日本代表としてドラコン世界大会に11度の出場を果たし、世界10位になったことがあるプロゴルファー・南出仁寛。身長178センチと一般的な身長より少し高い程度だが、432ヤードという日本記録を出したこともある。そんな南出に同世代のゴルフスウィングコンサルタント、吉田洋一郎が話を聞いた。そこで見えてきたのは「ときに非常識であること」の重要性だった。

走るように打つってどういうこと?

ドラコンで432ヤードの日本記録を持つ南出仁寛さん。身長は私と同じくらいで平均よりちょっと高いくらいですが、400ヤード弱のパー4で何度もワンオンしたことがあると言います。

パー4では前の組がホールアウトするまで待たなければいけない南出さんの飛距離はまさに異次元です。現在同じ40歳(南出さんが一学年上)ということもあり、以前から気になる存在でした。一般的なスウィングではどんなに振ってもあそこまでの距離は出ない。なにか特別な意識や体の使い方があるのではないかと思い、話を聞きに行きました。

南出さんが提唱しているのが「スプリント打法」という打ち方です。陸上競技の用語で「短い距離を全力で走りきる」という意味のスプリント。どのような意味合いが込められているのでしょうか。

画像: 走る動きを取り入れた南出の「スプリントスイング」。バックスウィングでは右足を踏み込み、ダウンからインパクトにかけては左足を踏み込む(撮影/西本政明)

走る動きを取り入れた南出の「スプリントスイング」。バックスウィングでは右足を踏み込み、ダウンからインパクトにかけては左足を踏み込む(撮影/西本政明)

「体の回転を速めるためにもっとリズミカルに速く下半身を動かすことができれば、ヘッドスピードも上がると思いました。そこでいろいろな人に話を聞いたり体の使い方を指導してもらう中で、走るように動かすことを考えついたのです」(南出、以下同)

今年の夏、南出さんに立命館大学でテキサス女子大学のヤン・フー・クォン教授のスウィング分析を受けてもらいました。実際にスウィングの計測をしてみると、左右ではなく上下に力を使っていることが分かったのです。まさに走るように地面を蹴る力がとても強いスウィングでした。

画像: 南出プロにクォン教授のスウィング分析を受けてもらった

南出プロにクォン教授のスウィング分析を受けてもらった

ヘッドは右から左に動くのに、力の向きは上下というのはちょっと分かりにくいと思うので捕捉します。南出さんは切り返しで左足を強く踏み込み下方向に力を加えます。踏み込みをすると、その反動(地面反力)で左ひざをはじめとした左サイドが急速に伸びあがります。首や頭を軸とすると、その軸の左側が急激に上がり、右側が下がります。首の付け根を支点として肩のラインがシーソーのように動くのです。

「左右への体重移動」では飛ばせなかった過去

今でこそこういった上下動の動きは、PGAのトッププロなどにもよく見られるようになってきました。しかし我々がゴルフを習った20年前は、左右への体重移動がもっともクラブを速く動かす方法だと信じ込まれていたのです。南出さんは一生懸命に右から左への体重移動に取り組んでいたといいます。

「プロゴルファーを目指して競技に出ていたころの飛距離は270~280ヤードくらいでした。横への体重移動を意識してスウィングしていましたが当然飛ばないですし、下半身の負担も増えるので怪我にもつながりやすかったです」

画像: 432ヤードの日本記録を出したことがある南出プロにスプリング打法について吉田洋一郎が話を聞いた(写真は左が吉田洋一郎、右が南出仁寛)

432ヤードの日本記録を出したことがある南出プロにスプリング打法について吉田洋一郎が話を聞いた(写真は左が吉田洋一郎、右が南出仁寛)

当時はそのようなレッスンが多く出回っていましたし、私もヘッドスピードを上げたり、力強い球を打つためには必要な方法だと思っていました。

「トップで右の股関節に乗って右ひざの角度をキープする、ダウンスウィングからフォローでは左サイドの壁を意識して左ひざを伸ばさないようにキープするという指導を受けていたと思います。横移動を前提にしていた指導内容ですよね」

南出さんと同世代という事もあり、私も「横への体重移動」や「下半身を止めて上半身をねじる」などの常識を疑うことなく練習をしていました。しかし、南出さんと同じように飛距離は出ませんでしたし、足や腰への負担が増えて故障をしました。本来ならそこでやり方を疑うべきなのですが、右から左への体重移動や股関節を意識してスウィングすることが常識とされていた当時は、そんな考えには至りませんでした。

「体を速く回転させるためにはバックスウィングの右ひざ、インパクトで左ひざが伸びる必要があります。最初は非常識だと指摘を受けましたが、自分自身の飛距離と指導したアマチュアの結果で正当性を証明できました」

今まで常識とされてきたことを疑い、これまでと違った方向からアプローチをする「非常識力」がときには必要です。5年前は奇をてらったことを言っていると思われたかもしれませんが、現在ではダスティン・ジョンソンの右ひざはバックスイングでピーンと伸びてますし、ジャスティン・トーマスはインパクトで左ひざが伸びるどころか足まで浮いています。南出さんが経験と実績で証明してきた技術をPGAツアー選手が行っているのです。

画像: 今年世界ランク1位にもなったジャスティン・トーマスは、まるでジャンプするように打つ(撮影/姉崎正)

今年世界ランク1位にもなったジャスティン・トーマスは、まるでジャンプするように打つ(撮影/姉崎正)

南出さんが結果を出してきたスプリント打法と、バイオメカニクスの観点からスウィングを解明した「反力打法」には多くの共通点があり、理論・実践・感覚のすべてにおいて有意義な意見交換ができたと思います。南出さんには飛距離の豪快さだけではなく、対談を快諾してくれた器の大きい人間性にも魅了されました。

詳しい南出さんと吉田の対談内容は今週発売の週刊ゴルフダイジェストでご紹介していますので、是非ご覧ください。

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