マンハッタンの高級アパートメントに暮らす元トップモデルのジェイドは、ある日一方的に夫ニックに離婚を迫られる。さらに 予告なく現れた夫の前妻マリアが、アパートメントの所有権の半分は自分のものだと主張する事態に。
浮気性の男の身勝手な行動に翻弄される女たちの“訳あり”の模様を描いたコメディタッチの作品。

ファッショナブルでスタイリッシュなシーンをコミカルに描いた作品

元スーパーモデルで、今はファッションブランドの立ち上げ準備中のジェイドは、10年前に略奪婚を果たし、マンハッタンの高級アパートで夫ニックと2人暮らしをしていた。ところが、そのニックが今度は自分よりはるかに年若のモデルに走り、一方的に離婚を言い渡され、華やかで自由な生活が突如脅かされることになる。

経営者としての多忙さと相まって、私生活のトラブルに平静を失うジェイドだったが、さらに追い打ちとなる事態が発生。ニックの前妻マリアが突如現れて、ジェイドが住むアパートの所有権の半分は自分のものだと主張したのである。

フラストレーションが溜まり爆発しそうになるジェイドの苛立ちに対して、我関せずという風でアパートに住みつくマリアだったが、ジェイドには一刻も早く事態を好転させたい理由があった。
彼女の事業のスポンサーであったニックが失踪したため、彼女の会社は資金不足に陥りかけていたのだ。この危機を脱却するには、ニックとヨリを戻すか、それは諦めてアパートを売却して資金を作る他ない。ジェイドは後者を考え始めるが、マリアは馬耳東風で全く協力しようとしない。アパートが売れればマリアにも大金が入るのになぜ? 何を考えているのかわからないマリアの様子にジェイドの混乱と苛立ちは募っていく・・・。

浮気性の男の身勝手な行動に人生を狂わされた2人の女の動揺と顛末をユーモラスに描きながら、スタイリッシュさを忘れない、クールなコメディ作品。

ライフスタイルの異なる2人の女

本作は、恋多き男に振り回されながら、年齢やライフスタイルがまったく違う2人の女の間に生まれてくる、不可思議な友情を描く作品だ。

モデルとして、いつまでもその美しさを保とうと必死に加齢に抵抗しようとするジェイドの努力をマリアは笑うが、だからといってそのアンチエイジングぶりをまったくの無駄と断じる空気は本作にはない。見た目の美しさや、アーティスティックでデザインコンシャスな生活(ということはそこそこカネがいる生活)を多少皮肉る様子は見られるが、全然意味がないと突き放すこともしていないのだ。

また、快適な暮らしを一義に考え、素晴らしい料理の腕前を持つマリアは、家庭持ちたい男の理想の妻像のひとつのようにみえるが、そんな彼女(と娘)を捨てて、若かりし頃のジェイドにニックが走ったことでもわかるように、良い家庭を築けること=完璧な男女関係を作るというわけでもないと本作は説く。
(どちらも必要、と安易に主張するのは、あまりに男側の目線なんじゃない?とクレームを受けそうだから、本作では何がベストなのかを示さないのかもしれない)

カネがある男は何しても許されるの?

その描き方に、大きな違和感を感じることはなく、逆に強い共感を抱くこともないのだが、ちょっとどうなの?と首を傾げるのは2人の女が常に若いいい女に走ろうとする男に対してひどく寛容であることに対してだ。

2020年代の今の感覚では、猿カニ合戦ではないが、騒動を起こした当の本人である“恋多き男ニック”は、少しは痛い目に遭って反省するか罰を受けるべきではないか?と思うのだが、本作では 彼はなんの咎も受けず、許される。遊びに徹するならまだしも、結婚までしたうえで急に若い女に入れ込んで家庭を捨てる。そんなひどい男なのに、マリアもジェイドも彼に手痛い復讐を考えるわけでもないのである。

本作のヒロインであるジェイドは、元トップモデルであったという設定そのままに、身綺麗で周囲の(主に異性の)視線を意識した容姿を保ち、幾つになってもセクシーさを維持しようと努力しているが、同時に男への過度な依存を捨て、ビジネスパーソンとして自立した生き方を目指している。

また、良き妻良き母としてのみ生きてきたかのように見えるマリアも、高い教養を持ち、男女関係なく1人の人間としての魅力を持つ。2人の生き方や信条は違うが、どちらにしても弱いオンナ、という立ち位置に甘んじるつもりは毛頭ないのである。

だからこそなのだが、この2人に許されるニックはいったいなんなの?と思わざるを得ないのが、本作を観た感想だ。
欠点埋めてあまりあるほどの良さを持っているとは見えない・・・

結局のところ、カネがある男は何してもいいの?という疑問(それならそれで、男の身としては よしわかった!と得心できるわけだが)を残される、そんな作品である。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。