邦題の印象だと若いカップルが事件に巻き込まれていくクライムアクション映画を想像するが、実際には犯罪をスパイスにした青春ロマンスという感が強い。
母親の死と親友の死を重ね合わせてしまう青年をアンセル・エルゴートが好演
主人公のアディソン(アンセル・エルゴート)は、ワシントンD.C.に住む高校3年生。母親の突然死によるトラウマを抱えていたが、友人らとの戯言や美しい幼なじみフィービー(クロエ・グレース・モリッツ)との恋路を楽しむ“今どきの若者”の顔でそのトラウマを努めて隠していた。
ところが、アディソンの行きつけのカフェでアルバイトをしていた同級生の黒人少年ケヴィンが何者かに射殺されるという事件が起きたことで、アディソンは再び激しい憂鬱と不安定な精神状態に追い込まれてしまう。アディソンは母親の死と友人の死を分けて受け止めることができず、どうしても重ね合わせて考えてしまうのだった。
しかも、ワシントンD.C.内では麻薬取引を行うギャングがらみの殺人事件が頻発しており、多望な警察がケヴィンの死もその一環として片付けてしまいそうなムードにアディソンはさらに苛立っていく。やがて彼は、自らケヴィンを殺した犯人を捜すことが自分に課せられた使命であると確信するようにようになっていく・・・。
高校生を主人公にしたクライムサスペンス小説「November Criminals」を原作に映画化された本作、邦題の『クリミナル・タウン』から想像される内容とは違って実際には、多感な時期にいる若者の心模様と、彼らを心配しながらも見守ることしかできない親たちの逡巡を描いた青春物語であり、「スタンド・バイ・ミー」に近い体裁を持つ作品だ。
デビッド・ボウイ推しの理由を知りたいが・・・
本作では、主人公アディソンの部屋にデビッド・ボウイのポスターが貼られているし、(僕の勘違いでなければ)早逝した彼の母親が若い頃の記録ビデオの中でデビッド・ボウイのイラストと思われるTシャツを着ている。さらに挿入歌としてデビッド・ボウイの楽曲が使われているなど、なぜかわからないが(少し調べたのだが理由はわからなかった)、一貫してボウイ推しになっている。
前述したように、クライムサスペンス映画ではあっても、モードとしてはティーンエイジャー特有の不安定な情感や動揺を扱う映画であり、激しいアクションはゼロ。その意味では、デビッド・ボウイが持つ妖しく中性的なエロスとの相性は確かに良いのだが。
クロエ・グレース・モリッツの可憐な美少女ぶりが見もの
本作が公開されたのは2017年。高校3年生(17-18歳)の少女の役を演じているクロエは1997年2月生まれなので当時20歳くらいだが、殺人事件の真相を自ら突き止めようとする恋人に協力しながらも彼の暴走を心配する可憐な美少女ぶりを遺憾なく発揮している。
主人公を演じるアンセル・エルゴートの繊細な演技も上等だが、クロエの美貌と、「キック・アス」のヒットガールも大きくなったなあと本作とは関係のない感慨を楽しむほうが、本作を観るべき理由になると思う。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。