最近仕事が忙しかったから。手首が痛くて。スウィング改造中だから。ついつい口をついてしまうのがゴルファーの持病・言い訳病だ。この言い訳病、実は予防することができる。ゴルフマナー研究家・鈴木康之の著書『ゴルファーのスピリット』から、ある老医師から教わった言い訳病の予防法を紹介。

言い訳は言ってあげるもの

ヨーロッパに「言い訳は嘘より悪い」という説があるそうです。罪深い嘘より悪いとはずいぶんと誇張ですか。

言い訳はそれによって同情を求めます。しかしほとんどの場合、うじうじが丸見えで同情は得られず、聞く人の中に「だからなんなのよ」の蔑視すら芽生えますから、おおむね逆効果です。ゴルフは己のミスショットと仲良く付きあうゲーム。そのことに早く気づかないと言い訳は持病になります。

朝の開口一番、「仕事が忙しくて一カ月もクラブを握ってないのよ」という種まきから始まって、深酒、寝不足、寝違え、腰痛、深爪、もう歳だ、きのう孫のお守りをさせられた、キャディが悪い、道具が合わない、鳥がうるさい、鯉が跳ねた、世に言い訳はつきまじです。

言い訳で忘れられないのがとあるお医者さんです。格別に優しいので、キャディたちからも慕われていました。もう八十半ば、いまは具合を悪くして聴診器もゴルフクラブも遠退いた日々ですが、十五年ほど前までは毎週日曜、ホームコースの朝イチ組の常連でした。

私のフェアウェイのボールが深いディボット後にはまっていました。ダウンブローに叩けば出るという知識はありましたが、腕が及ばずドダフリでわずか五十ヤード。言い訳が出そうになる前に深い息を吐き出すと、背後から「ディボット跡からナイストライだ」と先生の一声が掛かりました。

画像: 「ディポット跡からナイストライだ」の一声は同伴者のプレーを見ているから掛けられる

「ディポット跡からナイストライだ」の一声は同伴者のプレーを見ているから掛けられる

バンカーのボールが目玉でした。やっと出ただけで、グリーンには乗らず、舌打ちしたいところなのですが、頭上から先生の「大目玉なのによく出したなぁ、さすがぁ」の一声に、「どうも」と機嫌よく礼を言うことになりました。

ミスした時の優しい一声は、人の一打一打をちゃんと見ているから間合いよく掛けられるもの。はじめはそのラウンド態度に教えられました。

ある日曜日、運悪く他のメンバーたちに第一組目をとられました。さらに運が悪いことに第一組目はスロープレーの四人でした。私たちはクラブでも早いほうで有名。待ち待ちが続きました。七番のパー3。ティアップして待つこと五分間。待たされているのは四人とも同じですが、イライラが一番募るのはティアップして待つオナーの私です。素振りにも飽きてきます。ようやく旗竿が立てられます。スコアカードを覗きながらノソリノソリと下りていく。アドレスして待つ私も愚かです。案の定、ボールはティペッグと土と一緒に飛び散り、前のクリークに飛び込み自殺です。

「最後のノソリノソリがヤスさんには致命的な一刺しだったなぁ」に「いやいや、待てない私がまだまだ未熟」と笑って誤魔化してはみたものの、腹の中の沸騰はお医者様にはお見通しです。

その頃から先生の言葉に気づき、名医の医術が分かってきました。ゴルファーの言い訳は言ってはいかん、言わせてもいかん、誰かが見ていて先に言ってあげなきゃいかん。それは予防医療なのでした。

「ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.