日本の2Dアニメのレジェンド『ルパン三世』を3DCG化。謎の秘宝を巡ってルパン一家とナチ残党が激しい争奪戦を繰り広げる。脚本・監督は日本のVFXの第一人者である山崎貴。声優陣はいつものキャストを揃えている。

ルパンシリーズそのもののストーリー

本作は基本的には過去のルパン映画の基本的な路線に即した映画だ。つまり、不幸な過去を抱えながら前向きさとひたむきさを失わない可憐な少女と、彼女の一途な情熱に絆されるルパンと仲間たちの活躍(仲間たちには、本人的には不本意だろうが銭形警部も含まれる)、というルパン三世映画の王道的なストーリーで製作されている。

今回のヒロイン レティシア(声は広瀬すず)は考古学者を志す美少女。第二次世界大戦中にナチスに殺害された考古学者ブレッソン教授の日記に隠された秘宝を狙う、ナチの残党への協力を強いられている。
かつてアルセーヌ・ルパン一世も狙ったというそのお宝を巡って争奪戦に参加するルパン三世だが、やがてレティシアの庇護者として戦いに深く関わるようになる、という感じだ。

使われている音楽や小道具も見慣れた2Dのままなので、過去に一度でもシリーズ作品を観たことがある人ならば、スッとルパン三世の世界観に入っていけることだろう。

ちなみに、ルパンシリーズにおいて、常に絶妙な狂言回しの役割を与えられているのは、銭形警部と峰不二子の2人だと思うが、この2人については3DCGによる立体的な造型はいい方向に向いている。銭形警部はその勢いと古き良き時代の日本男児というステレオタイプ的なイメージによって、2Dアニメの中の彼と寸分変わらぬキャラクターとして生き生きと描かれているし、峰不二子はそもそものマンガ的美貌(フィギュアのような質感のボディ)は3Dによってさらに説得力を増している。

3DCGアニメ化の功罪は相変わらず

とはいえ、日本人の国民的アニメの1つ「ルパン三世」の3DCGアニメーション化に対する僕の感想としては、Netflixの『攻殻機動隊 SAC_2045』の時と全く同じだ。
ルパン三世もののポリゴンゲームをプレイしているかのような違和感は、残念ながら最初から最後まで抜けることがなかったのである。

ゲームのキャラクターを見ているようで、違和感は拭えず、正直に告白するとふつうに2Dアニメーションで作ってくれた方が没入しやすく思った。(中略)3DCGに慣れている(RPGなどをやり慣れている)人であれば、僕のような違和感を感じずに、本作を素直に楽しみ、深く入り込むことができることだろう

日本の3DCGアニメを見ていつも思うのは、その動きがとても緩慢かつ大仰なことだ。ピクサーアニメーション作品を観ていてそんなことを思うことはないので、恐らくは日本のスタジオの演出の特徴なのだと思う(技術的な差異ではなく、演出の“癖”なのだと思う)。
リアルな動きを再現しようとするばかりに、むしろ“不気味の谷”を作ってしまっているのではないか?という気がしている。

これは、初めて長距離電話を使う人が、遠くにまで届かせようとしてついつい声を張ってしまうようなものかもしれない。電話が距離を超えて繋がるのが当たり前の現在であれば、電話に対してそんな不自然に構える人はいないが、初めてその技術に触れれば、物理的な距離に自ら対応しようと要らぬ工夫をしてしまうことだろう。また、その模様を見ている人も、現代ならば声を張り上げる様子に失笑するだろうが、電話を見たことがない人たちであれば、大声を出す人の気持ちが理解できて違和感なくそれを眺めることだろう。

それと同じことが起きている気がする。

現時点の日本の3DCGアニメーションの制作者たちは、その技術を使うにあたって、無駄に肩に力が入ってしまっているのではないか?
全く見当違いな感想かもしれないが、とにかく 前世紀の古い映画を観ているかのような大袈裟で無駄な動きを強いられているかのようなキャラクターの動きが、今の僕には気になって仕方がない。2Dアニメの洗練さと比べて、3DCGアニメの未熟さは技術的問題ではなく、その技術に相対する者たちの演出の問題であると僕は感じているのである。

逆に言えば、日本の2Dアニメが勝ち得た、大人の鑑賞に耐える 洗練された表現力が、やがて3DCGでのアニメーションに完全に移植されたとき、世界標準の作品が生まれて海外市場を席巻する、そんな夢を僕はまだ見果てぬものとして持ち続けているのである。

画像: 3DCGアニメ『ルパン三世 THE FIRST』

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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