鉛筆、シャープペンシル、ボールペンと筆記具にはいくつもの種類がある。そのなかでも少々特異な存在といえるのが万年筆だ。扱いやすさは他のペンに比べれば必ずしもよいとは言い難い。しかし、万年筆は工芸的な美しさや独特の書き味で、一流のビジネスパーソンや時の文豪などを魅了してやまない。その魅力とはなにか? ここでは奥深い万年筆の世界に注目したい。

【案内人】
万年筆の魅力や選び方について解説していただいたのは筆記具専門店キングダムノートの永富風貴さん。キングダムノートでは国内外の人気ブランドのほかにも、100万円はくだらないビンテージの万年筆なども多数取り揃えている。

万年筆愛好家はふたつのタイプに分けられる

「万年筆の愛好家のみなさんのこだわりは、大別するとふたつのタイプに分かれます。ひとつが書き味にこだわる人。そして、もうひとつがデザイン、限定品や希少性のある万年筆を収集してコレクター的にこだわる人です」と永富さん。

書き味という点では、国産の万年筆が人気だ。英字の場合はA、B、Cといった一文字ごとの画数が少なくシンプルだが、日本文字(とくに漢字)は画数が多いだけでなく『止め・跳ね・払い』といった独特な筆づかいが必要となる。そのため、日本人であれば、日本の文字に精通している国産万年筆の方が書きやすい、というのがその理由である。

デザインや希少性のある万年筆は、海外製に人気が偏りがちだ。万年筆が誕生してからの歴史が長いのため、ビンテージものや希少価値の高い万年筆がおのずと多くなる。また、お国柄が出やすいのも外国製万年筆を選ぶときの楽しみのひとつ。例えばイタリアならファッショナブルでデザインにこだわった万年筆が多くみられ、工業国のドイツの場合は筆記具としての質実堅剛な道具をイメージさせる万年筆が多くなる。こうした生産国ごとの違いというのも万年筆の持つ魅力のひとつなのだ。

万年筆を購入するときのポイント

「最初は、デザインで選んでいただくことをおすすめしております。いくら書き味が素晴らしくても、デザインがちょっと……というのでは、長くそのペンとお付き合いすることはできませんから」と永富さん。

気に入ったデザインが見つかれば、次にチェックしたいのがその書き味。ペン先がスムーズに流れるように書けるかどうかは、使う人によって異なる。筆圧が違ったり、書くときのペンの角度が人それぞれ異なるため書き味も変わってくるのだ。試し書きしてみて、書きやすいな、と感じたら合格。あとは使いこんでいくうちに、ペン先が使う人の書くクセに合わせて馴染んでいくのである。

「長く使えば、所有者に最適なペンになるというのも万年筆の持つ大きな魅力のひとつといえるでしょう」と永富さん

万年筆を選ぶ際は、そのサイズもチェックしておきたい。同じモデルでもいくつかの番手がラインナップされていることがある。例えば人気の高い『ペリカン スーベレーン』ではM1000~M300まで5つのサイズがラインナップされている。

手の大きな外国人はM1000やM800などだが、日本人の場合はそれよりも小さなM600が使いやすい。ビジネスシーンで多用するために携帯性を重視したいのならM400やM300がちょうどよいサイズ。(写真下はスーベレンM800とM400を比較したもの)

スーベレンのM800(写真上)とM400(写真下)

ちなみに日本人の場合、書くときにペン本体(ペン軸)の尻にキャップを被せて筆記するが、外国の場合はキャップは被せずペン軸だけを握って書くことがほとんどだという。自分が書くときはキャップを被せるのか被せないのか、といったところも考えてサイズチェックしていただきたい。

ここからは、キングダムノートに並ぶ、珠玉の逸品ともいえる万年筆をご紹介していく。
※USED商品の情報は、2019年11月時点のものです。

いつかは欲しい憧れの一本

PARKER デュオフォールド 蒔絵 リミテッドエディション2017 流水 M(写真左)

イギリスで誕生してから125年近い歴史を持つ『パーカー』。蒔絵シリーズはこれまでに何度かリリースされているが、中でも2017年に世界限定77本でリリースされたこのモデルは、蒔絵シリーズの中でも突出した人気を誇る。この蒔絵モデルの装飾のために、初めて青い漆が作られた。
価格:209,000円(税込・USED)

MONTBLANC パトロンシリーズ1992 ロレンツォ・デ・メディチ F(写真中)
万年筆メーカーの最高峰『モンブラン』の珠玉の逸品。1992年にモンブランが初めてリリースした限定モデル。その昔、イタリアの芸術家たちを支援した大富豪メディチ家の名がつけられている。ハンドメイドの彫金仕上げで、一本ずつ微妙にデザインが違うというのもコレクター心をくすぐるファクターになっている。
価格:602,800円(税込・USED)

Pelikan リミテッドエディション 1931 ゴールド B (写真右)
世界的な人気を誇るドイツの老舗万年筆メーカー『ペリカン』。本製品は1997年に5000本限定でリリースしたシリーズ。ペリカン社の創業1931年モデルの復刻版である。軸の金属の部分は18金だ。
価格:132,000円(税込・USED)

ステータスを上げるこだわりの一本

MONTBLANC マイスタースティック プラチナライン #P149(写真左)
ペン先が大振りで、筆記しているときもステータスを感じさせる一本。金属パーツ部分にプラチナを使用し、強調しすぎないスタイリッシュなデザインに仕上がっている。プラチナを使うのは近年の流行でもある。
価格:86,240円(税込)

S.T.Dupont ラインD アトリエコレクション パープルラッカー/パラディウム EF(写真中)
『デュポン』はライターだけでなく、万年筆でも高い信頼を得ているメーカー。漆を使った万年筆を作れるメーカーは世界に数社しかないが、デュポンもそのうちのひとつ。塗装の漆塗りのグラデーションが美しいだけでなく、ペン軸のベースが金属のためしっかりとした重量感があり、書きやすいのも特徴だ。
価格:86,240円(税込・USED)

GRAF VON FABER-CASTELL クラシックコレクション ペルナンブコ プラチナコーティング EF(写真右)
『グラフォン ファーバー カステル』は、元々は鉛筆のメーカー。ちなみに鉛筆の濃さを表すHBやBといった表記は、このメーカーが考案したものだ。鉛筆メーカーが仕上げたペルナンブコのウッド素材の仕上がりは非常に美しい。使い込むほどにウッドに味わいが出てくる一本である。
価格:61,600円(税込)

個性が際立つ実用的な一本

PLATINUM キングダムノート別注 出雲 黒柿 マット仕上げ(写真左)
国内3大メーカーのひとつ『プラチナ』の出雲シリーズに、キングダムノートが別注としてラインナップさせた一本。柿の木の古木である黒柿を使い、一本一本、木目が異なる個性的なデザインを実現。艶消しのマット加工のほかに、ツヤを持たせたグロスタイプもある。ウッドならではの優しい握り心地も特長だ。
価格:49,500円(税込)

masahiro ハンドメイド M型吸入式 エボナイト レッドマーブル(写真中)
万年筆職人・内野政広が手掛けた完全ハンドメイド。ねじ切り部分などは、とてもハンドメイドとは思えないほどの精密さがある。ペン先とグリップ以外はドイツ製エボナイト素材を使用。デザイン的な美しさ、滑らかな書き味だけでなく、インク吸入の内部構造も独特なシステムになっている。使いこなすほどに味の出る逸品だ。
価格:110 ,000円(税込)

Montegrappa ネロウーノ リネア レッドゴールド(写真右)
『モンテグラッパ』はイタリアのメーカー。八角形のペン軸を採用しているのが特徴で、全体のデザインもイタリアらしいセンスを感じさせる。スポーツメーカーとのコラボレーション企画アイテムも多く、アスリートたちの間では人気のある万年筆メーカーだ。握ったときの感触もよく、実用性の高い一本。
価格:67,760円(税込)

万年筆がステータスになるとき

商談やミーティングでの所作の中で、さりげなく万年筆を使ってみる。安価なペンを握っているよりも、センスのいい万年筆を持っていた方が、周りの見る目は違ってくる。いうまでもなく、万年筆を持っていた方が「こだわりがある」という印象は強くなるだろう。万年筆は腕時計と同じように、社会人としてのステータスシンボルでもあるのだ。

ただし、永富さんは、万年筆がステータスをもたらしてくれる筆記具だと認めつつ、彼自身は少し違う部分に万年筆の魅力を感じているという。

「鉛筆でもボールペンでも、手書きというのは自分の気持ちを相手に伝えやすいですよね。万年筆には、さらにプラスアルファがあるんです。インクの濃さや太さなど、同じものでも筆圧や角度によって違いが出る。ボールペンで書いたものと比較すると、そこには書き手の感情が滲みでます。万年筆で書いた文字は、繊細に自分の気持ちを人に伝えることができると思います。文字を書いてそれを誰かに伝えたい、というときにぜひ万年筆を手にとっていただきたいですね」

万年筆を選ぶならこちらへ

万年筆だけでも相当の数を誇るキングダムノート。ビジネスマンだけでなく若い女性や海外のお客さんも多い

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【筆記具専門店キングダムノート】