Netflixオリジナル映画『マリッジ・ストーリー』は、ひと組の夫婦の離婚訴訟を描きながら、ただ愛するだけでは成り立たない、他人同士が家族になる結婚という関係性を維持させることの難しさや、必要事を情感豊かに描いた、コメディタッチのラブストーリー。
家族の別れを題材にしながら、なぜか結婚もイイかもと思わせるハートフルな作品だ。
米国における(特に州を跨ぐ)離婚裁判の複雑な在り方や弁護士たちの老練さを風刺と諧謔たっぷりに表現しているのも見どころ。

愛情だけでは続かない、夫婦の難しさを描いた話題作

NYを拠点とする舞台監督チャーリー(アダム・ドライヴァー)と 看板女優ニコル(スカーレット・ヨハンソン)は、一人息子とともにNYで暮らしていたが、ニコルは生まれ育ったLAでの新生活を求め、離婚を決意。10年の結婚生活に終止符を打とうとしていた。
2人は最初こそ夫婦間で話し合い、円満に別れようと考えるのだが、過度に感情的になるのを恐れたニコルが弁護士を介入させたことから事態は一変。お互いのアラ探しをする羽目になる。

本作では、ニコルの代理人弁護士ノラ役を演じたローラ・ダーンが第92回米国アカデミー賞の助演女優賞に輝いている。

作品を見る限り、チャーリーはニコラを愛しているし、ニコルも誰よりも深くチャーリーを理解している。2人は他人に戻る決意をするわけだが(本作はその過程を描いているわけだが)、そのプロセスの途中においても結果においても2人は確かに深く愛し合っているように見える。(2人には子供もおり、離婚を避けられるならば避けるべきだと日本人なら強く感じてしまうだろう・・・)

それでも2人から、お互いに、やり直そうという言葉は出てこない。離婚そのものは日常茶飯事な行為であり、ありふれた現実に過ぎないということがよくわかる作品なのだ。
それに、単に愛し合っているだけでは埋められない溝のようなものがあり、それは愛ではなく、別の感性を必要とする解決法を用いなければならないということを強く感じさせられるストーリーでもある。

とはいえ、救いどころのない作品というわけではない。むしろ、愛だけではないからこそ、相互の何かしらの努力を必要とするからこそ、どうしたらもっと上手くいくのだろう、と前向きに考えさせられる、ポジティブな映画であると思う。

結婚て難しいなあ。そうため息をつきたくなると同時に、なぜか結婚もイイじゃない、家庭も悪くないじゃない、という気分になる。そんな映画である。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。