脳に不可逆的な神経損傷をもたらす恐れがある「脳しんとう」

脳しんとうは、ボクシング、アメリカンフットボール、アイスホッケー、ラグビー、サッカー、レスリング、野球、柔道、体操、乗馬、スキー、モーターバイクなど、コンタクト(接触)スポーツや転落して頭を打つスポーツでよく起こります。

※アメリカンフットボールから端を発した脳しんとう問題は全米スポーツ界全体に及んでいる
写真:Adam Bettcher/Getty Images

2016年に日本で公開された「コンカッション」という映画をご存知でしょうか。
ウィル・スミスが演じた主役は、医師で検視官の実在の人物です。NFLを引退した選手の変死解剖に携わり、死亡原因が繰り返しのタックルによって生じた脳の病気であることを発見し、論文に発表。しかし、NFLは国民的スポーツの威信にかけてあらゆる手を使って反論する。選手の健康と真実を明らかにするために1人の医師が巨大組織と闘う社会派ストーリーは、フィクションではありますが事実をもとにしています。

映画のタイトルの「コンカッション」(CONCUSSION)は「脳しんとう」という意味です。脳しんとうを繰り返すことによって、慢性的な進行性の脳変性(慢性外傷性脳症)が起こります。映画で扱ったのは慢性外傷性脳症であり、ボクシングのパンチドランカーでよく知られています。

また、慢性外傷性脳症に至らないまでも、脳しんとうが回復しないまま試合に復帰し、再度頭部に衝撃を受けて脳しんとうを起こしてしまった場合には、セカンドインパクト症候群という脳に重大な後遺症が残るケースも起こり得るとも言われています。
このように脳しんとうは、実は、選手生命のみならず、その後の人生をも大きく変えてしまうリスクの高い障害なのです。

客観的な評価方法がないことによるデメリット

しかし、脳しんとうの程度はもさまざまであり、その評価は、選手の自覚症状でしかできません。試合復帰に関しても選手からの報告に頼るしか、判断する方法がないのが現状です。
これは決して客観な評価法ではありません。
著名な脳神経外科医であり、スポーツドクターとしても活躍する朝本俊司(牧田総合病院医師)は、アイスホッケーのチームドクターとして、脳しんとうからの試合復帰の判断の難しさを唱えています。

「脳しんとう後の試合復帰への判断は、これまで選手の自覚症状しかありませんでした。選手が大丈夫だと言えば試合に出し、まだプレーはできないと言えば試合には出せません。そのため、1試合1試合のプレーが来期の契約につながる選手では無理をしてでも試合に出ようとします。これは選手生命のことを考えると絶対に防がなければなりません」

「逆に、年間契約で年棒が保障されている海外選手では、本当は治っていたとしても、脳しんとうの症状があるといえば試合に出ないというケースもでてきます。これは試合に出場して活躍してもらうために契約を結んでいるチームにとっては、非常にマイナスです」

脳しんとうが客観的に評価できないことは、選手にとってもチームにとってもマイナス。そこで朝本ドクターは、簡便で正確な脳しんとうの評価法の確立に取り組んでいます。

「脳しんとうの選手の呼気データから脳しんとうが可視化できるのではないかと、ボクシング選手の試合前後の呼気ガスを採取・計測するなど、現在、研究を進めています。また、この方法はドーピングにも応用できる可能性があります。例えば、エリスロポエチンは赤血球を増やして酸素運搬能(持久力)を高めることから禁止薬物に指定されていますが、一般には貧血治療として使われており、その投与前後での呼気ガスを採取・分析しています。実用性が確立されれば、競技直後に呼気ガスを採取するだけで、その場でドーピングの判定が可能になりますし、アスリートへの負担も軽減されます。アスリートのためになるスポーツ医学を我々は進めていきたいと思います」

朝本ドクターは、昨年12月に設立された一般財団法人グリーンスポーツアライアンス・ジャパン理事を務めています。グリーンスポーツアライアンス・ジャパンは、サスティナビリティ(継続可能性)社会を目指した問題解決に、スポーツを通じて貢献していく活動を推進していく公益法人です。その取り組みはスポーツ医科学にもわたっており、スポーツ医科学の分野は、朝本ドクターが中心となって、現在、脳しんとうをはじめ、客観的な評価法の確立を進められています。
一般財団法人グリーンスポーツアライアンスの詳細は下記まで。
朝本ドクターには「健康一番けんいち」14号にて、脊柱管狭窄症の顕微鏡手術をご紹介いただいています。

画像: 一般財団法人グリーンスポーツアライアンスが4月に開催したキックオフフォーラムにて、スポーツ医科学面の取り組みを紹介する朝本俊司医師

一般財団法人グリーンスポーツアライアンスが4月に開催したキックオフフォーラムにて、スポーツ医科学面の取り組みを紹介する朝本俊司医師

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