米海軍最強の特殊部隊シールズ。2005年6月に彼らが実行しようとしたアフガニスタンの武力勢力タリバンの幹部1名の暗殺計画=レッドウィング作戦は、シールズ創設以来 最悪の死傷者を出す結果となった。本作は、レッドウィング作戦に参加したシールズ隊員たちと、タリバンとの激戦を中心に描かれた、史実に基づく作品である。

レッドウィング作戦と、奇跡の生還を果たしたラトレル軍曹

アフガニスタンの武装勢力タリバンのリーダーの1人、アフマド・シャーを排除すること。それがレッドウィング作戦の作戦目標であったが、偵察に向かったシールズ所属の4名は運悪くタリバンに発見され、激しい銃撃戦にさらされてしまう。多勢に無勢のため、奮闘虚しく追い詰められていくシールズの4人は、1人また1人と斃され、最後の1人になったマーカス・ラトレル一等軍曹(マーク・ウォルバーグ)もまた追い詰められるが、運良くアンチ・タリバンの部族の男たちに救われる。

彼らは、“追われる者がいれば、これを助けよ”という、 パシュトゥーンワーリーの掟を遵守する、パシュトゥーン人たちであり、タリバンが押し進めるイスラム原理主義に反発する部族であったのだ。

パシュトゥーン人の村落に匿われたラトレル軍曹は、その後 米軍に助け出され、文字通り急死に一生を得る。

本作は、史実に基づき、最悪の事態から運良く生還する男の奇跡の物語であると同時に、迫りくる絶対死の中で、決して諦めることなく戦い抜く男たちの奮戦の模様をリアルに描いた戦争映画である。

タリバンに対する政治的評価の変遷

2021年9月現在にあって、バイデン政権下の米国はアフガニスタンからの撤退を果たす。そして親米政権はあっけなく崩壊し、タリバンによる全アフガニスタンの掌握が進んでいる。

本作ではタリバン=テロ集団もしくは狂信的宗教集団であり、完全なる反米組織、そして自由主義信奉者が何としても倒すべき敵として描かれている。今日現在でのタリバンへの認識が 本作におけるそれからどう変わっていくのかはわからないし、ここでそれをどうこういうつもりもないが、少なくとも問答無用で“敵”と断ずる事は無くなっていくのだろうし、タリバンもまた その強行姿勢を緩めて国際社会との共存を模索していく可能性だってあるだろう。

不運と幸運が連鎖しておきた奇跡の物語

シールズは、数多くの特殊任務をこなしてきた米軍きっての特殊部隊だが、このレッドウィング作戦においては、創設以来最悪の被害を出したという。
本作の中では、アフマド・シャーが潜んでいると目される山岳地帯の偵察に赴いた隊員たちが、偶然運悪く民間人に遭遇してしまい、しかも彼らがタリバンシンパであったことから100人を超える武装勢力に襲われる。

さらに、ターゲットであるアフマド・シャーの存在を確認しながらも、通信状態の悪さゆえに射殺命令を仰ぐことも救出依願を行うこともできないという最悪な羽目に陥る。不運に不運が重なって、作戦の失敗へとつながってしまうという筋書きだ。

本作は偵察チームの4人のうち唯一生還したマーカス・ラトレル軍曹の手記を原作にしているが、作戦の失敗は偵察に向かったチームの落ち度ではなく、運の悪さに起因するというのがラトレル軍曹の主張である。さらに、彼が生還できた理由はこれまた偶然であり、彼が遭遇したアフガニスタン人が、パシュトゥーン人だったという幸運がすべてだった。

ラトレル軍曹はこの作戦後退役したというが、彼の命を救ったパシュトゥーン人とは その後も親交があったという(今日に至るまで続いているかどうかはわからない)。
タリバンからは、この事件の報復を狙われていたとのことだが、現在の状況下においての彼らの無事を祈らざるを得ない。

画像: 『ローン・サバイバー』アフガニスタン駐留米軍が頑張ってた頃の話

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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