池はゴルフコースに必ずと言っていいほどあるもの。でも、なんで池があるか、わかりますか? 「そんなの、コースを難しくして、戦略性を高めるためでしょ?」と思う人が多いはずで、もちろんそれは正解なのだが、もうひとつ「池がなければならない理由」が存在する。その理由とは一体!? 詳しい話を日本ゴルフコース設計者協会会員の佐藤毅(たけし)さんに聞いた。

ゴルフ場の池は「ダム」だった!?

パー3でのティショットでダフって目の前の池に。グリーンを狙ったショットが曲がって池に。ショートカットを狙ったティショットが飛距離が足りずにやっぱり池に……。およそゴルファーを自認する人で、池に入れた経験のない人はいないはず。

かくもゴルファーを苦しめる池だが、コースの景観を良くし、記憶に残らせるためにも必要不可欠なもの。マスターズが開催されるオーガスタナショナルGCの16番ホールや、三井住友VISA太平洋マスターズが開催される太平洋クラブ御殿場コースの18番など、池の配置が印象的なホールはいくつもある。

画像: 池の配置が印象的な太平洋クラブ御殿場コースの18番。現在は松山英樹監修のコース改修工事が実施中。18番の池は右奥まで拡張され、さらにスリリングな展開を生み出す予定だという

池の配置が印象的な太平洋クラブ御殿場コースの18番。現在は松山英樹監修のコース改修工事が実施中。18番の池は右奥まで拡張され、さらにスリリングな展開を生み出す予定だという

ゴルファーを苦しめ、かつその目を楽しませる悩ましい存在である池だが、もうひとつ、日本のゴルフ場には池を配置しなければならない理由が実はある。日本ゴルフコース設計者協会会員の佐藤毅さんに聞いた。

「防災上の理由です。昭和48年頃から、行政からの規制が強まり、各都道府県別に独自の指導要項が作成されました。そのなかで大雨などで敷地内に水が貯まることで土砂を伴った洪水が発生することを防ぐため、調整池の設置が義務付けられ、いかに水の勢いを殺して地区外に放出できるかが求められたのです」(佐藤)

コースに水が貯められていないと、下流の河川への雨水の流出量が増え、洪水のリスクが増えたり、土砂災害のリスクが増える。それを防ぐために、コースには調整池の設置が義務付けられたのだという。これには、日本の狭い土地のなかでゴルフコースを作ろうと思ったら、平坦な土地は限られることから山などの高地に作らざるを得なかったという事情が背景にある。つまり、ゴルフ場にある池には「ダム」としての機能もあるということだ。

もちろんそして、これはゴルファーの目には見えない部分だが、池の「深さ」にも秘密があるという。

「コースをデザインするときには、たとえば谷越えホールのような場所には、景観を度外視して(貯水に特化した)深い池を配したり、逆に戦略性を高めるためや景観を良くするための池は、浅くして、その分面積を広くしたりと工夫をします。こうした工夫によって、実用性と景観の美しさをすり合わせていったのです。こういったことはデザイン段階から綿密に決めています」(佐藤)

コースの敷地に応じて、ためておくべき水の量も決められている。そのため、見えないところには池というよりも「ダム」そのものもあるという。その上で、行政からの指導に応えつつ、出だしの1番ホールには池を配さずに難易度を下げ、最終ホールに近づくにつれて池を配置されるように位置を調整し、ゴルファーを苦しめたり目を楽しませたりするのが「コース設計家の仕事です」と佐藤さんは言う。

日本のゴルフ場における池は、防災上の理由で必ず設置しなければならない貯水池やダムとしての役割が根底にあり、景観の美しさやコースの戦略性という部分は、コース設計家が行政的な制約をデザインに置き換えたものなのだ。

制約の中で、美しさを追求する。こういったモノの作り方は、いかにも日本らしいと言えるのではないだろうか。次回コースに行ったら、少し立ち止まって“憎っくき”池をじっくりと眺めてみては?

(2018年5月22日12時50分一部誤字修正致しました)

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