35年以上も競馬を趣味に続けている自動車雑誌の編集者には、馬券を買う他にも楽しみ方があった。それが一口馬主ライフだ。数百人でサラブレッドを共同所有し馬主の気持ちになれるこのシステムは、あくまでファンドという位置づけだが、これが実に面白いのである。

競馬界では一口馬主の馬が大活躍している

競走馬の馬主になるのはとても難しい。普通のサラリーマンがなるのは無理だと言っていい。そこで考え出されたのが一口馬主というシステムだ。これは正確に言うと馬主ではなく、一口馬主システムを運営している会社が出資者を募り、1頭のサラブレッドに100口とか400口とか500口で会員を募集し出資してもらい競走馬を走らせるというシステムだ。これが競走馬用ファンドと呼ばれるものである。当然賞金も口数で均等割りになるのが特徴だ。

<2018年に一番賞金の高い主なG1レースを勝った馬>                  
桜花賞(賞金+付加賞1億2970.3万円) …アーモンドアイ(シルクエレーシング)
皐月賞(賞金+付加賞1億3487.1万円)…エポガドーロ(ヒダカブリダーズユニオン)
オークス(賞金+付加賞1億3746.1万円)…アーモンドアイ(シルクレーシング)
日本ダービー(賞金+付加賞2億円2748.2万円)…ワグネリアン(金子真人ホールディングス)
安田記念(賞金+付加賞1億1340.2万円)…モズアスコット(キャピタルシステム)
NHKマイルカップ(賞金+付加賞1億882.2万円)…ケイアイノーテック(亀田和弘)
大阪杯(賞金+付加賞1億2340.2万円)…スワーヴリチャード(NICKS)
天皇賞春(賞金+付加賞2億2748.2万円)…レインボーライン(三田昌宏)
宝塚記念(賞金+付加賞1億5336万円)…ミッキーロケット(野田みづき)
スプリンターステースク(賞金+付加賞1億1336万円)…ファインニードル(ゴドルフィン)
天皇賞秋(賞金+付加賞1億5281.4万円)…レイデオロ(キャロットファーム)
秋華賞(賞金+付加賞1億378万円)…アーモンドアイ(シルクレーシング)
菊花賞(賞金+付加賞1億4784.2万円)…フィエールマン(サンデーレーシング)
マイルチャンピオンシップ(賞金+付加賞1億1378万円)…ステルヴィオ(サンデーレーシング)
有馬記念(賞金+付加賞3億336万円)…ブラストワンピース(シルクレーシング)        
( )は賞金と馬主だが、キャロットやシルク、サンデーといった名前が見られるが、これらがすべて一口馬主のクラブである。

ちなみに2018年の馬主の獲得賞金ランキング1位はサンデーレーシング(35億4844万6000円)、2位はシルクレーシング(30億8921万2000円)、3位はキャロットファーム(26億8077万8000円)、4位は社台レースホース(20億5338万8000円)、5位はゴドルフィン(15億4597万7000円)でこれらの獲得賞金額もすごいが、そのランキングの1位から4位までが一口馬主のクラブである。

有馬記念。1着になると賞金+付加賞3億336万円が支給される。

たとえば、これら一口馬主クラブが5000万円の馬を400口募集したとする。当然一口馬主の数は400人(中には1人で2口、3口を購入するという例もある)だ。そして5000万円÷400口なので一口12.5万円がその馬の出資金となる。

その他には毎月クラブ会費、馬の維持費(エサ代など)、年1回保険代などがかかるが、それらを月平均5,000円として計算しよう。前述したように競争生活は2歳から始まるのでそれまではレースを出走して獲得する賞金がない。レースに出ない1年に加え競争生活が3年間だとすると4年間に支払うの合計は12.5万円+24万円(12万円×4年間)で36.5万円である。

でも馬主の夢、日本ダービーに勝つと賞金は、約2億2700万円になる。この80%が馬主のものになるわけだから約1億8160万円だ。これを400人で分けると一口45.4万円が入ってくるという計算(あくまでざっくりとだが)になる。

G1当日は入場者数が発表されるが、この瞬間、会場は大いに盛り上がる。

馬主孝行馬、マイネルネーベル号の例

日本ダービー馬ではないが、実際の一口馬の例をあげてみたい。私は現在、数頭の一口馬主になっているが、その内の1頭が幸運にもオープン馬になっている。名前はマイネルネーベル(マイネレーツェル×キングカメハメハ)。

現在7歳馬でいままでに42戦も走ってくれている。成績は1着5回、2着0回、3着4回、4着4回、5着3、着外25回の5-0-4-4-3-26だ。なんとも馬主孝行な馬である。

所属クラブからは愛馬の写真が送られてくる。これもうれしいサービスだ。

このネーベル号は、その母であるマイネレーツェルを一口持っていた縁もあり、出資した。ちなみにこのレーツェル号も相当に馬主孝行な馬だった。当時青森の市場で200万円でクラブが購入、それを一口クラブが育て上げ800万円で100口で募集したのだ。ちょうどそのころ、ステイゴールドの産駒で1口買えるのを探していたらこのレーツェル号が目にとまり8万円を出資したのだ。そしてなんとこれが大当たり。

なんとこのレーツェル号は重賞を2勝、G1(エリザベス女王杯)でも4着に入る大活躍をしてくれた。生涯獲得賞金は約1億7000万円。200万円の馬がこれほどの賞金を稼ぐのだから競馬は面白く奥が深い。馬主孝行な馬の見本である。今、思えばこれが一口馬主に熱中する切っ掛けにもなったのである。

その初仔がネーベル号で出資金は25万円だった。少々高い、とは思ったがクラブも期待していたようで父がキングカメハメハとなるネーベル号は、いままで42戦している。

パドックで愛馬を間近に見て声援をおくる。これもまた楽しい瞬間だ。ワクワクも止まらない。