1980年代のレーガン政権下で起きていた政治的スキャンダルとイラン・コントラ事件を背景に、政府の陰謀に巻き込まれた1人の女性ジャーナリストを描く、サスペンス映画。タフで向こう見ずな女性記者を演じるのはアン・ハサウェイ。

イラン・コントラ事件(イラン・コントラじけん、Iran-Contra Affair)は、アメリカ合衆国のロナルド・レーガン政権が、イランと裏取引をした上に、同国への武器売却代金をニカラグアの反共ゲリラ「コントラ」の援助に流用していた事件。1986年に発覚するや、アメリカ国内のみならず世界を巻き込む政治的スキャンダルに発展した。

レーガン政権下の政治スキャンダルを追う女性記者

1980年代、米国はレーガン政権下にあったが、中南米の反共運動に秘密裏に資金供与しているという黒い噂がまことしやかに流れていた。
真相を暴くため、取材活動に取り組んでいた新聞記者のエレナ・マクマホンは、政府からの圧力に一時は現場を離れるものの、病に倒れた父親ディックが 借金返済のために引き受けていた汚れ仕事の裏に、米国から中南米への武器の闇取引の存在が潜んでいることを嗅ぎつけ、危険を顧みず、ディックの代役として取引現場に潜入するが・・・・。

主演は『プラダを着た悪魔』などで日本でも人気の高いアン・ハサウェイ。タフで敏腕な政治記者エレナを演じている。
その父親役にウィレム・デフォー。エレナが巻き込まれていくイラン・コントラ事件の真相を隠蔽しようとする政府高官役にベン・アフレック。

原題は『The Last Thing He Wanted』(彼が望んだ最後のコト)。“彼”を意味するのがデフォーなのかベン・アフレックなのか、観賞後に考えてみると、そのタイトルの意味が分かる。

上質なサスペンスだが、やや複雑でわかりづらさも

本作は、日本でも大きな話題を呼んだイラン・コントラ事件の裏側に暗躍していた 政府もしくは諜報機関の非常に湿度の高い陰謀の存在を白日のもとに晒そうとする政治記者の行動と、その動きさえもすべて暗い陰から凝視しているかのような不気味な存在を描いた政治サスペンス・スリラーだ。

謎を追っているつもりのエレナが、実は追われている、もしくは利用されていることに気づかされるとき、言い知れない不安が彼女を襲うが、その描写は実にリアリスティックで、日常とは異なる闇の中に棲息している者たちと、不意に接触してしまったかのような恐怖に慄然としてしまう。それは、決して踏み込んではいけない世界に足を踏み入れてしまったのではないか?という激しい後悔を感じざるを得ないものだ。

ただ、日本人からすると、地政学的にあまり馴染みのないエリアを舞台にした話であるうえ、イラン・コントラ事件の記憶も風化してしまっている、一昔前の話であるので、エレナが感じているであろう恐怖に共感はできるものの、ストーリーそのものは ちょっとよくわからない、筋を追いきれないということになる気がする。

決して複雑な話ではないのだが、物語に簡単に入り込んでいけない、敷居の高さが本作にはあるかもしれない。
逆に言えば、本作の背景を正しく認識できる基礎知識があれば本作を十分楽しめるだろうし、本作はその知識の備えに応え得る 上質なサスペンス映画であると思う。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。