大ヒットした3Dアニメ映画「STAND BY ME ドラえもん」の続編。原作の中でも名作の呼び声高い“おばあちゃんのおもいで”をモチーフに、大人になったのび太と、愛するしずかちゃんの愛の帰結を描く。
©Fujiko Pro / 2020 STAND BY ME Doraemon 2 Film Partners

母親に叱られて、幼年時代に逃げ込むのび太

物語は、自分の誕生日なのに母親からひどく叱られたことで、自分を常に甘やかしてくれた祖母に会いに過去に戻ったのび太が、自分のお嫁さんを一目みたいという祖母の何気ない願いを叶えるため、今度は未来の自分の結婚相手を確かめにタイムマシンを使う、というもの。

原作中でもマニアの評価が高い「おばあちゃんのおもいで」をたたき台とした、オリジナルストーリーを、日本のCG映画の第一人者 山崎貴(監督は八木竜一とのタッグ)が3DCG化した。

日本の3DCGアニメーションはたいてい動きやキャラクターデザインがゲーム的で、質感はあっても全体的に鈍重で、ゲームをやらない者にとっては2Dのしなやかさの方が全然マシという感想を抱きがちと思うが、本作に限っていえば、3D化したことによって増したリアルさは、それほど違和感なく受け止められて、合格点を与えられるレベル。本作の3DCG化は成功と言えると思う。

しずかちゃんがのび太を選ぶ理由がわからなくなって混乱

とはいえ、ドラえもんとの別離や、ヒロインであるしずかちゃんとの愛の深まりによって、主人公のび太の精神的成長をわかりやすく確かめられた前作と比べると、続編となる本作は なぜしずかちゃんほどの(見た目も中身も良い)美女が一生の伴侶にのび太を選ぶのか?という理由がかなり希釈されており、ちょっと納得がいかない。(そこは漫画で、そもそものび太がしずかちゃんと結ばれるんだよ、と結論づけられたら話は終わる。また、その説明は前作でもう確認できたから、と言われたら、それはそうかと思わなくもないが、前作を皆が観ているとは限らないじゃないか。そのことを無視するのは、作り手の怠慢だ)

優しいおばあちゃんについては、ちょっと身贔屓すぎるんじゃない?あれじゃあお母さんの立場ないじゃない、と思わせるほど、のび太の全てを受け入れるおばあちゃんの描き方にも若干違和感があるが(原作通りといえばそうなんだけど、アニメ版はどうもより情緒感ありすぎというか、愛情というより単なる孫を溺愛しているだけのように見えるんだよなあ)、まあそこはよしとしよう。

ドラえもんの描き方は、まあこんなものかなと思う≒納得できるものの、やはり もう少しのび太の良さを観客にわからせる“力点”を用意した方が、作品としては上出来になったんじゃないかな、と思うのである。

前作ではそれなりの納得感を得られただけに、本作での軽い失望はひどく残念に思う。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。