刹那的に生きる破滅志向の恋人同士の代名詞として知られるボニーとクライド。1930年代に全米を股にかけた伝説の銀行強盗であり、若くスタイリッシュな印象で義賊として大衆に人気を博したアンチヒーローだが、本作はそのボニーとクライドの逃避行を 司法側の目線で描いた新発想のアクション映画だ。

1930年代前半のアメリカに実在した連続銀行強盗犯、といえば『俺たちに明日はない』でよく知られるボニーとクライドだが、この2人を追う警察側の視点で描かれた、実話ベースの作品。

例えてみるならルパン一家を追う銭形警部を主演に描いた作品、のようなものだが、神出鬼没で警察やFBIの追跡をかわし続けるボニーとクライドを追い詰める任務を与えられたのは、元テキサス州の法執行機関 テキサス・レンジャーで 伝説的な実績を誇るものの、とうに引退していた2人の男、フランク・ハマー(ケヴィン・コスナー)とメイニー・ゴルト(ウディ・ハレルソン)だった。

ボニーとクライドとは

ボニーとクライド(Bonnie and Clyde)は、1930年代前半にアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した、ボニー・パーカー(Bonnie Parker、1910年10月1日 - 1934年5月23日)とクライド・バロウ(Clyde Barrow、1909年3月24日 - 1934年5月23日)からなるカップルである。

1929年に起きた「暗黒の木曜日」以来の大恐慌のため、不景気のどん底にいたアメリカにあって、庶民の気分としては諸悪の根源のように思われていた銀行ばかりを襲うボニーとクライドたちは、ロビン・フッドばりに英雄視されていた。
20代前半の若者であった彼らは、強盗と殺人を繰り返す凶悪犯ではあったが、若さゆえの衝動的に見える行動からか、破滅に向けて駆け抜ける彼らは(≒死んでもいいから 輝き続けたい、人に迷惑かけてもいいから好きなことをしていたいと考える、超利己的なスタンスは)、ある意味パンクロックスターにも似た人気を得ていたのだった。
そのため、映画好きなら誰でも知っているであろうニュー・シネマの傑作『俺たちに明日はない』など、多くの映画や小説、漫画などの創作物の題材となったし、彼らの名前自体が 破滅志向の衝動的な生き方をする恋人たちの代名詞のように使われることになった。

ボニーとクライドを追い詰めるのも、伝説の男たち

本作は、犯罪者であるがゆえに最期は追い詰められて無数の銃弾を受けて無惨な死を遂げるボニーとクライドを、主役ではなく、ハンティングにおけるターゲット(獲物)として据えることで、彼らの逃避行を新しい視点で描いた作品だ。

こうした設定を180度転換することで新たな物語を生む手法は、最近よくみる。ただ、本作は実話であり、本来であればこちらの方が本道であることは言うまでもないだろう。法の縛りを気にせずに行動を起こす者への大衆の喝采は、やはり暗い世相を反映したものであり、それ自体はあまり良いことではないからだ。

ボニーとクライドを追い詰める元テキサス・レンジャーを演じるのは、ケヴィン・コスナーとウディ・ハレルソン。
老いによる衰えを経験でカバーし、大衆人気に守られた若い犯罪者を追い詰めるさまは、派手さはないが、執念深い猟師(ハンターというよりまさしく猟師と呼んだ方が似合う)のそれであり、若い頃の体力のなさを嘆きながらも決して勝負を投げないあたり、生涯現役を目指す者には心強く映ることだろう。

画像: 『ザ・テキサス・レンジャーズ』ボニーとクライドの明日を奪ったのは引退した2人の元レンジャーだった

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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