35年以上も競馬を趣味に続けている自動車雑誌の編集者には、馬券を買う他にも楽しみ方があった。それが一口馬主ライフだ。数百人でサラブレッドを共同所有し馬主の気持ちになれるこのシステムは、あくまでファンドという位置づけだが、これが実に面白いのである。

一口持っていた母馬の子供を買い続ける魅力

実は、こうした自分に関わりのあった母馬の子供を飼い続けるというのも、一口馬主の楽しみ方のひとつだと思っている。実際に私は、レーツェル号の仔を3頭を持っている。前出の初仔のネーベル(オープン馬)、マイネルブロッケン(2勝クラス)、ノルトリヒト(未勝利)だ。

その他にもマイネピュール(レディスポート×ジェニュイン)の仔も2頭持っている。ウインオルビット(2勝クラス)、マイネピュールの18(デビュー前)である。このピュール号もジェニュインの現役時代に馬券で儲けさせてもらったのでその子供を持ちたくて一口買った馬だ。3勝したのでこのピュール号にもかなり楽しませてもらい、そして今もその仔馬の一口を持ち続けている、というわだ。

ちなみにこちらは400口の募集なので、1口の金額も3万5000円だった。これで数年間、一口馬主ライフが味わえて、さらに活躍すれば賞金も入ってるのだから最高だ。今では馬券を買うよりもこちらの方を楽しんでいると言えるかもしてない。馬券が当たらなくてつまらない、ということもあるが……。

7冠馬キタサンブラック。歌手の北島三郎さんの会社大野商事が所有していたのは有名だ。収得賞金額は7億625万円、総賞金額は18億7684万3000円だ。

話はそれたが、ここからは一口馬主の実際の成績だ。ネーベル号は、前述したように42戦も走っている。とても根性のある馬で、その点では母のレーツェル号に似ているかもしれない。

そしてこのネーベル号の出走手当は40万円×42戦=1680万円である。勝利は未勝利戦1勝(500万円)、500万下2勝(750万円×2回=1500万円)、1000万下1勝(1500万円)、1600万下1勝(1800万円)。この勝利での賞金は約5300万円となる。3着は新馬戦(180万円)、500万下(190万円)、1000万下(380万円)、1600万下(460万円)でそれぞれ1回ずつあり合計は1210万円だ。

そして4着が500万下1回(110万円)、1000万下1回(230万円)、1600万下2回(270万円×2回=540万円)で880万円、5着が1000万下1回(150万円)、1600万円下2回(182万円×2回=364万円)で合計514万円となる。ここまでの合計だけで1680万円+5300万円+1210万円+880万円+514万円=9584万円となる。

実際には6〜8着も賞金(正確には奨励賞)が出るが、ざっくりと言って9600万円の賞金を稼いでいる。その8割が馬主に入ってくるので7680万円だ。それを100人で割るので1口76.8万円の配当となる。これだけみても25万円の出資が約3倍になっていることになる。実際には維持費や保険代などがかかっているが、それでもそれ以上に十分に楽しませてもらっている例だ。こんな馬主孝行な馬を3頭ぐらいもっていれば一口馬主だけで十分に楽しめるのだ。

ここまで読んで、もし、一口馬主ライフを始めたいと思ったら、まずは牝馬を持つことをオススメする。募集価格が牡馬よりも安いので、まずはそこでもリスクを多少減らすことができるのだ。最初から多額の金額を払い、G1を狙うのもいいが、私の場合は、格安な金額でこの世界に入った。それが長く続ける秘訣でもあり、さらに格安馬が高額馬に勝つ姿も好きだからだ。

そして牝馬の場合、引退してもその仔馬でまた楽しむことができるかもしれない。もちろん、孫でも。母から子へ、そして孫へ。何年も受け継がれる。一口馬主となった馬との思い出は、私にとって最高の娯楽であり財産となっている。さて、今年はどの仔を買おうか……。

千葉知充|Tomomitsu Chiba

創刊1955年の日本で一番歴史のある自動車専門誌「Motor Magazine(モーターマガジン)」の編集長。いままで乗り継いできたクルマは国産、輸入車、中古車、新車を含め20台以上。趣味は日本中の競馬場、世界中のカジノ巡り。