インディアナ州の女子高生エマはレズビアンであることを理由にプロム(米国の高校・大学の卒業記念行事として行われるダンスパーティー)への参加を禁じられる。このニュースを見つけた落ち目のブロードウェイスター ディーディー(メリル・ストリープ)、ハリー(ジェームズ・コーデン)、アンジー(ニコール・キッドマン)、トレント(アンドリュー・ラネルズ)の4人は、エマに肩入れすることが良い売名行為になると考えてインディアナ入りするが?
ヒロインのエマを演じた新人女優ジョー・エレン・ペルマンの好演も話題になったミュージカルドラマ。

米国の田舎町で性差別を受ける女子高生を救ったものとは?

米国ならば、LGBTQに対する公的な人権は既に認められていると考えられがちだが、やはりそう簡単には 人間の心の中の偏見や差別を取り除くことは難しく、特に インディアナのような田舎町にあっては、同性同士の恋愛は異端扱いされる。

本作の物語は、同性の恋人と共にプロムに参加すると宣言した1人の女子高生が周囲からの激しいバッシングにあうことから始まる。
エマが通う高校の校長は、エマの選択は米国憲法で認められた人権であるとして、エマのプロム参加を認めないPTAに対して激しく抗議を行うが事態を改善させることができない。

ジェームズ・メレディス事件を彷彿させる差別的な事件

これは黒人の公民権運動が激化した1960年代にミシシッピ大学入学を強行した黒人青年ジェームズ・メレディスの事件を彷彿させる事態である。メレディス青年の場合は州政府と連邦政府の対立を招いたが、エマの場合は頑迷に同性愛を認めないPTAに異議を唱えて集結してくれたのは、下心を持ちながらも(多様な嗜好を認めるべきとする)リベラルな、ディーディーら4人のミュージカルスターだったというのが本作の新しさである。

本場のブロードウェイで失敗を繰り返し、行き場を失いかけていた4人は、エマを支援することで全米の注目を集められるのではないか、と考えた。エマを救うことが、再びトップスターに返り咲くきっかけになると考えたのである。

ディーディーらの行動は、それゆえかなり身勝手で扇動的すぎ、そのため大きく空回りするのだが、それでも孤軍奮闘するエマにとっては心強い援軍だった。そして、孤独な中でも自らの信念を曲げないエマの影響か、ディーディーら4人も エマを心の底から応援するようになる。

やがて彼女らの気持ちは一つになり、エマへの偏見に満ちた周囲の目にもやがて変化が訪れていく・・・。

覚えておくべきキャストは・・

ディーディーら4人は、視聴者数1600万人とされるTV番組で自己主張すべきとエマを焚きつけるが、エマはネットでの小規模な配信を選ぶ。この辺りが2020年の作品らしいと言えるが、全体的に本作は王道的なミュージカル映画の文法を踏襲した作りになっている。ディーディーを演じたメリル・ストリープをはじめ、4人のブロードウェイスターらはそれぞれが見せ場を持ち、達者な歌と踊りを披露してくれる。
僕自身はミュージカルは好きではないのだが(というより、もともとは嫌いだったが)、MVの普及のおかげだろうか、音楽の中でストーリーのあるドラマが展開する作りにだいぶ慣れてきており、本作もそれほど違和感なく楽しむことができた。

ヒロインのエマを演じたジョー・エレン・ペルマンは正直僕の好みではないので、それほど思い入れはないが、それでもその歌とダンスは素晴らしいもので、巨大な才能の片鱗を確かめられた。

同性愛をテーマにした作品は近年すごく多いが、本作はよりライトでさらっとした作りで、そうしたテーマから離れて純粋に華やかで煌びやかな音と画面を楽しめるので、年齢性別を問わずに家族で見られる作品になっているので、安心して鑑賞して欲しい。

ちなみに、ハリーを演じたジェームズ・コーデンは、セレブを乗せた車内で一緒に歌を歌うというバラエティ企画「カープール・カラオケ」で有名な英国人コメディアン。(ミシェル・オバマ元大統領夫人らとも共演!)
本作でも実に芸達者で、メリル・ストリープやニコール・キッドマンを喰う存在感を見せているので、この人を知らなかった人はこの機会に顔と名前を一致させておくべきだろう。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。