地味な実力派→派手な天才ボクサーへと変貌しつつあるスペンスに挑む、雑草タイプの攻撃型ボクサーのポーター
25戦25勝21KOという頭抜けた戦績からは到底考えられないが、スペンスはその実力からすると人気面では、これまではかなり低く見積もられていたと言える。
離れても近距離でも無難に相手を捌ける絶妙なテクニックと、しっかり相手を倒せるパワー(パンチ力)を持ちながら、戦い方があまりに正統派で地味に思われたせいかもしれない。
ただ、最近ではその天才ぶりが認められつつあるし、スタイルもかなりアグレッシブになってたこともあり、スター選手が数多く存在するウェルター級というクラスにあって正当な評価を受けつつある。その証拠に、2019年3月には5階級制覇を狙ったライト級のスター マイキー・ガルシアとのスーパーファイトにありつくことができた(判定ながら、1ラウンドもポイントを与えず完封勝利)。
そのスペンスと戦うショーン・ポーターは、ウェルター級にしては小柄な体格ながら、左右のフックを荒っぽく振りながら相手にプレッシャーを与えていく、非常に好戦的な戦いぶりを得意とする。無尽蔵なスタミナにものを言わせて、クロスゲームを勝ち抜いてきた、努力派、雑草型の王者である。
(バランスの良いアーロン・プライアーのような選手だが、プライアーほどの倒し屋でもない)
およそ正反対のタイプに見える2人の戦いは、群雄割拠のウェルター級戦線において、誰が1番強いのかを決めていく、強者たちの潰し合いとして注目を集めており、今回の勝者はパッキャオやクロフォードら、人気や評価において上をいくスーパースターとのメガファイトに臨む権利を得ることになるのだ。
スペンス | データ比較 | ポーター |
---|---|---|
177cm・183cm | 身長・リーチ | 170cm・177cm |
1990年1月13日 | 生年月日 | 1987年10月27日 |
25戦全勝(21KO) | 戦績 | 33戦30勝(17KO)2敗1分 |
左ファイター | スタイル | 右ファイター |
ザ・トゥルース | キャッチコピー | ショータイム |
果たして対決の行方は?
下馬評では身長で7cm、リーチで6cmも上回るスペンスが圧倒的に有利。離れてよし、近づいてよしの万能タイプの上、欠点が見当たらないボクシングスタイルに高い評価が集まる。
ポーターが勝つとすれば出入りの激しいボクシングをして、体力勝負の判定勝利を狙うことだろう。
グリーンxレッドのグローブが華やかなポーター。対するスペンスはブルーxブラックxゴールドのゴージャスだがクラシックなグローブ。
ポーターの荒いが非常に暴力的な攻撃か、スペンスの華麗なテクニックによる洗練された攻撃が勝るか、興奮に包まれた大観衆の注目が集まる中、ゴングが鳴らされた。
突進続けるポーターに対しボディブローで対抗するスペンス
やや歩幅を広く、重心を後ろに置いたスペンスに対して、ポーターはジャブを中心に攻撃的な動きを見せる。ただ互いにそれほどの有効打はなく、評価が割れそうな1ラウンド。
2ラウンドに入るとスペンスが攻勢に転じ、右ジャブをうまく使いながらポーターの動きを抑えにいく。しかし、ポーターのスピードは変わらず、打ち合いになることによって、スペンスにも隙が生まれやすくなる。ポーターはリーチの差を埋めるため、素早くスペンスの懐に飛び込み、乱打戦に持ち込む。距離を潰されてしまうことに苛立ちを隠せないスペンスだが、ハードヒットはさせず、ボディを中心にポーターに対して反撃する。
第4ラウンドでは、ポーターのパンチが度々スペンスの顔を捕らえる。スペンスは相変わらずボディを中心に反撃するが、傍目にはポーターの派手な攻撃ぶりが目立ち、ジャッジ泣かせの展開が続く。
ポーターのなりふり構わぬ突進、ヒットは許さずボディを打ちかえすスペンス。変わらぬ展開に苛立ったか、スペンスは第6ラウンドでは自ら攻勢に入り、ポーターをロープに詰めようとする。しかしスタミナに自信があるポーターは激しく動いてスペンスを押し返し、リング中央へとポジションを移す。
スペンスのディフェンスのうまさが目立つと共に、ポーターのフットワークの良さも際立つ。押し込まれてもくるりと体勢を入れ替えるので、スペンスもしっかりと体重を乗せた強打を振るうことができないのである。
ただ、ヒット数の多さではスペンスの方が上。ポイントではスペンスが抑えているか?というところ。
王者同士の戦いは最終ラウンドへ
8ラウンドに入るとスペンスの戦い方がやや変わる。
接近戦では変わらずボディを打つが、少し距離ができると顔面へのワンツーが目立つようになる。そろそろ勝負をかけるタイミングと判断したかもしれない。
ポーターの方は変わらない。相変わらず鋭い突っ込みで距離を潰し、近距離での乱打戦を挑む。かなりの数のボディブローを受けているはずだが、スタミナが落ちているようには見えないのがすごい。逆にスペンスの方が体力を削られている。ただパンチはさほど受けていない。
終盤に至っても、スペンスの的確さか、ポーターの攻勢のどちらを評価するかでジャッジが分かれそうな展開が続く。
このまま一進一退のまま終わるか?と思われた11ラウンド、スペンスの左フックをまともに受けたポーターがダウン! かろうじて立ち上がるがダメージは大きい。
最終ラウンドで倒しにかかるスペンスだが、ポーターも意地を見せつけて反撃する。足が揃って前のめりに倒れそうなのに、ポーターの手は動きをやめない。王者同士の戦いは、判定に持ち込まれた。
試合結果
2対1の僅差の判定で、スペンスの勝利。
パッキャオもしくはクロフォードとの頂点対決へ向かうのは、無敗を守ったスペンスとなった。