プレスライダーのヤマシタの愛車は、スズキのカタナ。どんなヤツが来たって、いつだって上等、ぶっちぎるぜ。
オートバイ2021年1月号別冊付録(87巻 第2号)付録「Good Speed View」(東本昌平先生作)より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集:楠雅彦@dino.network編集部

オレはプレスライダー。カタナ乗りさ

オレはヤマシタ。新聞社の要請で動くプレスライダーさ。
え?今どき メールじゃなくてバイク便使うなんてめずらしいって?

まあな。よっぽどなんじゃないかね。
ま、そのおかげで喰っていけるわけなんで、オレとしちゃあなんの文句もないわけさ。

この日も行きつけのバーで待機していたオレに電話で呼び出しがあった。逮捕寸前の有名人とやらを張ってほしいという依頼だった。現場は赤坂。そいつのマンションらしい。
オレは勇んでバイクに跨ると、赤坂に向かった。

カタナで追いかけるのは・・・

オレの愛車はスズキのカタナ。
新型じゃあない。

1981年に日本デビューした、GSX1100Sだ。まあオレのはそんなに古いやつじゃないけどな。
現行の最新マシンに比べりゃ、そりゃ旧さは否めないかもしれないが、1,074ccの空冷四発エンジンは111PSを叩き出す。公道ならどんな奴がきたって道を譲る気なんてさらさらないってことよ。

現場に着くと、オレは他のプレスに混じってターゲットが出てくるのを待った。令状はまだ出てないらしいが、へたしたら今夜にでも出るかもしれない、そんな会話が飛び交うなかオレたちは肌寒さを堪えながら、事態が動くのを待ち続けた。

そのとき、マンションの駐車場から、一台のド派手なクルマが飛び出てきた。ベンツのクーペ。AMGぽい。
あれだ‼︎ と誰かが叫んだのを契機に、オレたちはバイクに飛び乗った。

追うぜ。相手がAMGだろうがランボだろうが逃がしゃしない。オレとカタナの長い夜が始まった。

楠雅彦 | Masahiko Kusunoki

車と女性と映画が好きなフリーランサー。

Machu Picchu(マチュピチュ)に行くのが最近の夢。