こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。明けましておめでとうございます。2020年1発目にニュースで話題になっていたのがティラノサウルスとナノティラヌスという恐竜の関係性についてだったので、今回はそれについて詳しく紹介していきます。

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部

ティラノサウルス

ティラノサウルス レックス(全身骨格)

あの!ティラノサウルス(Tyrannosaurus)といえば誰もが知っていると言ってもいいほどの知名度を持つ恐竜で、他の恐竜を骨ごと食べるほど強力な顎を持っているのでただの肉食恐竜ではなく超肉食恐竜と言われている獣脚類です。

名前の意味は「暴君トカゲ」。

中生代の白亜紀後期、大量絶滅の直前までカナダや北アメリカに生息していた恐竜で、全長約13メートルと大きく、他の恐竜と比べ化石がたくさん発見されています。

歯は根元まで含めると30センチはありバナナのように大きく前歯の断面がD字型していたり、鋸歯といってノコギリのようなギザギザがついていたり、目は前を向いていて立体的に見る事ができたり、嗅覚も優れていてよく完成された恐竜です。

「ティランノサウルス」と呼ぶ方もいれば、「チラノサウルス」と呼ぶ方もいます。生田晴香は子どもの頃から「ティラノサウルス」と聞いて育ってきたので、ティラノサウルス書きで進めますね。

ティラノサウルスの特徴を書いていくとそれだけでコラムを何回かに分けて書かないと、多少簡潔にして書いても書ききれないほどのボリュームになってしまうのでこの辺で。

さて、ティラノサウルスと同じ時代、同じ時期に「ナノティラヌス」という獣脚類でティラノサウルス科の肉食恐竜がいます。

ナノティラヌス

画像: ナノティラヌス(頭骨) ja.wikipedia.org

ナノティラヌス(頭骨)

ja.wikipedia.org

ナノティラヌス(Nanotyrannus)の名前の意味は「小さな暴君」。見た目はティラノサウルスを小さくほっそりしたような感じで全長6メートルの肉食恐竜です。

化石が発見されていた時は「ゴルゴサウルス」という全長約8.5メートル、体高約2.8mのティラノサウルス科の肉食恐竜だと思われていました。名前の意味は、「荒々しいトカゲ」です。

画像: ゴルゴサウルス ja.m.wikipedia.org

ゴルゴサウルス

ja.m.wikipedia.org

ですが、ゴルゴサウルスではなく別の恐竜なのでは?と言うことで1988年、米オハイオ州にあるクリーブランド自然史博物館の古生物学者、ロバート・バッカー博士は「ナノティラヌス」という新種恐竜だと主張しました。

ゴルゴサウルスどころかもしかして子どものティラノサウルスなのでは?と考える研究者が増えました。

ナノティラヌスの歯から型をとったネックレス(歯医者さんの作品)

ナノティラヌスの歯はD字型をしているのもありますが、ナノティラヌスとティラノサウルスの違いは歯の数で、ナノティラヌスは全部で30〜31本あるのに対し、ティラノサウルスは22〜26本あります。

もしナノティラヌスがティラノサウルスの子どもだとしたら、成長するに従って頭骨も歯も大きくなり数が減ったのかもしれません。

約30年前からナノティラヌスは新種のままでいいのか、ティラノサウルスなのではないのか、一体ナノティラヌスだと考えられている恐竜はナニモノなんだと悩まされていたところの2020年1発目の恐竜ニュースで、問題解決論文が出ました。

ナノティラヌスの正体

米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された論文をみてみましょう。

オクラホマ州立大学のホリー・ウッドワード博士の研究チームは、ジェーンと名付けられたナノティラヌスの脛骨と大腿骨の内部から抽出した標本と、ピーティと名付けられたナノティラヌスの不完全な骨格標本を顕微鏡で分析しました。

その結果、ナノティラヌスだと思われているジェーンとピーティは成体ではない事がわかったのです。

ジェーンは亜成体のティラノサウルスとして博物館や恐竜展で展示されていたりもするので実は見たことある方は多いかもしれません。

骨の切片を調べてみたところ、血管の太さから死ぬ時点で急激に成長している事がわかりました。もし成体なら血管新生がこれほど顕著ではなかったはずです。

木の年輪みたいに恐竜の骨にも年輪みたいな成長線が出るのですが、数えるとジェーンは13歳、ピティは15歳だという事がわかりました。

結果!
ナノティラヌスという種が存在した可能性は極めて低く、ナノティラヌスはティラノサウルス亜成体という事がわかったのです。
(と書くと新発見かのようですが元々そう思う人が多かったり…)

2019年に売られている恐竜図鑑では「ティラノサウルス」と「ナノティラヌス」別々に紹介されていますが、2020年からはもしかしてナノティラヌスが消えているかもしれませんね。

そうなると未来の子どもはナノティラヌスという存在自体知る事なく生きていくのかもしれないと思うと少し寂しい気はしますが、1番人気恐竜のティラノサウルスの事なのでナノティラヌスの事はティラノサウルスを調べていけばゆくゆく辿り着くでしょう。

まぁまだ100%そうだと決まったわけではありませんが、かなりの確率でティラノサウルスだと考えていいでしょう。

肉食ほにゅうるい

ではまた次回!2020年も月2回のペースで更新していくので、皆さまよろしくお願いします。

画像: 実はティラノサウルスだった?ナノティラヌスの正体

生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。

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前回の「生田晴香、恐竜と生きる」はこちら

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