さまざまな“わけ”や“秘密”を抱えてやってくるホテルの宿泊客。それはあたかもマスカレード(仮面舞踏会)のよう。
一流ホテルの一つ、ホテル・コルテシア東京を舞台に、殺人事件を未然に防ごうとする警察とホテルマンたちの活躍を描く コメディタッチの推理サスペンス。東野圭吾原作、木村拓哉扮する敏腕刑事と長澤まさみ扮する優秀なホテルマンとの掛け合いが話題になった。

三谷幸喜作品を彷彿させる作り(つまり三谷幸喜作品ではない)

正直、僕は本作の監督もしくはプロデュースは三谷幸喜氏だと思って見ていたのだが、彼は全く関係ないようだ。

次作『マスカレード・ナイト』も公開中の人気バディムービーの第1作だが、木村拓哉がホテルのフロントとして潜入捜査に挑む刑事新田浩介を、長澤まさみがホテルマンとしての矜持を頑なに大切にしつつ彼を指導する山岸尚美を演じて話題になった作品。続編となる『マスカレード・ナイト』でも同じホテルを舞台とし、新田と山岸のコンビの活躍を中心にしている(らしい)。

本作の主人公 新田刑事は長髪と無精髭を蓄えたアウトロー的存在だが、一流ホテルのホテルマンに扮するため、髪を切り髭を剃ったニート(neat)な姿に変身。指導員である山岸の薫陶に従い、さまざまな客からの、嫌がらせに近いハラスメントに必死に耐える様が見どころの一つと言えるだろう。

タイトルのマスカレード(仮面舞踏会)とは、宿泊客という仮面で 素性やホテルに集う理由を隠している様を表しており、さらにはその仮面(宿泊客というアイデンティティ)の奥にどんな“裏の顔”が潜んでいたとしても決して詮索してはならない、お客さまとして大切に対応しなければならない、というホテルマンの信条によって表現されるが、新田たち警察官は、仮面の奥に隠された真の姿にこそ興味がある。

その考え方の違いがぶつかり合うことで、面白さを生み出しているのが本作だ。

やがて山岸たちは新田らの警察官ならではの視点の重要さに救われるが、同時に新田も山岸らが持つお客さまへの一貫した対応に心打たれるという作りになっている。

長澤まさみという役者の凄み

画像: 映画『マスカレード・ホテル』予告映像【2019年1月18日(金)公開】 youtu.be

映画『マスカレード・ホテル』予告映像【2019年1月18日(金)公開】

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本作は、「ガリレオ」シリーズや「新参者』シリーズに次ぐ、シリーズ化が検討されている作品らしい。主人公の新田浩介、そしてそれを演じる木村拓哉には相当の期待が込められているようだ。ただ、観た感じ、木村拓哉はキムタク以外の何者でもなく、いつものまんまだ。別にそれが悪いわけではないが、期待のヒーロー登場というには、特段変わったところが見られないというのは あまり良くはないのではないか?

それに比べると、長澤まさみは生真面目で、生粋のホテルマンとして振る舞う山岸尚美役を生き生きと演じていて、いい意味で持ち前の“色気”を消していた。美貌だけの俳優ではないことを証明して足る出来栄えだったと思う。

本作は、キャラクターの多さや演出の巧みさなど、全体として良い出来栄えだと言える。
が、舞台劇のそれのような造られた感が全体に漂い、真の緊迫感という意味では残念ながら近年の韓国映画のそれに負けている気はした。

昨今の邦画ブームの趨勢に反して、基本的に欧米作品偏重の僕だが、本作を観てもその傾向には変わりなさそうだ。

画像: 『マスカレード・ホテル』で再評価するのは長澤まさみの才能

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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