正義感に任せていつもやりすぎて周囲に迷惑をかけることになる熱血刑事が、護送先の東京でヤクザ相手に大暴れ。ドニー・イェン主演のカンフーアクション映画は、サモハン・キンポーの伝説のコメディアクションのリメイク作品。

ほぼ死滅した香港カンフー映画

ブルース・リー(中国名:李小龍)が産み、ジャッキー・チェンが育てた香港カンフーアクション映画も、かつての勢いはとうになく、アジア映画といえば韓国発、という時代になって久しい。

(中国本土からの圧力もあり、かつてのような自由で陽気な香港映画はもう生まれないのかもしれない)

カンフーアクションにしても、今ではハリウッド映画でも(CGやワイヤーアクションなどの、撮影技術の進化に助けられているとはいえ)激しくリアルな肉弾戦はほぼ当たり前で、カンフースターたちの長年の努力もすっかりお株を奪われてそれをメインに据えようにもそれほど目立てなくなっている。

そんななか、ほぼ唯一(老骨に鞭打つジャッキー・チェンは例外として)国際的に名の通った、香港発のカンフースターとして気を吐くのがドニー・イェンだ。(とは言っても、彼ももう還暦近い≒1963年生まれ!で、後進が育っていないことを嘆く歳なのだが)

僕が近年稀に見る大傑作と推しに推しまくる『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』ではフォースとジェダイに憧れる盲目の修行僧チアルートを演じて、その凄まじいカンフーテクニックを披露してくれているが、その彼が、犯罪者逮捕に必死なあまり周囲に迷惑がかかってしまう熱血刑事を演じるのが本作だ。

失態を繰り返した結果、婚約者には去られ、遺失物係に左遷させられたショックで暴飲暴食に耽る彼はすっかり太ってしまい、めでたくデブゴンになる、という設定である。

ブルース・リーの代表作へのオマージュだが、作り自体はジャッキー映画の流れ

その後彼は、香港から日本に強制送還させられる日本人の護送をさせられることになるが、その護送先の東京で、ヤクザ相手に大立ち回りをする羽目になる、というのが本作のストーリー。

本作は、基本的にブルース・リーの代表作「燃えよドラゴン」に対するオマージュであり、太ったドラゴン(デブゴン)が活躍するユーモラスなアクションムービーとなっている。もともと本作は、リアルに太めだったカンフースター サモハン・キンポーの同名の代表作のリメイクなわけだが、設定もストーリーもオリジナルであり、旧作とはなんの関連もない。(サモハンは、「燃えよドラゴン」にも出演している)

本作において、特殊メイクでデブゴン化しているドニーだが、本作中、ところどころにブルース・リーをリスペクトするような表現が散りばめられている。デブだが動ける、そこがコミカル、というのが本作の骨子なわけだが、基本的にはシリアスな物語ではあるのだ。
ただ、アクション自体はジャッキー寄りで、中国拳法の達人、というよりも、それを含めた体術の達人という体だ。

(とはいえ、ラストの格闘には、この映画がカンフー映画なのだということを思い出させてくれるメインイベントとしてさまざまな懐かしい趣向が施されている)

東京が舞台ながら日本人として喜べる点はゼロ

繰り返し述べたように、香港で冷や飯を食わされて 暴飲暴食の結果激太りしてしまった熱血刑事が、東京でヤクザ相手に立ち回る、というのが本作のストーリーだが、彼の刑事ダマシイを奮い立たせる一つの要因として、東京の警察がヤクザとズブズブの蜜月関係になっていることがある。

外国映画における日本の描かれ方は、ちょっと俺に監修やらせろよと言いたくなるようなおかしな記述になりがちなのだが、本作でもそれは健在(言葉こそ=吹き替えになっているが 比較的許せるレベルでの発音やしゃべり方になっているが、東京に向かう道ででっかく富士山がそびえ立っていたり、麻布警察署→今はなき六本木通り沿いのあのビル! が歌舞伎町の管轄署として登場してたりと、まあよもやよもや、だw)。

しかし、香港映画(外国映画)で、日本の警察が犯罪組織との癒着していてまともに機能していないと描かれるのは、やはり心外。日本を舞台にしているのはいいが、まともな日本人は1人も登場しないことからみても、日本の良さを訴求するシーンがほぼゼロなことをみても、これは実は結構悪意ある作品だなあ、と思わざるを得ない。

(日本人が作る映画にも外国人への無理解丸出しのトンデモ映画はよくあると思うが、何気にその該当する国や文化の良い点を少しは入れて、ポリコレバランスをなんとか取ろうとする場合が多いと思うのだが)

画像: 『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』太っても動けるカンフースターの活躍を描く、東京舞台の作品

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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