ストーリー
抜群の殺しのスキルを持つ暗殺者 ヘンリーは、加齢による衰えを自覚したとき、引退を決意する。しかも国家の指令に闇雲に従い、ターゲットとなる人間を射殺し続けてきた長いキャリアがトラウマとなって、彼の心身を痛め続けていたのである。
そんなヘンリーは、所属する米国の諜報機関に引退の意志を告げるのだが、突如 味方であるはずの組織から命を狙われ始める。チームとして働いてきた友人たちが巻き添えになって次々と命を落とす中、逆襲を決意したヘンリーだったが、自分をつけ狙う凄腕の殺し屋の顔を見たとき、強い衝撃を受ける。自分より遥かに若いその男は、若い頃の自分にそっくりな容姿を持っていたのだ。
一流の兵士のクローンを作ることによって、最強の軍隊を作ろうとする悪魔的な陰謀の存在と対峙することになったヘンリーを、人気俳優ウィル・スミスが好演。ヘンリーと同じ顔を持つ、若き暗殺者“ジュニア”を演じるのもウィル。もちろん最新の映画技術が 20代前半の若い顔と肉体を再現している。
息子に対する父親のような気分になれる?
主人公のヘンリーは、最強の追手“ジュニア”が自分のクローンと知ってショックを受けるわけだが、本作では、ヘンリーがジュニアに対して 息子に対する父親のような気分を味わっているように描いている。
ヘンリーは若くて優秀なジュニアに過去の自分を見るが、同時に自分と同じトラウマを抱えるような人生を送って欲しくないと願う。ジュニアは自分がクローンと知らず、相手が誰かも知らずにヘンリーの命を狙うが、その強さに舌を巻く。それはあたかも偉大な父親を越えようと足掻く息子の姿のようでもある。
僕は本作を観る前から、その基本コンセプト(主人公が自分のクローンと戦うというもの)は知っていたが、能力のピークアウトを目の当たりにした男が過去の自分と向き合わされるという苦さ(例えば キング・カズが、25歳の自分とプレーしなければならなくなったとしたら?と言ったら理解しやすいだろうか?)を描いたものかと思っていたが、実際には過去の自分が持つ若さや無鉄砲さを羨むような描写は本作にはなかった。
子供がいる人ならば、自分の遺伝子を持つ存在に対して、羨望や嫉妬を持つことはないのだろうが、自分にはもうない若さと将来性を武器に自分に立ち向かってくるとき、衰えを意識するのか、まだまだ負けられねえ!と闘志をかき立てられるのかが問題だと思っていた。しかし、本作ではむしろ その若さを眩しく思い、優しい気持ちを育まれる姿を描くことを選んでいるようで、世間的にはそれが本道であるのだろうなというのが見終わったからの強い感想だった。
壮年の男にとって、優秀な若い世代の追い上げは脅威?過去の自分より今の方が優れてると胸をはれる?
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。