こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。今回は、恐竜界ナンバーワン人気と知名度を持ち、数多く発見されている「ティラノサウルス・レックス」に、新たなるティラノサウルス属が2つも増えたという論文が発表されたのでご紹介します。

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部

ティラノサウルスといえばT-rex

画像: ティラノサウルスといえばT-rex

ティラノサウルスは「T-REX(ティーレックス)」と呼ばれている通り、種小名※はレックスです。現在では「ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)」というティラノサウルスが存在します。

※種小名:属名のあとに付ける名称。その種の特徴を表す。

学名の意味は “暴君トカゲ” で、rexは王です。中生代白亜紀後期マーストリヒチアンの時代に生息していた顎の力最強の肉食恐竜です。

「ティラノサウルス」、「トリケラトプス」など、名前の種小名まで知らない人間なら、ティラノサウルスはティラノサウルスだろう何言ってんだと思われるかもしれませんが、種小名が何パターンかある生き物もいます。

トリケラトプス(Triceratops)はこちらのコラムでも書いた通り

  • トリケラトプス・ホリドゥス(horridus)
  • トリケラトプス・プロルスス(prorsus)

時代や鼻のツノの位置から2種に分けられます。

トリケラトプスもティラノサウルスもたくさん化石が発見されていますが、トリケラトプスみたいにティラノサウルスも何種もいるわけではなく、ティラノサウルスは1種のみなんです。

ポールの考え

https://link.springer.com/article/10.1007/s11692-022-09561-5
2022年3月1日このような論文が出ました(フリーではありません)

37のティラノサウルス標本を調べたところティラノサウルス属は3種に分類。

  • ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)
  • ティラノサウルス・レジーナ(Tyrannosaurus regina)
  • ティラノサウルス・インペラトール(Tyrannosaurus imperator)

というように、「レックス」に加えて「レジーナ」と「インペラトール」を増やしてティラノサウルスを3種に分けるというもの。

それぞれの時代別だと、ティラノサウルス・インペラトールが最も古く、レックスとレジーナがインペラトールより新しく共存していたとのことです。

それぞれの特徴と個体について見てみましょう。

画像: ホロタイプ ja.wikipedia.org

ホロタイプ

ja.wikipedia.org

まず、「ティラノサウルス・レックス」は、成体の大腿骨の長さ、円周の比率は約2.4かそれ以下でがっしり型の体格で、ほっそりとした切歯状の前部歯骨歯を1本持ちます。

学名の基準として指定された標本のホロタイプは、CM 9380。最初に発見されたティラノサウルスですね。他にもデイナモサウルスと呼ばれていたものや、スコッティのグループです。

画像: レジーナホロタイプ ja.wikipedia.org

レジーナホロタイプ

ja.wikipedia.org

続いて「ティラノサウルス・レジーナ」は、成体の大腿骨の長さ、円周の比率は2.4以上でレックスよりも細めです。ほっそりした切歯状の前部歯骨歯を1本持ちます。

ホロタイプはワンケルと呼ばれるUSNM PAL 555000で、オークションに出されていたスタンや、亜成体で化石化の過程でマンガンがしみこんで黒が美しいブラックビューティーなどが含まれたグループです。

レジーナの意味は女王という意味。ということは全員メスでレックスは全員オス…?
いえいえ、それはありません。というかそう思われても仕方ないようで紛らわしいですね。

画像: インペラトールホロタイプ ja.wikipedia.org

インペラトールホロタイプ

ja.wikipedia.org

最後に「ティラノサウルス・インペラトール」は、がっしり型で成体の大腿骨の長さ、円周の比率は2.4かそれ以下でほっそりした切歯状の前部歯骨歯を2本持ちます。

ホロタイプはこちらもオークションにかけられたスーと呼ばれるFMNH PR 2081で、バッキーやBレックスもこのグループに含みます。

インペラトールの意味は「皇帝」。
3種どれもかっこいい種小名ですね。

完全に3種に分けられたわけではなく、どれかはっきり決められず不明のものもあります。

…とだんだん書いていてなんだこれは本当に分ける必要あるのか?個体差では?という気分になってきました。

皆さんはどうでしょう?
トリケラトプスみたいに明らかに分けられるよねというナニカがあればいいのですが、なぜ分けた感が…

これを証明したのは恐竜好きなら誰でも知っている、研究家でイラストレーターのグレゴリー・ポールさん。あらゆることで目立っているお方です(すごい人です)

画像: ポールの考え

「グレゴリー・ポール恐竜事典」という本を持っている方も多いのではないでしょうか。その本でも自身の考えを書かれていたので気になる方はチェックしてみましょう。本自体は色んな恐竜が載ってて恐竜好きなら持つべき本です。

まとめ

ポールがティラノサウルス属を種小名レジーナとインペラトールを増やすという論文がでたからって完全にもう3種に決まったわけではありません。

こんな話題があって恐竜界が盛り上がってたなぁとふんわりと覚えておくくらいでいいでしょう。

画像: スイカチェリーシーシャが最近のお気に入りの生田晴香

スイカチェリーシーシャが最近のお気に入りの生田晴香

では!

画像: ティラノサウルスが3種になるハナシ/それぞれの特徴や個体について

生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。

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前回の「生田晴香、恐竜と生きる」はこちら

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