ベテランゴルフライター塩田正が取材を通して教わった「前傾の基本姿勢のチェック法」を、自身の著書「ゴルフ、“死ぬまで”上達するヒント」よりご紹介。

6年の長きにわたって悩まされた「トウ打ち」の病。新しい時代のスウィングでの矯正にトライ

ハンディ5になって6年目の平成8年、アイアンショットに異変が起きた。プレーしていて気がついたのだが、ボールがトウに当たることが多くなっていた。芯に当たっていないので、スパッと芝を切って振り抜ける感じがしない。打球も弱々しく飛んでいくか、左へ低く飛び出していくだけである。

そのトウ打ちは、やがてドライバーやフェアウェイウッドにも飛び火した。いつもと同じ打ち方をしているのに、どこが悪いんだろうと、突然の出来事に首をひねるしかなかった。

ところがゴルフには不思議なことがあるもので、ときにはトウで打っているのを忘れさせるような素晴らしいショットを連発する日もある。「ようやく、トウ打ちともさよならか」とホッとしていると、1週間後には、また手の中でグリップがクルッと回るような、トウ打ち特有の症状が出る。

結局、6年経ってもトウ打ちは直らなかった。その間、日本や海外の技術書、雑誌にこの深刻な「病気」を直す手がかりはないか探してみたが、これといった特効薬はついに見つからなかった。

そんなとき、同じクラブで一緒にラウンドしていたKさんから、シンガポールでオーストラリア人プロのレッスンを受けた話を聞いた。Kさんは私と同じクラブのメンバーで、平成11年8月に、たまたまサンフランシスコのポピーヒルズCCでお目にかかり、それ以来、たびたびラウンドでご一緒するようになった。

Kさんはある有名な商事会社の役員を辞された後、ゴルフルールの勉強のために、アメリカのサンディエゴとスコットランドのセントアンドリュースで、厳しい講習を受けてこられた日本でも数少ないルール通のひとりである。

そのKさんが、シンガポールでプロから教わったのは「アドレスでの背骨とクラブの角度」「アーリーコックのテークバック」「ダウンスウィングでの両腕のドロップ」「腕の振りを早くする」といった内容だったそうである。

そのころ、取り寄せていた海外の雑誌から、私はバイロン・ネルソンやベン・ホーガンの流れをくむモダンゴルフ時代が、だんだん遠ざかっていくのをうすうす感じていた。シンガポールで受けたKさんのレッスンの話にも、それまでの技術の流れをひとつ越えたような新鮮な響きがあった。

Kさんは、翌年も会員になっているシンガポールのクラブでレッスンを受けるという話だったので、お願いして、私もそのプロの指導を受けられるように頼んだ。当面の「トウ打ち」を矯正するという願いも込められていたが、さらにアメリカをはじめとするゴルフ先進国では、新しいスウィング技術の進歩がすでに次の段階へ進んでいるのか、そのへんの事情を探ってみたかったのも、同行のお願いの理由のひとつだった。

「トウ打ち」の病の原因はアドレスの深過ぎる前傾姿勢だった

平成15年2月。酷寒の日本から熱帯のシンガポールへ渡った。Kさん夫妻はすでに半月も前に来ていて、真っ黒に日焼けした顔で迎えてくれた。

レッスンの日は1週間後。先生はオーストラリアで有名なゲーリー・エドウィン・ゴルフ・アカデミーのA級ティーチングプロのライセンスを持つトム・フィールディング氏であった。

トム先生は「こんにちは」と流暢な日本語で握手の手を差し伸べてきた。トム先生の奥様は日本人で、本人も日本に何年か住んだことがあると、Kさんの紹介で知った。少したどたどしいが、日本語で話ができるというのは心強かった。

さて、レッスンだが、トム先生はまずカメラで私のショットを撮り始めた。そしてひと通り撮り終わると、プロ室で撮ったばかりの私の連続写真をパソコンに取り込み、さらに私の体型と似通ったオーストラリアのツアープロの写真とを並べて、どこがどう違うかを見比べながら説明を始めた。

トム先生が、最初に指摘してくれたのが、トップで起き上がることだった。そして起き上がりの原因として、そのひとつは構えたときの過度の前傾だと、パソコンに目をやりながら教えてくれた。

トップ近くで伸び上がる動きは、昭和40年ごろにもあった。そのときは小松原三夫プロに注意され、直ったはずだった。だが、いつしかまた戻ってきてしまったのである。ゴルフでは「一度直したはず」というのは、まったくあてにならないものだということを思い知らされた。

トム先生からは、まずアドレスの際の前傾の度合いについてチェックを受けた。直立してクラブを水平にまで上げ、そのまま背骨を真っすぐにして、腰から上体を前に傾け、ヘッドのソールが地面についたところが前傾の基本姿勢だといわれた。そのとおりにやってみると、明らかに私のアドレスでは、上体の前傾の度合いが深くなり過ぎていた。

画像: 「鏡」は時に最高の練習ツールとなる。今ならばスマホで撮影ということもあるが……

「鏡」は時に最高の練習ツールとなる。今ならばスマホで撮影ということもあるが……

この不自然な構えのために、バックスウィングで上体を起こすような動きが、自然に身についてしまったのだろうと、トム先生はいった。そしてボールがトウに当たるのも、この起き上がりに関係があるからに違いない、とつけ加えた。

上体の前傾はほぼ45度。さらに体重の配分は6:4くらいの割合で右にかける。ただ、左足首外側と左腰外側の線を地面に垂直にして立つように教わったので、なんとなく体重が左足に多くかかっているような感じがした。しかし、実際は背骨を右に傾けて構えているぶんだけ、体重は右足に多くかかっているという話だった。

トム先生は、その傾きのチェック法として、両手でクラブのグリップを胸の中央に当て、クラブヘッドが左足の甲に向くまで、背骨を右へ傾けていくという方法を伝授してくれた。右腰のところで「くの字」に折った構えは、アイアンの場合もまったく同じである。

練習でもラウンドでも、最初のうちはドライバーからショートアイアンまで、いちいち左足を地面に直角にし、胸骨にシャフトを当て上体を右へ傾けてからアドレスに入るようにした。

そしてトム先生は「矯正には鏡を使うのが一番です」とも教えてくれた。私はそのとき以来、今でも近くの練習場では、できるだけ鏡の前の打席で打つようにしている。

「ゴルフ、“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト新書)より

撮影/増田保雄

画像: ただ踏み込むだけじゃない!“地面反力”を正しく理解しよう~井上透と幡野夏生のこれってどうしてる?~ youtu.be

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