社会の底辺にひっそりと暮らしながらも明るさを忘れない不思議な家族の生活と別離を描いた、是永裕和監督の大ヒット作品。アカデニー作品賞に輝いた『パラサイト 半地下の家族』と対比されるが、もちろんこちらの方が公開は先。
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【公式】『万引き家族』大ヒット上映中!/本予告(パルムドール受賞)

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『万引き家族』特報

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万引き常習者たちの偽装家族に見る、真の“つながり"とは

賢明に働いてはいるものの、足りない生活費は万引きで補う。貧しい暮らしをしながらも毎日それなりに明るくは生きている。
そんな社会の底辺に生きる家族(観ればわかるが、家族とは言っても彼らは血縁関係ではないのだが、生活を共にして精神的にも相互依存していればそれは家族と言っていいだろう)を描いた本作は、2018年のカンヌ国際映画祭の作品賞(パルム・ドール)の受賞を果たした。

【公式】「万引き家族」2.8より凱旋上映決定!SPOT

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本作は、日本という、誰もが考える“裕福"であるはずの先進国に厳然と存在する社会的弱者を描きながら、社会の最小単位であるはずの家族の在り方を、血縁以外のつながりによっても成立し得るものとして説明しているところが、大きく評価されたところだろう。
(劇中、父親"役"のリリー・フランキーに、長女"役"の松岡茉優が、母親"役"の安藤サクラと「いつセックスしているのか?」と問うシーンがあるが、リリー・フランキーは股間ではなくハートでつながっていると答える。さらに松岡茉優が、普通は(股間=欲望に飽きたら)金で繋がってる、というと、リリーは俺たちは普通じゃないからな、と言う。このシーンが本作のテーマを象徴している。実に何気ないカットなのであるが)

家族を大事にしようと思える作品。家族と過ごす時間が長くなっている今だからこそ観てほしい

本作は、前述したように2018年のパルム・ドール受賞作だが、2019年に似たように先進国における(光に隠されがちな闇としての)社会的弱者の家族を描いた『パラサイト 半地下の家族』にそのテーマ性やアジア映画の“頂点"としてのポジションを奪われてしまった感がある。(後者はパルム・ドールに加えて非アメリカ映画初のアカデミー作品賞受賞作だから、やむを得ないとしか言いようがないが)

高いGDPを持つ国として華やかな側面で知られる反面で、犯罪に手を染めなければ生きていけない下層の暮らしに耐える“家族"を描いている、という意味では本当に同じ設定なのだが、実際には『パラサイト 半地下の家族』は社会構造の歪さや下層民の暮らしに焦点があり、本作『万引き家族』はむしろ (個人と個人が融合して生活を共にしている社会単位としての)家族の意味を描くことに重きを置いているので、テーマとしては全く異なるものである。

緊急事態宣言が発止され、多くの人々が、より長く密度濃く家族との時間を持つことを強いられている(もちろんそれが苦痛と捉えられがちと言っているわけではない!)2020年4月現在において、本作が持つ意味を今一度正面から考えてみることをお勧めしたい。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。