無敵の父親といえばリーアム・ニーソンだが、本作では、除雪作業に長年従事してきた男が、一人息子を殺した麻薬組織への復讐の鬼と化す。

映画『スノー・ロワイヤル』15秒TVCM

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いつものキレキレアクションムービーかと思いきや

スキー客が落とす金で潤う、雪深いアメリカの田舎町キーホー。
長年除雪作業に従事してきた男コックスマン(英語では男根男、と聞こえる。そのことで周囲からもからかわれることが多い)は、空港勤務をしている一人息子が麻薬の過剰摂取(OD)で死んだという知らせを受けて茫然とする。
息子の死因に納得できないコックスマンは、息子は 実は麻薬を盗んだと疑われたことで麻薬組織によって殺害されたことを突き止め、復讐することを誓うのだが。

無敵の父親役で大ブレイクしたリーアム・ニーソンだが、今回は趣味のハンティングから得た銃器の知識以外は、特別な能力を持たない、普通の男を演じている。そのためもあってか、復讐を誓う父親と麻薬組織の激しい銃撃戦のような、従前のニーソンアクションはなく、少し肩透かしを受けるかもだ。とはいえ、それ自体は悪い意味ではなく、映画としてはよくできたストーリーになっていると思う。

また、彼に追われることになる麻薬組織の若きボスは、『レオン』でゲーリー・オールドマンが見せたキレ気味の悪徳警察官にも似た、エキセントリックな悪人ぶりで強い印象を残している。

他人から不用意に愛する人を奪ってはならない

本作は、前述のように、息子を死に追いやった相手への復讐劇ではあるものの、ストレートなアクションを描くというよりは、父と息子の関係の違いを描くことに脚本家は長い時間を費やしているようだ。

本作には、3人の父親とその子供が登場し、それぞれが異なる関係性を持っていて、単一化されていない。と、いうよりも、本作では 愛する人を奪われたことによる絶望に全身を蝕まれた人たちが、それぞれのやり方で復讐に挑む、その姿を リーアム・ニーソン演じる除雪作業者の行動に重ね合わせていく物語なのである。

予告編などのティーザーからは、激しい憎悪に駆られた父親の復讐劇、そしてそのアクションをという予見を得ていたが、実のところそうではなくて、1つの罪が コラテラルダメージ(巻き添えによる被害)を生みながら、復讐者を増やしていく様を描いた作品であり、不用意に人の恨みを買うものじゃない、とつくづく感じさせる物語なのである。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。