「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月27日~9月9日/ハードコート)の男子シングルス準々決勝。

 世界1位のラファエル・ナダル(スペイン)は、この日の試合をお粗末な形で始めた。

 ナダルが0-6でセットを落としたのは、これまで彼がプレーした「282」のグランドスラム大会での試合で4度目に過ぎない。0-6を記録したほかの3度の機会では、彼はその試合に負けていた。しかしこの試合では、4時間49分を擁し、最後まで決して楽にはならなかったとはいえ、何とか挽回して勝つことに成功した。

 ディフェンディング・チャンピオンで第1シードのナダルは、その悲惨な出だしと、ほかの躓きから回復して、第9シードのドミニク・ティーム(オーストリア)を0-6 6-4 7-5 6-7(4) 7-6(5)で倒し、今季のグランドスラムで3大会連続となる準決勝進出を決めた。

 ナダルは水曜日の午前2時に終わった、非常にフィジカルなこのシーソーゲームを、まさにぎりぎりで制した。

「あらゆる面で、非常に要求の厳しい試合だった」とナダルは言った。彼は金曜日の準決勝で、2009年チャンピオンのフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)と対戦する。

「最後に勝負を分けたのは、ちょっとした運だった」とナダルは言ったが、どれくらい緊迫し、競った試合だったか? 

 最後のタイブレークで5-5となり、敗戦まであと2ポイントというところに立たされていただけでなく、ナダルは最終的に合計獲得ポイントで、166対171と、ティームに劣っていたのだ。

「テニスは、ときに残酷だ」とティームは言った。彼はこの敗戦を「僕がプレーした初めての本当に英雄的な試合」と呼んだ。

 ティームのオーバーヘッドがアウトになって試合が終わったとき、俳優のベン・スティラーを含め、ナダルのゲストボックスにいた皆が飛び上がって勝利を祝った。ナダルはネットを乗り越えてティームを抱擁しにいき、それからお詫びと励ましの言葉を囁いた。

「僕はドミニクのために本当にすまないと思う」とナダルは騒々しい観客たちに向かって言った。

「彼はツアーでの親しい友人だ。素晴らしい人間であり、素晴らしいプレーヤーだ」

 試合後の記者会見では、ティームはうっすらと笑いながらこう言っていた。

「うーん、彼が本当にすまないとか、残念に思っているとか、思わないけどね」

 やはりナダルの勝利に終わった6月のフレンチ・オープン決勝と同じ顔合わせとなったこの試合。ナダルにとってUSオープンでは、当時世界1位だったノバク・ジョコビッチ(セルビア)を決勝で破った2013年以来となる、トップ20の選手に対する試合だった。

 ややショッキングな試合の出だしでは、ナダルがこの手の試合ではステップアップの準備ができないかのように見えていた。ティームは、ウィナー数で13対3と大きく上回ったおかげもあり、第1セットの最初の31ポイントのうち24ポイントを取っていた。

 ナダルの偉大なライバルで第2シードのロジャー・フェデラー(スイス)が、同じように湿気の高いコンディションの中、4回戦でジョン・ミルマン(オーストラリア)に番狂わせを食らった24時間前のことを思い返さずにはいられなかった。ナダルが32度を超える暑さと50%の湿度の中で、あまりに大量の汗をかいていたために、ベンチの横には、エンドチェンジのたびに積み上げられる白いタオルの山があった。

 ティームは、ナダルを勝利するために駆けずり回らせた。どのように?

 ティームのグラウンドストロークの深さと強さは、ナダルが通常、ほかの対戦相手に対して打っているショットと同じだった。つまり、相手から時間とスペースを奪っていたのだ。

 さらに、月曜日に25歳になるティームはサービスの調子もよく、ファーストサービスを入れたポイントのすべてを取り、リターンも問題なく対処していた。

「あの第1セットのあと、試合はより普通になったよ」とナダルは言った。

 ナダルは、何がまずかったのかを割り出すのにかなり時間がかかったが、その後の彼は(観客に息を飲ませた)体をぶつけるような、壮観で激しいベースラインからのラリーでティームと張り合うようになった。それでも、この戦いはナダルにとって、挑戦で満ち満ちていた。

 ナダルは第3セットで先にブレークされたが、そこからタイに追いついた。第4セット6-5からティームのサービスゲームでデュースにこぎつけ、勝利まであと2ポイントと迫ったが、アウトになるかに見えたボールに飛びつき、それをネットにかける形でフォアボレーをミスしてしまう。このミスは、ナダルの頭にこびりついていたかもしれない。というのも彼は、続くタイブレークでひどいプレーを見せたのだ。

 第5セットでナダルは5-5から、0-40と3つのブレークポイントを手にしたが、ティームは続く5ポイントを取って、サービスをキープした。

 ナダルがのちに明かしたところによれば、それは「気持ち的に打撃だったが、僕はただ、前に進み続けた」。そう、彼がいつもやっているように。

 ナダルは、ニューヨークでこのあたりまで勝ち上がったときには、通常、躓かない。彼は今やーーベスト8まで勝ち上がった場合はーー7度連続でUSオープン準々決勝に勝ったことになる。彼が準々決勝で負けた唯一のケースは、2006年まで遡るのだ。

 ナダルはフラッシングメドウでの4度目のタイトル、グランドスラム通算18回目の優勝を目指して突き進んでいる。

 もう一つの準々決勝は、第3シードのデル ポトロが第11シードのジョン・イズナー(アメリカ)を6-7(5) 6-3 7-6(4) 6-2で下して勝ち上がった。

 このデイタイムに行われた準々決勝で、イズナーは体を二つ折りにし、膝に肘をついた。顔をしかめ、頭を振る彼は、今いる場所でないどこかにいたいと思っているように見えた。エネルギーを搾り取る暑さの中で、ずるずると引き離されていった。

 デル ポトロとナダルのツアーでの対決は、来たる準決勝で17度目となる。現在ナダルが11勝5敗でリードしており、その中にはグランドスラム大会で実現した、ここ3対戦での3勝も含まれている。

 ナダルは昨年のUSオープン準決勝、今年のフレンチ・オープン準決勝、そして、やはり今年のウインブルドン準々決勝における5セットのスリルあふれる対戦で、いずれもデル ポトロを倒している。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はラファエル・ナダル(スペイン/左)との5セットマッチの試合に敗れ、コートを去るドミニク・ティーム(オーストリア/右)。時計は午前2時過ぎを指している。(撮影◎毛受亮介)

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