上写真=リングイン直前の眼差しは、まさに戦士! 対リカルド・ロドリゲス(アメリカ)戦(2017年5月21日)より 

会場のボルテージが一気に最高潮に達するのが「選手入場」。彼ら彼女らは、その日のために用意したお気に入りのコスチュームに身を包み、ぽっかりと光に照らし出された決闘場へと、一歩また一歩とゆっくり進んでいく。
「闘争心をかきたてるため」という者もいれば、「逃げ出したくなる気持ちを抑えるため」という者もきっといるだろう。
 1対1の戦いの場に向かう背中を後押ししてくれる──。選手たちは、それぞれの感性をフル稼働して、ふさわしい入場曲を選んでいる。
 曲調も多彩、歌詞のある曲であれば、その歌詞に込められたメッセージも。選手のセンスがあふれ、戦士たちの心情をなおいっそう理解する上では、入場曲はわれわれ第三者にとっても欠かせないアイテムだ。
 入場曲に込められた想いを選手自身に語ってもらう。第1回は、“モンスター”井上尚弥(大橋)。勇壮なインストルメンタルは、さらなるトップ・オブ・ザ・トップへと羽ばたく彼自身の現況にピッタリの名曲だ。

『Departure』佐藤直紀
~TBS系ドラマ 日曜劇場「GOOD LUCK!!」オリジナル・サウンドトラック~より
※佐藤氏は、いまや日本のドラマ・映画音楽になくてはならない存在の作曲家。WBC世界バンタム級チャンピオン、山中慎介が入場曲として使用していた『龍馬伝』のテーマ曲も同氏によるものだ。

意味は「出発」。
 言葉の意味合いと曲調がすごくフィットしたのが復帰戦(2015年12月29日、対ワルリト・パレナス=当時、フィリピン)で、その試合から使い始めました。

右拳負傷→手術を経て、1年ぶりにリングに戻ってきたパレナスとの1戦。井上尚弥は、この試合に賭ける想いを入場曲に込め、豪快な2回KO勝利を演じてみせた

 あの曲を知ったのは、笠康次郎さん(現K&Wジム・チーフトレーナー)の引退試合(2008年8月14日、対方波見吉隆=伴流)で笠さんが使っていて。たしか自分が中学生のときだったかな。

 自分がいた小さなジム(ナカムラジム)で練習していたメンバーでは、笠さんとあと2人しかプロの選手がいなくて、ちっちゃな世界で見てたから、「スゴイ人」という存在でしかなかったんです。

 当時、笠さんは畑山(隆則)さんの真似をしていて(笑)、ジムでは「カッコいい」存在。まあ、本人には言いたくないですけどね(爆笑)。言うと、調子に乗るから(爆笑)。
 バンダナつけたり、シューズにフリンジつけたりしていて、とにかくカッコよかった。

 とにかく壮大な曲で、調べたら意味合いもいいので、「使おう」ということにしました。

入場曲が流れ始め、会場に姿を現した瞬間、ボルテージは一気に沸騰する 12戦目の河野公平(ワタナベ)戦(2016年12月30日)より

※井上尚弥はプロデビュー戦(2012年10月2日、対クリソン・オマヤオ=フィリピン)から7戦目のサマートレック・ゴーキャットジム(タイ)戦(2014年9月5日)まで、WHAM!(ワム!)の『FREEDOM』を使用。8戦目のオマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦(2014年12月30日)だけ、韓国の人気グループBIGBANGの『BIGBANG』を採用した。

 WHAM!(ワム!)の『FREEDOM』は、デビュー戦の前にみんなで車に乗っているときにYouTubeとかで入場曲にする曲を探していて、「ノリ的にいいね!」みたいな話になって……。

 最初はマイケル・ジャクソンも候補になっていたんですよ!
その世代の方からは、「WHAM!に戻して!」っていう声もよく聞くんですが、すみません。『Departure』から変える気はないんです。

プロデビュー戦。さわやかな楽曲に乗って、フレッシュにリングに上がった。Tシャツ1枚というコスチュームも、いまとなっては初々しい

当時、最速記録となる6戦目で世界奪取した2014年4月6日のWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ(対アドリアン・エルナンデス=メキシコ)。WHAM!の曲調と、井上尚弥の笑顔が非常にマッチしていたが、これが世界初挑戦の入場とはとても思えない

WHAM!では最後の入場となった7戦目。同時に減量が苦しかったライトフライ級とも決別する試合となった

唯一、BIGBANGの曲で入場した8戦目のWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ、ナルバエス戦。世界的名声を得る名王者を圧倒しての2階級制覇はまさに「ビッグバン(宇宙的爆発)」だった

WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)の演出と『Departure』は最高にマッチした(2018年10月7日)

画像: 観客席内に設置されたステージに立ち、振り返って1万大観衆にアピール。鳥肌立ちまくりの瞬間だった

観客席内に設置されたステージに立ち、振り返って1万大観衆にアピール。鳥肌立ちまくりの瞬間だった

取材_本間 暁  写真_ボクシング・マガジン

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