『ソーシャル・ネットワーク』『アメージング・スパイダーマン』でブレイクしたアンドリュー・ガーフィールド演じるダメ男が、一目惚れした美女の失踪の謎を追う、ひと夏のクライムサスペンス?
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連発する怪事件の裏に潜む謎と陰謀の存在に引き込まれていく青年が、募らせていく不安と恐怖

アンドリュー・ガーフィールドは、その美青年然とした見た目と裏腹に、弱々しく不安げな物腰から、イケてないイケメンを演じさせると当代一のハマり具合を見せる(褒めてない?)。
そんな彼に今回与えられた役柄は、30すぎても定職つかず、いいクルマに乗っているのに家賃は滞納しているダメ男サム。
彼が住むシルバーレイクは、ハリウッドに近く、セレブやアーティストが多く住む高級住宅にも近い。必然的に、成功を夢見る若者たちが集まる街(日本で言えば三軒茶屋や下北沢のような立ち位置か?)になっていた。

サムはあるとき、向かいの部屋に越してきた1人の美女に一目惚れする。モデルのようなルックスと開放的な雰囲気を持つ美女、サラに接近することに成功したサムはデートの約束までとりつけるが、翌日彼女は忽然と姿を消す。
時を同じくして、街には飼い犬たちが惨殺される怪事件が勃発し、さらに誰もが知る大富豪が謎の失踪を遂げる。
これらの事件に関連性を感じたサムは、背後に何か巨大な陰謀が存在することを確信し、1人サラの行方を追う。

本作の脚本と監督を手掛けたのは、人ではない何かが後を追ってくる恐怖を描いたカルト的ホラー『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。

成功を夢見る若者が集まる街で、散っていく多くの儚い夢

舞台となるシルバーレイクは、実在するLA近郊の街。成功を夢見るプロデューサーやアーティストの卵が多く集う街。

本作では、夜な夜なパーティに興じる若者たちの様子を繰り返し描いている。主人公のサムは、サラの行方を探すうえで、そうしたパーティに何度も足を運び、そして常に知り合いの顔を見つける。輝かしい将来を夢みながらも厚い壁に跳ね返される者は多いが、そんな苦い現実を認めたくないからこそ、酒を煽りドラッグの力を借りてハイになる。
そんな街で生きるサムにして、ニートそのものの自分の境遇を不安に思いながらも、母親や友人には見栄を張りつづけ、さらに今のところ適度にセックスする相手がいるので、将来の不安や惨めな現実に真摯に向き合う決意をすることができずにいる。彼が意志を持って意味のある行動をするのは、惚れた相手(サラ)を探すためだけであり、それとても、一途な恋によるものというよりも、その失踪になんらかの謎の存在を嗅ぎ取ったからであって、ゲームにハマり都市伝説をむやみに信じがちなニートのオタク的関心をそそられたからなのだ。

自分が成功できないのは、自分のせいではなく、なにかの陰謀のせいだ。成功者は誰かに選ばれたから成功し、選ばれなかった自分は成功していない。そんな他力本願というか、身勝手な言い訳や不満を持ちがちな、若さのピークを過ぎて 根拠のない夢を見続けることが許されない年齢にさしかかった青年の鬱屈を、本作は描いていると思う。

本作では、そろそろ自分の限界というか、自分をとりまく現実から目を背けることができなくなりつつあった青年の前に現れた、格好の現実逃避として、失踪する美女(演じているのはライリー・キーオ。エルビス・プレスリーを祖父に持つモデル・女優だが、見た目にわかりやすい美貌は、サムでなくで一目惚れするだろう)の捜索と陰謀の存在を明かすという冒険が用意される。当然 サムはそれに夢中になるわけだ。

物語では、謎の解明に成功するサムだが、結局その達成感はテレビゲームがもたらす興奮を超えるものでもなく、サムの惨めな人生を変えるきっかけにもならず、現実に向かう決意をさせることもない。
謎の存在はどうあれ、結局サムはそれまでと同じような浮薄な人生を歩んでいくのである。

客観的には、かなり衝撃的な事実がいくつも明かされるし、不思議かつ恐怖を煽る事件が幾たびと起こるので、人生観をガラリと変えるだけのインパクトはあると思うのだが、サムの心を覆う分厚くヌルッとしたベールを剥がしきるには足りなかったらしい。
その“鈍感さ”が、本当のところ制作者たちが本作で一番描きたかった恐怖というか、謎であるのかもしれない。

画像: 『アンダー・ザ ・シルバーレイク』アンドリュー・ガーフィールド主演のカルトムービー

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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