リストラされて生きがいを失った青年が、たどり着いた拠り所は学生時代に愛してやまなかった一台のバイクだった。
オートバイ2020年4月号別冊付録(第86巻第6号)「Living Living」(東本昌平先生作)より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集:楠雅彦@dino.network編集部

リストラのショックから立ち直れない青年のもとに届いた凶報

私は三木タケシ。システムエンジニアとして働いていた会社をリストラされたのは7年前。当時私は27歳だった。

派遣会社に登録した私だったが、あまりいい仕事にありつけず、引越しを繰り返して、マンション生活から今のアパート暮らしに落ち着いた。

やりたいこともない、やり遂げるべき何かもない、ただ生きるために生活する、そんな惰性的な生き方にすっかり慣れてしまっていた。

実家から電話があったのはそんな時だった。
突然の雪崩に埋まって、家が潰れたという。幸いなことに、家族は全員無事だった。

大雪の中に見つけた一筋の光とは

世の中は不景気だ。あえなく派遣切りにあった私は、それをきっかけに実家の様子を見に故郷へと戻った。雪崩に遭った実家は手付かずのまま、一面真っ白な中に、かすかに残骸がみえるありさまだった。

私はしばし茫然とその様子を見つめたまま突っ立っていたが、不意に思うところがあって、スコップを持ち出し、雪をかき分け始めた。

そこに何がある?

そこにあるのは、いや、あって欲しいのは、わずかばかりの光。一心不乱に掘り続けた私はやがて、目当てのモノを探し当てて、思わず叫んだ。

「あったぞ!」

愛してやまなかった愛車、SUZUKI Bandit250VZ

それはバイク。一台のオートバイだった。
学生時代、輝かしい未来だけを信じて、何もかもが輝いていた時代に愛してやまなかった愛車、SUZUKI Bandit250VZ。山賊という勇ましい名前を持つそのバイクを雪の中から掘り出した私は、実家からそのバイクをアパートに運び込むことにした。

なにもかもサビついてら

アパートの軒先に置いたそのバイクを改めて見直した私は一人呟いた。こりゃ無理かな、と投げ出したくなったが、それでも私は、苦労して掘り出したかつての愛車をもう一度走らせるために修理を始めることにした。

その姿に、私は私自身を投影して見ていたのかもしれない。あちこちサビついてボロボロになっているのは、私も同じだったからだ。

バイク屋に修繕を頼む金はない。
私は工具を用意して、バイクの修理に取り組み始めた。

かつての愛車を再び走らせようとするタケシ

愛するバンディットは果たして蘇るのか

楠雅彦 | Masahiko Kusunoki

車と女性と映画が好きなフリーランサー。

Machu Picchu(マチュピチュ)に行くのが最近の夢。