年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき または観なくてもいい?映画作品を紹介。
マシュー・マコノヒー演じる大麻ディーラーの元締が引退を決意した瞬間から始まる、裏社会の住人たちの暗躍。いい人が1人も出てこない、悪人たちの宴を描いたガイ・リッチー版「アウトレイジ」。

犯罪王の引退の意思は、老いの証拠か

大麻取引の元締のミッチー(マシュー・マコノヒー)は、学生時代から一代でのしあがった裏社会の大立者だが、やがて中年になり、安楽な暮らしを求めて引退を考え始めていた。
しかし、大麻栽培手法や販売ルートなど、築き上げてきたノウハウや組織を売る算段を彼が始めたことを嗅ぎつけた暗黒街の住人たちが、大金の匂いと薄暗い成功の機会の到来を感じて蠢き始める。

ミッチーは右腕のレイ(チャーリー・ハナム)に命じて、引退に向けて動き始めるが、それ自体をミッチーの弱気の証拠とみる男たちとっては、それは反逆の牙を剥く絶好のチャンスだった。

自ら王位から下りようとする王者の意図を老いと凋落の証拠と見る多くの挑戦者が、猛烈な悪意を持ってミッチーに襲いかかる様は、ある意味グロテスクであるが、己の限界を感じてゲームから離脱しようとしているのか、それとも余力を残したうえでの撤退なのか、食いついてみないとわからない以上、命を賭けて勝負に出る男たちが多くいるのは、ある意味仕方ないし、健全であるような気もする。

暗い悪意をもって暗躍する男たちのさわやかな所業

本作の舞台はロンドン。イギリス留学生だったアメリカ人学生のミッチーは、そのままイギリスに根を下ろし、犯罪王の座に上り詰める。そしていま、長年をかけて作り上げた事業(高品質の大麻の栽培工場と販売ルート)を 富裕者に売り渡そうとしている。

その過程で、ミッチーの企てを邪魔だてしようとする者たちがいろいろ現れ、都度えげつない蹉跌が起きる。玉座から降りようとする王者をむしろ引きずり倒そうとする若きチャレンジャーたちに共感したり、逆に彼らを返り討ちにして権威を保とうとする王者の意地に感銘を受けたり、もしくは挑戦者たちを唆し動かそうとする、黒幕としての煽動者は誰なのか?を考えたりするのが、本作の正しい見方だ。

ただいずれにしても、本作にはまともな人、というか、善人は1人も出てこない。皆 犯罪者 あるいは 少なくとも法的に正しい善い行いをしようと思っている者は一切出てこない。
かといって、登場人物たちの振る舞いが粗暴であるということもない。原則として、皆 紳士的である。

本作においては、基本的に悪徳に導かれた者しか出てこないが、善意の仮面を被っておいて後ろから刺すような、後ろめたい裏切り者はほぼいない。立ち居振る舞いはあくまで紳士的(ジェントルマン)であり、発せられる悪意も真っ直ぐで正攻法なものだ。

その意味で、本作では誰に感情移入しようとも登場人物は皆悪人であることを覚悟しなければならないが、少なくとも当たるを幸いに他者に害毒を撒き散らす馬鹿や狂人は出てこない。それなりに賢いというか、悪さをするにしても理由がある、そこはまともな?人間たちしか出てこない。
それゆえに、本作は殺人や強奪などの行為が当たり前のように出てくるものの、なぜかさわやかな印象を湛える作品なのである。

画像: 『ジェントルメン』品が良いから紳士とは限らない

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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