechの推進を、1社だけの力で展開するのは容易ではありません。そこで同社は社外との協業や、他業態と連携したエコシステムなど、外部の開発力やアイデアを積極的に取り入れるスタンスをとっています。

「さまざまな業界で異業種連携のビジネスモデルが立ち上がる中、生命保険だけが従来のままで良いとは考えていません。むしろ他業種の中にこそ、われわれが気づいていない新たな視点やヒントが隠されている。イノベーションには互いの相乗効果が必要なのです」と、板谷氏は社外コラボレーションの必要性を語ります。

新しい査定基準の見直しで年間2,000人もの追加引き受けが可能に

その一環として2016年9月からスタートしたのが日立との共同研究です。

両社が約1年の歳月をかけて生み出した最初の成果が「生活習慣病に起因する入院の可能性とその日数」を予測する定量評価モデルです。これは、第一生命が蓄積してきた加入者約1,000万人の医療ビッグデータと、保険の引き受けに関する医学的知見やノウハウに、日立が保有する医療費予測技術(※)で培った分析ノウハウを組み合わせたもので、高血圧性疾患、急性膵炎およびその他膵疾患、糖尿病、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、脳血管疾患、悪性新生物の8つの生活習慣病が対象となります。従来、これらの持病や既往症があると、保険や特約が引き受けられないことが多かったのです。しかし同じ病名が付いたとしても全員が同じリスクを持つわけではありません。引き受け可能かどうかの詳細な判断が、今回の定量評価モデルで可能となったのです。

「高血圧や糖尿病に代表される生活習慣病は日本で最も有病者と予備群の多い病気です。重症化が進めば脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる状況につながるだけに、お客さまの不安も非常に大きい。そこで一人でも多くのお客さまに保険に加入していただき、将来の不安解消につなげていくためのチャレンジとして、今回のモデル開発を行いました」と、社内ドクターとして保険引き受け時の査定を担当する安達慶氏は語ります。

本モデルの活用により、2017年7月から、これまで保険への加入が難しかった高血圧治療中の顧客の一部を引き受けできるように査定基準が見直され、新基準適用後の約1カ月間で、300名を超える顧客が新たに加入できました。安達氏は「年間では、これまでお引き受けが難しかった約2,000名のお客さまにご加入いただけると予測しています」と述べます。

※ 日立が日立健康保険組合と共同開発した、生活習慣病の発症率と医療費総額を予測する技術。本技術の開発にあたっては、レセプト(診療報酬明細書)や特定健康診査のデータを、個人を特定できないよう匿名化した上で活用しています。

画像: 新しい査定基準の見直しで年間2,000人もの追加引き受けが可能に

顧客のQOLを一生涯サポートする新たなビジネスモデルの開発をめざす

ただし、ここまでの道程は決して平坦ではありませんでした。今回の共同研究では両社が相互の知見を持ち寄りながら、さまざまな試行錯誤を重ね、徹底的な検証作業が行われたといいます。そのために第一生命で引き受け査定を担当する契約医務部に、日立の分析エキスパートが年間を通して常駐。保険で扱われる加入者データの特性(加入時の情報と一定期間が空いた入院時などの情報)と査定条件をリアルな現場業務を通して理解しながら、日立健康保険11万人の健診データとレセプトデータから導き出した連続性のある医療データ分析のノウハウを擦り合わせ、複数の病気を持つ場合の入院リスク分析、分析結果のエビデンスを見える化する手法などを新たに開発していったといいます。

「高血圧の症状があっても、通院や投薬で適切にコントロールされていれば、生活習慣病による入院・手術のリスクは健常な方と比べてもそれほど差はないはず——その仮説が今回の入院日数予測モデルで実証できたのは非常に大きい。また、複数の病気を持つ方の健康リスクも加味した予測が行えるようになったのも画期的です」と、安達氏は日立との協創を高く評価します。

この成果を受け、第一生命と日立は2017年9月から共同研究の第2弾もスタートさせています。この研究では、加入者一人ひとりの健康状態の推移や生活習慣の変化に着目。保険加入時の“定点”における健康状態の評価のみではなく“経年”の健康状態を評価することで、より適切な引き受け範囲の見直しや、疾病予防・重症化予防、健康づくりの強化などに向けたサービス開発をめざしていくことになるといいます。

「これまで生保は、万一の際の資金的なお手伝いがビジネスモデルの中核でした。しかし今後は、お客さま一人ひとりのQOLや健康寿命を延ばす一生涯のパートナーとしての役割が大きくなっていくでしょう」と板谷氏。同社は日立とともにさらなるInsTechの取り組みを見据えているようです。

画像: 板谷 健司氏 第一生命保険株式会社 契約サービス部 兼 商品事業部 兼 契約医務部 部長

板谷 健司氏
第一生命保険株式会社
契約サービス部 兼 商品事業部
兼 契約医務部 部長

画像: 安達 慶氏 第一生命保険株式会社 契約医務部 部長(医務)

安達 慶氏
第一生命保険株式会社
契約医務部 部長(医務)

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