リキュールとも濃縮カクテルともひと味違う、果実由来の「本格醸造」
イチゴやミカン、ゆずなどの果実由来の「お酒」は、日本の各地で生産・販売されている。ただしそのほとんどは酒税法上は「果実酒」や「リキュール」に類別されるもので、いわゆる「清酒(日本酒」には該当しない。
果実を発酵させたフルーツワイン系はもちろん、麦、米、芋を始め蕎麦やら紫蘇やら黒糖やら栗やらトウモロコシやらと素材的なバリエーションが恐ろしく自由で多彩な焼酎に比べると、日本酒の原料は「米」ひとすじ。実に潔い。
ところが、そんな常識を覆す日本酒造りに取り組んでいる醸造所が、東京23区内にあった。
株式会社WAKAZE(代表取締役CEO:稲川琢磨氏)。本社は山形県鶴岡市だが、世田谷区三軒茶屋にオフィス、ほど近い太子堂に醸造所とバルをそれぞれ構えている。
WAKAZEの取り組みがユニークなのは、その醸造過程に副原料として檸檬や柚子、山椒に胡椒という「ボタニカル素材」を投入しているところにある。醪の発酵中からしっかり副原料を加えているところが、後から果実などの素材で味、香りを付加するリキュール(製造方法で言えば混成酒に当たる)とは文字どおり「ひと味」違う。
税法上は日本酒(清酒)とも果実酒とも異なる「その他の醸造酒」に当たるが、製法そのものはしっかり日本酒の伝統に則ったもの。味わいだけでなく、薫りの爽やかさが際立つ製法なのだ。
ガパオライスに似合う「SAKE」って、自由すぎるでしょ。
「FONIA(フォニア)」と名付けられた新感覚の日本酒「SAKE」のラインナップは、3種類。「SORA(天空)」「SORA(天空) スパークリング」「TERRA(大地)」と、ネーミングはとっても壮大だ。単純に「柚子風味」とか「生姜テイスト」ではないところも、その志の高さを物語っているように思える。
世界の美食との絶妙なマリアージュを目指しているだけに、公式HPで紹介されている「合わせる料理」もなかなかユニーク。SORAは白身魚のカルパッチョやバジルソースのパスタなど、まるで白ワインのような味わいを予感させる。
さらにTERRAは面白い。豚の生姜焼きとは……まあ、よし。並んでオススメされているのは、ガパオライスだ。スパイスとパクチーを合わせたタイの定番ご飯料理だけれど、こちらも実はワインとの相性がとても良いのだとか。FONIAの味わいはワインに近い。だからいろいろな国の料理と、相性がいいのかもしれない。
そんなWAKAZEの取り組みに興味を覚えたら、ぜひ直営のレストラン「Whim SAKE&TAPAS(ウィム サケ&タパス)」に行ってみよう。本社がある山形県庄内地方から取り寄せた食材を使ったタパス料理とのコラボレーションは、一度味わったらきっと忘れられない新世代の日本酒マリアージュと言えそうだ。
所在地 | 東京都世田谷区太子堂1-15-12 |
---|---|
TEL | 03-6336-1361 |
営業時間 | 18:00〜23:00 (L.O 22:00)※月〜土曜日 15:00〜21:00(L.O 20:00)※日曜日 |
定休日 | 水曜日 |
公式サイト | https://www.wakaze.jp/bar/whim/ |
神原 久|Hisashi Kambara
Motor Magazine誌など自動車雑誌の編集者としてはや30年が経過。「寄り道」と「回り道」が好きで、自動車以外にも五輪写真集や美人アスリート本、外国人ジャーナリストの文化論的単行本など、さまざまなジャンルの媒体編集を担当。特技はバレエ。趣味はゴスペルとバドミントン、配信動画鑑賞。