■ロシア・ワールドカップ
 グループステージ2節 B組
イラン 0-1 スペイン
得点:(ス)ジエゴ・コスタ

スペインに敗れ、勝ち点を得ることができなかったイラン。第3戦、ポルトガル戦に突破をかける(写真◎Getty Images)

積極的アンチフットボール

 生前、たびたび辛辣な言葉で守備的なサッカーを批判したヨハン・クライフなら「アンチフットボール」と、この試合の前半を評しただろうか。イランは自陣ゴール前で籠城戦を決め込んだ。前半のスタッツでは、スペインのボール保持率が73%でイランは27%。パス数もスペインの415本(成功354)に対して100本(成功54)。数字上もゲームを支配していたのは、スペインだった。
 ただ、イランにはイランの流儀がある。徹底守備も、強い意志が根底にあればこそ。スペインとの戦力差を考えれば、それは最も勝ち点を得る近道に違いなかった。タレント力を持たざる者が、その差を埋める最善策として選んだ手段だったわけだ。

 象徴的だったのは、43分のシーン。スペインのサイド攻撃に対してイランはボックス内に10人が入って対処した。何としてもゴールを守りぬくという強い意志を感じさせた。ハーフコートゲームになる時間も長かったが、前半はまさに、イランの思惑通り。0-0でやり過ごすことに成功した。残り45分あまりを守り切れば、勝ち点1を手にできる。ここまではイランのプラン通りゲームを進めていたと言える。

 しかし、この日の相手はスペインだった。圧倒的なボール支配から、後半はあの手この手で攻めに出る。サイド攻撃、ワンツーによる中央突破、2列目からの飛び込みにサイドの選手のカットイン。さらに大きなサイドチェンジでイランの守備陣を揺さぶっておいて、穴を見つけるやすぐさまそこを突いていく。グラウンダーもあれば空中からもゴールをうかがう。
 代表チームの大会では、スペインの存在が他国の守備ブロックの強度を高めてきた側面がたぶんにあるが、その上をいくべく、スペインも攻め手を増やしているのだろう。

多彩な攻めに膝まずく…

 やがてスペインの波状攻撃の前に、イランの守備ブロックがほころび始める。スペインの圧力に、それまでほぼ完ぺきだった集中守備にばらつきが生じ始めたのだ。そして54分、試合を決めるビッグプレーが生まれる。その主役は大会後にヴィッセル神戸でプレーすることが決まっているイニエスタだった。 

 ダビド・シルバからパスを受け、ドリブルで中央へ進出するや、エリア内で相手DFとポジション争いをするジエゴ・コスタにやわらかいパスを送る。シュートを打ちやすいように配慮した極上の一本。D・コスタは反転しながらトラップしてシュートを放つだけでよかった。
 そのシュートは一度は相手DFの足に当たってしまうが、その跳ね返りが再びD・コスタの足に当たってそのままゴールイン。欲しかった先制点をスペインが手にした。

 その後、点を取りにいかざるを得なくなったイランは前半とは打って変わって攻めに転じ、何度も決定機をつかむ。その迫力たるや、アジア最強の名にふさわしいもの。結局オフサイドで取り消された62分のFKの場面は、ゴールへの気迫でスペインの手練れDF陣を上回っていた。
 だが、1点が遠かった。アジア人として初めて欧州リーグで得点王に輝いたアリレザ・ジャハムバフシュ(17-18オランダリーグ得点王)が左サイドを突破してクロスを送った83分の場面も、中央でわずかにシュートが合わず。
 
 終盤はスペインがパスを回し続け、巧みに時間を使って試合終了の笛を聞いた。イランの堅い守備、さらに攻撃に転じた際の迫力を存分に感じさせるゲームだったが、スペインの、イニエスタの壁は高かった。
 
 イランは第3戦、ヨーロッパ王者ポルトガルとのゲームに、同国史上初の決勝トーナメント進出をかけることになった。

文◎佐藤 景 写真◎Getty Images

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