2019年9月、dino.networkにて展開している特集のテーマ「挑戦」にあわせ、今回は企業の第一線で日々挑戦を重ねているビジネスパーソンに読んでほしい一冊「岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。」(発行・ほぼ日)をご紹介。

ほぼ日が想いを込めて発表した一冊

ほぼ日刊イトイ新聞に掲載されたたくさんのインタビューや対談、そして任天堂公式ページに掲載された「社長が訊く」シリーズから重要なことばを抜粋し再構成された著書「岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。」。

岩田聡氏は天才プログラマーとして多くの名作ゲームを生み出し、任天堂の社長としてニンテンドーDSやWiiなど革新的なゲーム機をプロデュースしたことで有名だが、この一冊にはそんな岩田氏のクリエイティブに対する思いや経営理念、価値観、ポリシー、哲学などが凝縮されている。

岩田 聡(いわた・さとる)
1959年12月6日生まれ。2015年7月11日に惜しくもこの世を去るが、現在でも起業家やクリエイター、そして世界中のゲームファンに愛され続けている。

www.nintendo.co.jp

本書には親交の深かった任天堂の宮本茂氏、そして日刊イトイ新聞の発行人・糸井重里氏との特別インタビューも収録されており、内容はもちろん、ことばの言い回しやリズムといった温度感からも岩田氏への愛とリスペクトが感じられる作品となっている。

岩田聡という経営者

岩田氏は社員全員と定期的に面談の時間を設け、相手の不満がなくなるまで徹底的に話し合ったというエピソードは有名だが、そこには威圧的な空気はまったくなく「何に不満を抱えていて、その不満の原因はなんなのか」ということを相手の話をとことん聞いた上で、ひとつひとつの要素を噛み砕きシンプルに落とし込んだ上で改善案を提示するという、プログラミングで培ったと思われる論理的な解決方法を実行している。(実際本書では「プログラミングと会社経営は良く似たところがある」といったことばも見受けられる)

会社に危機が訪れた時も、ゲームが大繁盛し多忙を極めた時もそのスタンスは一貫しているが、なんといっても特徴的なのは、正しいか間違っているかというものさしだけではなく「たのしい」「おもしろい」そして「共感」「理解」といった個々の人間の気持ちを大切にしながら社員と触れ、それをしっかり作品や経営の方針に反映している点だ。

この人が得意なことはこれだな、チームがちょっと淀んだ空気だ、といった現場のカラーや空気をいちはやく察知し、目的にあわせて瞬時に必要な項目を洗い出し、設計し、誰よりも率先して動く。「"シゴト"の効率と"ヒト"の共感」をいっぺんにクリアしてしまう統率力・人間力の凄さは、企業ではたらく人間としてはその一挙一動から多く学ぶことがある。

岩田氏が信じる人

本書の第3章は「岩田さんが信じる人」と題され、中では盟友・宮本茂氏に関することがらが多く話されているが、宮本氏を心から尊敬し、その凄さを研究し、あらためて個々の役割を明確にしていることがわかる。

岩田氏「(宮本氏に)技術が劣ってるとは思えない。でも、たいして売れない。ところが宮本茂さんがつくると、自分が携わったソフトの何倍も、場合によっては何十倍も売れるわけですよ。
(中略)
わたしはお客さんにウケたかったんですよ。宮本さんのように。」

そう思った岩田氏は、その後宮本氏の行動をじっくり観察し、誰にも譲れないこだわりと改善すべきポイントの見極め方を学ぶ。具体的な方法は本書をご覧いただくとして、岩田氏は宮本氏についてこう語っている。

宮本さんって、めちゃめちゃロジカルなんですよ。かといってそれだけではない。ものすごく左脳的な理詰めの思考と、美術系の道を目指した人ならではの、ぶっ飛んだ飛躍的な思考とが、両方、頭の中にあるんですよ。あれは、悔しいけど、うらやましいですね。

そして岩田氏は「苦手なことよりも自分の得意なことで勝負する」から、同じようなやり方では宮本氏と競争しないんだ、と笑う。そんな無邪気で前向きなところも、岩田氏の人間味を感じさせる。

この章では、宮本氏について多く書かれているが、プロダクトの作り方、まわりの巻き込み方、そして「MOTHER2」や「ピクミン」など往年の人気作ができるまでの組み立てについてなど、役に立たない記述を探すほうが大変なほど、身になる情報がつまっている。

特に驚いたのが「MOTHER2」の開発についてだ。計5年開発期間があった「MOTHER2」だが、岩田氏がジョインしたのは最後の1年だけだそう。そこで「いまあるものを活かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。いちからつくり直していいのであれば、半年でやります」ということばが飛び出す(このことばはゲームファンにはよく知られているという)が、この発言の真意、そしてそこから完成への道のりは、業務を推進する仕事に就くビジネスパーソンであれば「なるほど」と深く頷くことだろう。

日々、挑戦を続ける人に読んでほしい

仕事をしていると、小さいと思われた問題の影響力が想像以上に大きかったり、やるべきことや工程は同じでもチームのモチベーションで結果に大きな差が出たりと、正しいことを推し進めているだけでは解決できない問題がたくさんある。

岩田氏のことばは、大きな包容力をもってさまざまな課題をサラサラに、そしてマイナスをプラスに変えてくれるような、あたたかいながらも力強さと持つ。背中を押してもらいたい方はぜひご一読を。

岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。
ほぼ日ブックス
Kindle版/新書版
好評発売中

www.amazon.co.jp

This article is a sponsored article by
''.