昨年のステップ・アップ・ツアーで4勝を挙げて、同ツアーの最多勝&賞金女王に輝いた河本結。ルーキーイヤーでここまで活躍できたのも、約1年前に師事した目澤秀憲コーチの存在が欠かせなかったという。これまでどういうふうに切磋琢磨してきたのか、女子ツアーの前半出場権をゲットした今シーズンの目標は。2人に聞いた。

夢に限度はないけれど、目標の限度は定めないといけません

――ここまで二人三脚で歩んできたと思いますが、2人が出会ったのはいつですか?

目澤:一昨年の12月で、本格的に指導を始めたのは去年の1月でした。

河本:そうですね、丸一年たちました。じつは私、高校を卒業してからプロテストを受けないで、大学の進学を選んだんです(現在、日本体育大学在学中)。それからQT(ツアー出場権を争う予選会)にチャレンジしましたが(2017年)、サードQTで敗退してしまって……。どん底に落ちた気分でした。それまではコーチにつかず一人でやっていたのですが、それも限界だなと思っていたときに、仲良しの友だちに紹介してもらってコーチのところに行きました。

画像: 1年ほど前から目澤コーチの指導を受けている河本(撮影/有原裕晶)

1年ほど前から目澤コーチの指導を受けている河本(撮影/有原裕晶)

――河本プロは1998年生まれで、畑岡奈紗、勝みなみ、小祝さくら、新垣比菜、原英莉花、大里桃子といった強豪がひしめく“黄金世代”ですね。

河本:そうなんです。同級生はみんな仲が良いですけど、一番の仲良しは(小祝)さくらちゃん。小学生のときに初めて出た全国大会で、私とさくらちゃんと(新垣)比菜ちゃんで回ったんです。そのときは比菜ちゃんが優勝争いをして、私とさくらちゃんが“ドベ争い”で(笑)。でも2人で「ゼッタイにプロになって、美味しいご飯を家族で食べに行こうね」って約束をしたんです。彼女とは試合で会うたびに、いつもご飯に行きます。

目澤:同世代の子たちが“黄金世代”と呼ばれて注目される中で、彼女は下のツアーにいることをなかなか受け入れられない時間を過ごしているのかな、というのも感じていました。でもボクは、コーチというフラットな目で見られる立場。夢に限度を決めることはないけれど、目標の限度は定めないといけません。いま与えられたところで花開ける人、いまいる環境でいまできることで結果を残していくことが、1段1段の階段を昇ることなんだよ、という話はしました。

画像: 黄金世代の一人として、今季はレギュラーツアーで戦う

黄金世代の一人として、今季はレギュラーツアーで戦う

河本:初めて練習に行って教えてもらったときも「こうなってるから、こうするんだよ」という“答え”からじゃなくて「こうしているのはなんで?」と“問いかけ”から。その「?」に対して私自身も疑問がいっぱいあったので「また習いたいな」と思い、コーチに教わるようになったんです。

目澤:新しいことを“習う”だけだと入ってこなくなるので、考えていくプロセスが大事。選手に「気づかせてあげる」ことがコーチの目的なんです。

――そういった練習を経て、だんだんと結果がついてきたんですね?

河本:当初は現状を受け入れられない時期がありましたが、コーチと話をして「やるべきところ(ステップ・アップ・ツアー)でやらなきゃいけない」と思い出したのが5~6月くらい。やっと気持ちが整理できました。それこそ死に物狂いで戦った1年でした。

――教えてきたことの成果が出だしたのは、いつごろでしたか?

目澤:う~ん、9月くらいじゃないでしょうか。とはいえ昨年、コーチとしての最大のゴールは、彼女に「プロテストに合格してもらう」ことだったんです。そこに関してはゼッタイに達成しなきゃいけないと思ってたし、ボク自身もプレッシャーを感じてました。実際にプロテストに受かったときは、どんな優勝よりも嬉しかったというか、ホッとしたというか。

画像: 昨年のプロテストを9位で通過し、見事プロの仲間入りになった河本結(写真は2018年の女子プロテスト 最終日撮影/川谷雄二郎)

昨年のプロテストを9位で通過し、見事プロの仲間入りになった河本結(写真は2018年の女子プロテスト 最終日撮影/川谷雄二郎)

――ステップ・アップ・ツアーでは、出場12試合で4勝という快進撃でした。

河本:やるべきことをやって、それができたらついてくる「結果」だと思っていました。もちろん、できたこともあったし、できなかったところも見えてきたし。

目澤:そこが目標ではなかったかもしれませんね。そういえば、初優勝(Skyレディース ABC杯)をしたときに……。

河本:ハハハ。

目澤:6月のことでしたけど、本人としても初めての優勝だったので、正直なところ気持ち的にも浮かれていたと思うんです。その次の週の試合の練習ラウンドのときに送ってもらったスウィング(動画)が、なかなかヒドかった……。おそらく周りからはお祝いしか言われなかったし、誰も厳しいことは言ってくれない。今でも覚えていますが、年間で唯一そのときだけ厳しくしました。「今週も優勝すると思ってるでしょ、このままじゃゼッタイにできないから。もし今週に予選落ちしたら、やり方を考えた方がいいよ」って。その試合は台風が来て中止になりましたけれど。

画像: 目澤が唯一河本を厳しく叱ったのは、河本のプロ初優勝の翌週だったという(撮影/有原裕晶)

目澤が唯一河本を厳しく叱ったのは、河本のプロ初優勝の翌週だったという(撮影/有原裕晶)

河本:コーチが言った通りになったんです。それはヒドかった(苦笑)、ドンチャン騒ぎのゴルフでした。78を打っちゃったし……。

目澤:インターネット中継で見てたら、心もスウィングも何もかも乱れてました。そしてボクが初めて怒ったんです。

河本:メッチャ怒られたし、メッチャ泣きました。それが悔しくて、私のゴルフノートには「見返してやる」みたいなことが書いてあります。

目澤:厳しくしてあげないといけないと思ったんです。あそこで浮かれたままだったら、その後の3勝はなかったかもしれないし、賞金女王になれなかったかもしれません。誤解して欲しくないのは、人間的なことで頭ごなしに怒ったりするわけじゃありません。プロテストに合格する前から「人としてどうあるべきか」ということは常に伝えるようにしていました。

――そもそも、プロテストよりも大学への進学を選んだのはナゼですか?

河本:ゴルフが強くなりたいし、ツアープレーヤーを引退してからの人生で、何か人の役に立つような社会貢献ができるような人になりたいという思いがずっとあるんです。でもQTで敗退して、そういう考えが甘かったのかなって考えたこともあったし、アイツは失敗したなっていろんな人から言われて悔しい思いもした。でも、誰に言われたわけでもない、自分で選んだ道。いつか絶対に、大学に通いながら女子プロゴルファーとして活躍できることを証明したいという思いが強くあったんです。

画像: 大学を通いながら女子プロゴルファーとして活躍できる姿を証明したいという強い想いがあったという(写真は2018年の三菱電機レディス 撮影/岡沢裕行)

大学を通いながら女子プロゴルファーとして活躍できる姿を証明したいという強い想いがあったという(写真は2018年の三菱電機レディス 撮影/岡沢裕行)

――どんなことをしたいのか、具体的に教えてください。

河本:日本体育大学って、スポーツに関していろんなことを勉強するんです。栄養学、体のこと、心理学とかも学んだりして、プレーヤーとして役立つこともあるし、試合で自分が感じた緊張感や考え方などを、引退してから他のスポーツ選手にも伝えたり教えたりしたい。いつかはスポーツ庁に入りたいなとも思っています。

――晴れて女子ツアーに参戦する、今シーズンの目標を教えてください。

河本:自分に与えられた課題を試合の中でちょっとずつクリアしていくこと。年間を通してそれが達成できたら、賞金ランキングのトップ5も夢じゃないと思っています。ツアーで優勝もしたいですが、「1年間を通して戦い抜く」ことが一番の目標。コーチに教えてもらったことをどこまでできるか。それを大事にしなきゃいけません。

――目標とする選手はいますか?

画像: タイガー・ウッズを意識して、勝負ウェアも実は赤系だという(撮影/有原裕晶)

タイガー・ウッズを意識して、勝負ウェアも実は赤系だという(撮影/有原裕晶)

河本:タイガー・ウッズが大好きで、憧れで、目標です。“女版・タイガー”になりたい! じつはウェアも意識してて、昨シーズンの4勝をしたうち2試合が「赤」で、あとの2試合が「ピンク」でした(笑)。タイガー・ウッズの魅力はゴルフで人を惹きつけるところで、私からしたら“神様”でしかありません。ゴルフを通して、見ている人を感動させたり興奮させたり元気を与えたり、そういうプレーヤーになりたいんです。

私、メジャーリーガーのイチローさんを尊敬してるんです。あとは今年からメジャーリーグに行かれる菊池雄星さんも。世界で活躍されているプレーヤーってホントに輝いてます。私も海外に行きたい、自分の中では23歳のときには行きたいなって思っています。それができるように、一つずつやるべきことをやっていかなければいけません。

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