第二次世界大戦下、ナチスドイツの捕虜となったソ連の戦車兵の決死の脱出劇を描いた、戦争アクション。ドイツの戦車パンターvs.ソ連の戦車T-34の激しくもリアルな戦車戦が話題に。

ナチスドイツの侵攻に耐えるソ連軍の戦車兵たちを描いた話題作

ソ連の新米士官ニコライ・イヴシュキン少尉と3人の戦車兵は、ナチスドイツの高級将校イェーガー大佐率いる戦車隊の猛攻を受け、捕虜となる。
彼らは最新のソ連製戦車T-34の性能確認のための模擬戦に駆り出されるが、ニコライは同じく捕虜であるがロシア語とドイツ語の通訳として働かされていた女性アーニャの助けを借りて、模擬戦用のT-34に乗ったまま捕虜収容所からの脱出を図る。

ニコライらの探索と確保にあたるイェーガー大佐と、必死に逃げるニコライと仲間たちの攻防の結末は??

キャタピラを生かして、自由自在に旋回したりドリフトしたりする戦車のリアルな動きが凄まじいと評判となった、ロシア映画の最高峰といえる作品だが、そんなカテゴリーを超えて観る人の度肝を抜く、戦車戦の激しさをただただ堪能できる、そんな一本だ。

人でなしだが美学はもっているドイツ将校にも注目

本作は、ナチスドイツの戦車隊の戦略を担い、模擬戦を企画したイェーガー大佐(ヴィンツェンツ・キーファー)と、ソ連の戦車兵を率いるニコライ・イヴシュキン少尉(アレクサンドル・ペトロフ)と一騎打ちというか、追うものと追われる者の立場を超えた、男たちの熱い闘いが見ものになっている。

ナチスドイツと、それに対抗する勢力、もしくはナチスの犠牲になった人々の姿を描いた作品は多いが、本作においては、ナチスの非道ぶりはあまり描かれてはいない。もちろん、ニコライら捕虜となった者たちが抱くナチスドイツへの反感や憎悪、もしくは敵愾心は相当なものがあるが、それでも敵国や侵略者に対する怒りはあっても、その残虐ぶりや異常性にはほとんど触れられていないのである。

決死の覚悟で逃走するニコライたちを追うイェーガー大佐は、冷酷な指揮官ぶりを発揮し、容赦なくニコライたちを追い詰めるが、そこには非人間的な性向を示すところはない。

彼はニコライらとの戦いにおいて、常に大いなる敵として立ち塞がるが、卑怯な振る舞いをすることはない。

本作は確かにナチスドイツ対ソ連の戦いを描いた作品であり、一般的な知識や常識ではナチスは常軌を逸した、残虐な集団のように思われがちではあるが、少なくとも本作では騎士道精神もしくはある種の美学をもった強敵として扱われ、主人公たちへの巨大な災厄として描かれている。

結果として、本作は、ある意味爽やかさを湛えた、男たちのクールでホットな戦いの図を描き出したエキサイティングでシンプルなアクション映画となっている。
戦争のつらさや悲哀を忘れてはならないが、本作はそうした負の側面をあまり感じることなく、ただただ 異なる信条に生きる男たちの激突を楽しめばいい。そんな作品なのである。


小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。