同日同時刻に生まれるという不思議な出生を遂げた7人の子供たちがスーパーヒーローとして育てられるも、反抗期を迎えてそれぞれの人生を選択。育ての親の死をきっかけに再集結した彼らを待っていたのは数日後に地球が滅亡するという予言だった。
マーベルでもDCでもない、マイナーなアメコミ原作の、NetflixオリジナルのSFドラマ。

ストーリー

1989年、世界中で身に覚えがないのに多くの女性が突然妊娠し、同じ日の同じ時刻に出産するという謎の事件が発生した。アメリカの大富豪レジナルド・ハーズリーブズはその中から7人の子供を養子とすると、世界平和維持を目的とする組織アンブレラ・アカデミーのメンバーとして育てる。選ばれた子供たちは、それぞれ特殊能力を備えたスーパーヒーローとして成長するが、やがて高圧的なハーズリーブズの教育方針に反発するようになり、1人1人アカデミーを離れていく。
やがてアンブレラ・アカデミーは事実上の解散状態となってしまうが、ある日ハーズリーブズが 突然の死を遂げたことをきっかけに、大人になったメンバー達は再集結するのだが・・・。

ほどほどの特殊能力はあれど、力を合わせることを知らない家族の試行錯誤

本作では特殊能力を持ち、子供時代は目覚ましい活躍をしていたものの、大人になってからはそれほど幸せでもない暮らしをしている元ヒーローたちの悲哀というか、ややせちがらい人生が描かれている。
というか、特殊能力を持って生まれた子供たちが世界平和を目指すヒーローとして育てられるという設定は、X-MENを彷彿させるものの、アンブレラ・アカデミーのメンバーたちの能力は、X-MENのミュータントのそれに比べるとちょっとちゃちいというか、かなり見劣りする。
中にはX-MENで活躍できるくらいの力の持ち主もいることはいるのだが、全体でみると とても世界を救えるほどのハイパワーとは思えないもので、結果としてアクションシーンはだいぶ少ないし地味だ。

アンブレラ・アカデミーのメンバーとして集められた子供たちは、それぞれナンバーで呼ばれる。ナンバー・ワン(1号)とかナンバー・ツー(2号)といった具合だ。
主人公と目されるのはナンバー・ファイブ(5号)で、空間移動ができる、メンバーイチの能力者で、彼が時間旅行を試みることで 地球滅亡の日がすぐそこまでやってきていることがわかるのだが、人類の歴史上のさまざまなイベントに影で関与してきた謎の組織(『フリンジ』に登場する「監視人」を思い出させる)が登場したりして、問題解決の糸口は見えない。

というより、アカデミーで兄弟姉妹として育てられたはずのメンバーたちにして、絆こそあれど結構仲が悪くて なかなか協力し合おうとせず、孤軍奮闘の結果事態を悪化させてしまう。

結局のところ、義父であるハーズリーブズの育て方が悪いから、愛情を注ぐことが少なかったから、こんなバラバラの家族になったんだろうとしか言いようがないのだが、逆にいうとそんな欠陥のある人物がなんで世界平和を目指す組織を作ろうと思ったのか、本当に謎だ。メンバーたちの出生の秘密とともに、物語最大の謎と言えるかもしれない。

少なくとも2-3話は一気に鑑賞することをオススメします

現在公開中のシーズン1では、バラバラの兄弟姉妹たちが、不可避に思える地球壊滅の未来を目前として戸惑う姿と、その不幸な未来を回避するために必死に抗う姿勢を見せるナンバー・ファイブ、そして人類をどうしたいのか その意思と目的がよくわからない謎の組織の思惑がクロスしながら混迷を深めていく。

本作に限らず、動画配信サービスの連続ドラマは、一定のタイミングで少しずつ見ていく(例えば月9ドラマのように、毎週1話ずつ見て、ワンクールを過ごす)というより、1シーズン10話〜を短期間に一気に観る、少なくとも1度に数話観るという鑑賞方法を前提に作っているのかもしれない、と最近思うようになってきた。
正直この作品も、1話だけ観るとなんだかわからず それほど面白味も感じないまま脱落してしまったかもしれないのだが、数話まとめてみると、なんとなく世界観も理解し始めて、その面白さも分かってくる。
逆にいうと、1話だけみても、きっとハマらない。登場人物も多いので、背景を理解しようとする余裕があると、かえって矛盾に引っかかってしまうだろうから、考える間もなくまとめて勢いに乗るのがいいと思う。

従って、なるべくまとめて一気に観了することをオススメする。そんな作品だ。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。