年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき または観なくてもいい?映画作品を紹介。
関わりを持ってはいけない人から 理不尽なまでの恨みを買ってしまった若い母子の不幸を描いた、『アオラレ』。ありえないくらいに太ってしまったラッセル・クロウが、ターミネーターばりの執念深さを持ったサイコ?な男を演じる。

いらいらしたらダメですよと教訓をくれる作品

本作は、いろいろなきっかけから 法や刑罰を恐れず ある意味全てがどうでもいいやと言わんばかりに自暴自棄になった男と、その彼にささいなことでロックオンされてしまう不幸な 若い女性の“鬼ごっこ”である。

仕事をクビになり、平穏無事に生きていくことへのモチベーションを失った男(ラッセル・クロウ)は、ある意味自暴自棄とも言えるが、社会法規から完全に自由になって自分を軽く扱った上司や同僚を殺害する。
その後信号待ちのクルマの中で考えごとをしていると、後ろからクラクションを鳴らされたことで、そのクルマを運転していたレイチェル親子に 殺意を含んだ激しい怒りの矛先を向ける、という話だ。

ラッセル・クロウ演じるこの男は、確かに理不尽で、関わり合ってしまったら最後、理屈や損得関係なしにとにかく祟ってくる悪神のような存在なのだが、本作においては、彼の異常性を見抜けぬうちに、必要以上に彼を煽ってしまうレイチェルの方にも非がある。

彼女は離婚訴訟中の、フリーランスの美容師なのだが、寝坊癖があるうえ、日常生活においてかなりだらしなくて、人と約束した時間をなかなか守れない。そのために大事な顧客を失ったり、とにかくいろいろ信用をなくすのだが、そんな自身の振舞いを直すための努力をするよりも先に、自分に起きた(自分がきっかけになって起こしてしまった)不幸に対してイライラし憤懣を爆発させてしまう。
男もイライラしていたかもしれないが、レイチェルもまた同じように苛立っていたのである。

ラッセル・クロウ演じる男の行動は明らかに異常だが、その矛先を自分に向けてしまったのはレイチェル自身であり、彼女の振る舞いもまた、やや常軌を逸していたというように思える。
彼女は理不尽な男から、あり得ないくらいの嫌がらせを受けることになるのだが、それは彼女の身から出たサビなんじゃないかな、という気もするのである。

罪も罰も怖くない人間が増えている時代を象徴

本作の主人公?である、ラッセル・クロウ演じるアオリ男は、正真正銘のクズだが、驚くべきタフネスと集中力の持ち主だ。何度もレイチェルを見失っても必ず探し出せる知恵を発揮するし、撃たれても迅速に動き回れるタフさを見せる。
これだけの能力の持ち主なら、日常生活にあっても充分活かせようものだが、それでも仕事をクビになるということは、人間は追い込まれなければその潜在能力を使いこなせないということなのだろうか。

そしてこの男の特徴として、周囲に見られることを全く気にしない。通常であれば、犯行を目撃されて、行為や身分を特定されることを恐れるものだが、彼はそれを全く気にかけることがなく、堂々と襲ってくる。捕まることを恐れるとすれば、それは単に目的を途中で果たせなくなることを嫌気しているだけで、逮捕されて刑罰に服することについてはまるで気にしていないのである。

昨今では日本においても、むしろ刑務所に入りたいから犯罪に手を染めるような、常軌を逸した者が出てきているが、こういう確信犯は、目的や動機の有無に関係なく手当たり次第に噛みつく狂犬のようなもので、狙われてしまったら、関係ができてしまったことを嘆くほかない。

良くも悪くも社会的動物である我々としては、プラス方向にのみ作用する好人物とだけ知り合っていければいいが、時として(不運にして)こういうスーパーネガティブな 疫病神的な性向の持ち主と関わり合ってしまう可能性もなくはない。そのときに自分ができること、もしくはやるべきことを今から備え考えておくことも必要かもしれない。

そんな、多少面倒なことを考えさせる映画なのだ、本作は。

(関係ないが、ラッセル・クロウのありえないくらいの太り具合は、役に合わせてのものではないらしい。何があった??)

画像: 『アオラレ』クルマを降りても煽ってくるしつこさを甘く見てはいけない

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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