カナダの女性画家モード・ルイスとその夫エベレットの生涯を「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンスと、イーサン・ホークが演じる感動作。独学ではあるが卓抜なセンスを持つ画家モードは、若年性リウマチを患っていた。武骨で愛情表現が下手な夫エベレットと共に、清貧で地味な生活の中で制作活動に打ち込んでいく・・・

実話に基づくストーリー

あまり成功していない事業家の実兄と離れ、叔母の家に世話になっていたモード。
幼い頃から若年性リウマチを患う彼女は、絵を描くことくらいしか楽しみがなく、働きたくてもなかなか仕事にありつけず、肩身の狭い思いをさせられていた。

そんな中、モードは住み込み家政婦を探している魚売りの男エベレットの存在を知り、彼の家に転がり込む。
四肢に麻痺があるモードを、不気味に思い邪険に扱うエベレットだったが、行き場のなさから必死に働こうとするモードを哀れに思ってか、家に置くことには同意する。

孤児院育ちということもあり、とても社交的とは言えない武骨なエベレットだが、徐々にモードのひたむきさに敬意を持ち、少しずつ愛情を抱くようになる。同時にモードも自分にきつく当たるエベレットの不器用さの奥に、自分への優しさが潜むことを理解し始め、彼との生活を続けていくことを強く望むようになるのである。
そして2人はやがて男女の関係となり、結婚することになる。

エベレットの小さな家で暮らしながらも絵を描き続けたモードだったが、偶然彼女の作品を評価するアメリカ人女性と出会えたことで、画家として生きていく道が開ける。彼女の絵は世間から高い評価を受け始め、やがて米国副大統領をも顧客にするようになるのだが、モードはエベレットとの生活を続けながら制作を行う、それまでと変わらない暮らしを続けるのであった。

主人公モードを演じるサリー・ホーキンスの演技力

モードを演じるサリー・ホーキンスは、『シェイプ・オブ・ウォーター』では口の利けないヒロイン役だったが、今回は若年性リウマチというハンディを背負いながらも、必死に自立を目指す女性を演じている。

サリーは決して美人とは言えない容貌ながら、非常に芸達者であり不思議な魅力を持つ、良い女優さんだと思う。今回も、リウマチによって手足が不自由(さらに加齢に応じて症状はひどくなる一方)な女性の苦しみを巧みに演じながら、それでも観ている者には同情よりも健気に振る舞うヒロインの強い意志に感銘を受けさせるのが凄い。

夫役のイーサン・ホークは、最初こそモードのことを疎ましく思いながらも、健常者と同じように生きようとするモードの姿勢に徐々に惹かれていく、そしてそれを簡単には認めず態度に出そうとしない、頑固な男エベレットを熱演している。
時代背景は20世紀初頭であり、第二次世界大戦前のカナダの田舎町が舞台。
モードのような病人への理解は乏しく社会的保障もない時代だったし、そもそも女性の自立を認める空気もなかったはず。現代の目で見るとエベレットのモードに対する態度は やや傲慢で、今どきの感覚で言えば妻に逃げられて当然と思われるタイプの男だが、当時は特に珍しくもない、普通の男だっただろう。

そんな“一昔前の”時代にあって、つらいハンデに負けずに人生を全うした女性と、彼女の伴侶との 他人にはわからない心の交流を描いた、地味で静か、胸を熱くさせるのではなくなんとなくホッとさせる温かい作品だ。

映画『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』予告編

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小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。