料理の美味しさを引き出してくれるのが日本酒であり、逆に日本酒のうまさを際立たせてくれるのが料理。日本酒と料理は切っても切れない関係ではあるが、それぞれには相性がある。本特集内【知識不要】日本酒を楽しむ簡単な方法にて、味わいは薫酒、爽酒、醇酒、熟酒の4つのタイプに分けることができると解説した。ここでは4つのタイプと相性のよい料理、そして日本酒を楽しむうえでは外せない“温度”について解説していく。
※取材協力:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)

一番飲みやすい温度はタイプで変わる

いくら相性の良い料理と日本酒を合わせても、日本酒が“美味しい状態”になっていなければその魅力も半減してしまう。その状態というのが「温度」である。

熱燗、冷や、人肌……なんて言葉を聞いたことがあるだろうか。日本酒は冷やしたり温めたり、温度によって味わいの変わる世界的に見ても非常に珍しいお酒だ。

冬は熱燗で楽しむ人も多い日本酒。その温度は50℃前後が好ましい

飲める温度の幅は非常に広いのだが、やりすぎはNG。よく聞く「熱燗」も、美味しく飲めるのは50℃前後であり、それ以上温度が高くなるとアルコールの揮発が進みピリピリとした刺激の強い味になってしまう。逆に冷酒で飲む場合、冷やす温度は-5℃程度が限界だ。

冷やは常温?

これは余談だが、ひと昔前までは「冷や=常温」と理解されていた。これは冷蔵庫のない時代に、燗酒(かんざけ・加熱したお酒のこと)以外をすべて“冷や”と読んでいた名残である。当時は夏場で20〜25度、冬場で5度前後となる常温のお酒をまとめて“冷や”と表現していたわけだ。

冷蔵庫が普及してからは上記表現は少なくなったものの、「“冷や”=常温、冷蔵庫で冷やしたものい=“冷酒”」と呼ぶケースも。とはいえ、こうした表現は日本酒を気軽に楽しみたい人にとってはわかりづらく、とっつきにくいもの。そのため、飲食業界では年々呼び方も変わりつつある。

「日本酒」と聞くと、その文化や製法などは一見して古来より継承しているもの……と考えがちだが、近年で製法なども大きく進化しており、その味もひと昔前とは比べ物にならないほど美味しくなってきた。

時代と共に刻一刻と変化しているのが日本酒、なのである。

タイプによる理想的な温度帯

話を温度に戻そう。

まず日本酒の温度による名称だが、下記表を見ていただきたい。5度刻みで名称が変わっているのがわかるだろう。実際、飲む瞬間に温度を細かく見る人は少ないだろうが、目安として覚えておくと、より日本酒が楽しめるはずだ。

表現名温度
飛び切り燗55〜60℃
熱燗50℃
上燗45℃
ぬる燗40℃
人肌燗35℃
日向燗30℃
(常温)20〜25℃
涼冷え15℃
花冷え10℃
雪冷え5℃

温度によって変わるのは、香り、飲み口、旨味、甘味、酸味、アルコール感などさまざま。例えば香りや甘味は温めることでより広がり、冷やすと爽やかですっきりしてくる。

その日本酒がどういったタイプなのか、温度によってどう変化するのかを知っておくと、自分の好きな日本酒の表情をもっと引き出せるようになるのだ。

4タイプは冷やす&温めるとどうなる⁉︎

【知識不要】日本酒を楽しむ簡単な方法にて解説した4つのタイプはどのような温度がオススメなのか?

薫酒=フルーティな香りや軽快な飲み口の薫酒は、冷やしすぎると香りが出にくくなり、熱すぎるとスッキリとした味わいが損なわれてしまう。薫酒を楽しむときは10℃から15℃前後を目安にするともっとも美味しく楽しめるだろう。

爽酒=すっきりとした軽快な飲み口の爽酒は、冷やすことでよりその特長を引き出せる。4タイプの中ではもっとも冷たい 5~10℃にして飲むのがオススメだ。ただし、熱燗が苦手かというとそんなことはない。普通酒や本醸造酒規格の爽酒のなかには45〜50度前後の燗酒にするとキリッとしまりドライな飲み口が楽しめるようになる。

醇酒=深い旨みとコクの強い醇酒は、18〜20℃の常温が理想。ただし、醇酒ならではのコクをじっくりと味わいたい人は、少し温度を上げ40℃前後のぬる燗にしても満足できるはずだ。

熟酒=熟酒の中でも軽快な飲み口のものは、やや冷たい15℃前後が飲みやすい。香味が重厚なものは少し高めの温度が好ましく、15〜25℃程度の常温がオススメだ。なかには人肌に近い35℃前後が美味しい熟酒もあるので、探してみるのも楽しいだろう。

料理との組み合わせ、温度による味の変化、こうした楽しみ方ができるのも日本酒の魅力のひとつ。もしいまお気に入りの銘柄があるのなら、ぜひとも本記事を参考に新たな表情を見つけてみてほしい。

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