クラシックホラーの代名詞の一つ「透明人間」が、2020年公開の映画としてリメイク。今までは飲用薬による透明化の印象が強かった透明人間だが、今回は特殊スーツを着込んだ光学迷彩的なテクノロジーで姿を隠し、そろそろほんとに出てきそうな感じがしておっかない感を全開にしている。

映画『透明人間』予告編

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英国のSF作家H.G.ウェルズ原作のホラー小説を実写映画化 : ストーリー

主人公のセシリアは、光学テクノロジーのスーパーエンジニアにして大金持ちのエイドリアンの妻だが、超独占欲支配欲が強いエイドリアンの束縛に耐えかねて、彼に睡眠薬を飲ませて逃亡をはかる。

そのショックのためかエイドリアンは自殺するのだが、その頃からセシリアは目には見えないものの、自分を監視するかのような視線を常に感じるようになる。

まるでエイドリアンに見られているかのような執拗で粘着質の気配に、セシリアはひどく怯えるのだが、周囲の友人たちはそんなセシリアの不安を 杞憂と断じ、むしろ彼女の正気を疑うようになる。

しかし、実はセシリアが感じる気配の主は実在し、姿こそ見えないが、セシリアの精神状態を不安定に追い込もうとする意志を持つ、恐るべき透明人間なのだった・・・。

「透明人間」になってまで追いたい理由がちょっと不明??

前述したが、化学的薬品による透明化という印象が強い“透明人間”を、今回の作品では21世紀の映画らしく、現代的な科学テクノロジーの産物として描かれている。今回の透明人間は、「攻殻機動隊」や「プレデター」に登場する光学迷彩を思わせる特殊スーツを着ることによって、“透明化”というか環境に溶け込み姿を隠しているのである。

考えてみると、飲用薬品にしても特殊スーツにしても、魔法とか呪いのようなものではなく、理論を伴うテクノロジーの活用なので、透明人間という輩は、ホラー作品のモンスターというよりは、昨今のヒーローアクションの敵役として登場するヴィランのような存在なのだが、実体を隠しつつターゲットに迫りながら、やっていることは悪質なストーカーまがいの行為で、かつ、ターゲットを精神的に追い込もうとするその執拗さが、かえって不気味というか、気持ち悪さを感じさせるのだろう。

本作においても、ヒロインのセシリアが「なんで私にそんなにつきまとうの??金も力もあるあんたがなんで私なんかにそんなに執着するのよ!」と訴えるシーンがあるのだが、実際 観ている方としてもそれが疑問。

セシリア役の女優エリザベス・モスはきれいな人だとは思うが、確かにストーキングしたくなるほどの容姿ではないと思うし、実際 劇中でもそんな美人扱いされているわけでもない。見た目だけではなく、どこをどうとっても 金も知性も社会的な成功も手にしている男が執着する相手には見えないのである。

そこが怖い、ということでもあるのだろうが、ちょっと説得力に欠ける気がする。マーゴット・ロビーあたりを使った方が、より分かりやすかったのではないか?と感じるのは僕だけだろうか?

誰かが作りそうな技術の話だけになんだか不気味

とは言え映画自体はよくできていると思う。120分を超える長尺だが、それほど長さを感じさせない画づくりは制作チームの手腕の確かさを証明しているものだと言えるだろう。

また、今回 着ることによって姿を隠せる特殊スーツが登場したが、現代の科学でもそろそろ実現可能そうに思わせることにも成功しているように思う(それは制作者の意図するところではなかったかもしれないが)。
“アイアンマン”のスーツは、新作が公開されるたびに進化を遂げているが、この透明化スーツもまた、そんな感じで実用化に向けて開発が進められそうだ。まして、本作において、このスーツは3Dプリントされるのである。いかにもあり得そうな感じではないか?
軍需テクノロジーとしてみると、この透明化の特殊スーツはいかにも実際に研究しているチームがいそうで怖い。

その意味でいうと、平凡な女に妙に執着する男の執念も怖い(というかキモい)し、そのために自身の研究成果を使って透明人間になろうとする気分も怖い(キモい)のだが、何より怖いのが、そんな行為を実現してしまうテクノロジーがホントにありそう、と思えてしまうところ。金がある奴ならマジでやりそう、作れそう、と思えるのが、なおさら怖く感じさせるのだ。

あり得ない、と言い切れないところが、たまらなくイヤなのである。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。