IRAと思しき政治結社UDIのテロによって愛娘を喪くした中国系移民の男の復讐劇。英国を舞台に、復讐に燃える中国人をジャッキー・チェン、アイルランド独立を目指す過激派グループの元闘士にして現在は英国政府との調整役を担う政治家役をピアース・ブロスナンが渋く演じている。

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画像: ジャッキーちゃんを探せ!「ザ・フォーリナー/復讐者」公開記念 激似予告 youtu.be

ジャッキーちゃんを探せ!「ザ・フォーリナー/復讐者」公開記念 激似予告

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娘を持つ 父親役 x 元特殊部隊という経歴を持つ中国人主人公

英国内の最大の政治的火種と言えるのが、北アイルランド問題。

北アイルランド紛争(2013年06月16日 朝刊)
1937年にアイルランドが独立。英国に残った北アイルランドでは、英国からの分離とアイルランドへの併合を求める少数派のカトリック系住民と、英国の統治を望む多数派のプロテスタント系住民が対立した。60年代後半に始まったテロなどの犠牲者は3200人を超えた。98年に包括和平合意が成立した。

1998年に結ばれたベルファスト合意で一応の収束(=包括的和平合意)をみたものの、いまだに紛争の火種を抱えているとも言われる。本作では、和平合意の遵守と英国民としての融合を目指す穏健路線に反対する、過激な主張を持つグループが起こしたテロの犠牲者の父親による復讐劇を描いている。

ポリス・ストーリー / REBORN』でも娘を持つ父親役を熱演していたが、60代にして祖父役ではなく父親役を十八番にしている最近のジャッキー・チェン。同じく得意のあの陽気な笑顔を封印して、愛する娘を無慈悲に奪ったテロリストグループへの復讐へと自らを追い込んでいく哀しい父親クワンをハードボイルドに演じている。

もちろんそこはジャッキー、ただ復讐心に燃えるだけの執念深い初老の父親というわけではなく、中国生まれの男がベトナムやシンガポールを経て英国籍を取得するまでの間に、特殊部隊の工作員としてのキャリアを積んできたという設定で、爆破物や銃器、白兵戦のノウハウやスキルを身につけているので、いつもの超絶アクションを見せてもなんの不思議もないという具合だ。

テロによって民間人の犠牲者を出してしまったことで、英国政府と北アイルランド自治政府の関係が ベルファスト合意以前の対立状態≒混乱に戻ることを恐れる穏健派のリーダー リアムを演じるのはピアース・ブロスナン。英国女王に忠誠を誓うジェームズ・ボンド役とはうってかわって、アイルランド人の誇りと立場を守りつつ英国との融和を目指す老獪な政治家を巧みに演じている。

ジャッキー演じるクワンは、リアムならば穏健路線に異議を唱えてテロを起こした一派の正体を知っているはずだと確信して、リアムに執拗につきまとう。

リアムは、仲間たちからはその老獪な姿勢を“老害”“弱腰”“妥協的”と謗られるうえ、クワンからはテロを起こした過激グループを庇っていると疑われるわけだ。さらに英国政府からも、ベルファスト合意に反するテロの責任を問われて徐々に立場を失っていく彼の姿は、結構気の毒にみえる。

ただ、それだけ英国において、この北アイルランド問題はセンシティブな政治課題であり、関わる者は非常に慎重な姿勢を問われるものだということがよく分かる演出ともいえるだろう。

(実際本作の中では、リアムもかつてはそのメンバーであったはずの、北アイルランド独立闘争組織の名称はIRAではなくUDIと称されている)

「死にゆく者への祈り」以降ひさびさの哀しき闘争者の物語

本作は、上述のように、英国を舞台にした 混沌とした政治背景をベースにしており、日本人には分かりづらい作品かもしれない。
テロによって娘を失った父親が実は元特殊部隊の工作員だった、という設定、そして 彼による復讐劇、という流れ自体はわかりやすいが、そこに政治的な理解を求める伏線が加わるので、話は単純ではなくなる。

だが、それがゆえに(分かりやすさを失うことと引き換えに)本作はハリウッド大作にはない深みある物語になっている。立場は逆になるが、ミッキー ・ロークの名作「死にゆく者への祈り」にも通じる、国家と宗教と民族の違いの軋轢の中で、そういう大義ではなく ただ愛する者への想いを闘志に変える孤独な戦士を描いた作品として、かなり上出来な一本になっていると思う。(イングランド≒英国政府側、アイルランドのシンパ、英国籍を取得した移民、という3つの立場の違いを描いたことで、21世紀における本問題の姿を新たに示している、とも言えるかもしれない。タイトルとしてフォーリナー=外国人、という言葉を選んだこともそうした意図の表れかと思う)

画像: 『ザ・フォーリナー/復讐者』笑顔を封印したジャッキー・チェンのハードボイルド作品

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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