連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部
地震にまつわる恐竜
日本の島国は各地でたびたび地震が発生していますが、皆さんの大事な人やものは大丈夫ですか?
これまで生田晴香の親戚の家が壊れて住めなくなったりはありましたが、うちにある恐竜は特に被害はなく、最近までなんとか過ごせていました。
ところがついにきてしまいました…
なんと!2021年秋の地震で陶芸の上村慶次郎さん作品のティラノサウルス花瓶が、横真っ二つに割れてしまいました…
接着剤で直りそうな感じはしますが、ショックですね…
このコラムを書きながらも地震が起きてます。いやですね、地震は。はい、ここで地震にまつわる名前がついた恐竜をご紹介します。
セイスモサウルス
ゾイドや恐竜ゲームなどにも登場する恐竜『セイスモサウルス』です。最近では知る人ぞ知る!という感じでなじみがないかもしれませんが、数十年と生きてる人には結構な知名度がある恐竜です。
首としっぽが長く、大きい恐竜というのは「竜脚類」というのですが、セイスモサウルスもその仲間です。お年寄りの方などは「首長竜」と呼ぶ人もいますが、首長竜は海の爬虫類のことを言います。首が長いからって何でも首長竜ではなく「陸の恐竜」竜脚類と言いましょう。
セイスモサウルスは、竜脚類が栄えたジュラ紀に、アメリカで生息していました。
しかし大きいですよね。あまりの大きさに「どしーん。どしーん。」と地響きを鳴らしながら歩いて来そうです。
1979年に発見され、アメリカ合衆国土地管理局の資金不足によりなかなか発掘されなかったものの、ニューメキシコ自然史博物館に発見のニュースを持ち込み、ついに1985年より発掘が開始されていきました。
長かったですねー。1986年には「ブラキオサウルス科の新属新種」ということがわかりました。
1991年にセイスモサウルスというニックネームがつき、ニックネームがそのまま名前(学名)となり「セイスモサウルス・ハロルム(Seismosaurus hallorum)」となりました。
名前には「歩くと地震が起きるほどの巨体」という意味が込められています。
発見が終わったのかと思いきや、実はまだ終わってません。既にクリーニングが終わったパーツから新種だと記載され、その恐竜は39~52mはあるのではないかと推測されました。(グレゴリー・ポールなど異論を唱える研究者多数)
1992年には発掘は終わり、あとはクリーニング作業です。
恐竜展で展示
それから「恐竜博2002」というセイスモサウルスがメインの恐竜イベントが幕張メッセにて行われることになり、そこで全身骨格を展示しようと急ぎでクリーニングが進められました。
クリーニング作業まだやってたんかい!とつっこみたくなりますが、ということは化石がいっぱい、全身発見された…ならばよかったんですけど、全身出ると期待されていたセイスモサウルスの化石パーツはそんなに発見されませんでした。
骨盤のかけらや血道弓、尾椎、頸椎らしき破片だけです。
まぁ全身発見されれば奇跡なようなものなのでそこまでとは言わずもいくつかは発見されたので良しとしましょう。それだけでもすごいことです。それが恐竜です!
イベントのために、ディプロドクスなど他の竜脚類を参考にセイスモサウルスの全身骨格の復元作業が行われていきます。
そこでなんと!新たな発見が!
原記載で第19~27番とされた尾椎はもっと近位のものであり、結果15~26番に割り当てられたのです。
ということは「そこまで尻尾は長くない」ということになりますね。結局セイスモサウルスの全長は約35mになりました。
恐竜博2002開幕
そしてついにイベントが幕張メッセでスタートしました。しかし、クリーニング作業はまだ終わっていませんでした。
会期中についにクリーニングが終了し、ここでまた新しい発見があります。
セイスモサウルスの座骨の先端はフック状に突出しているのが、ディプロドクス属と区別する上で重要な特徴だったのですが、それがなんと…
フック状の突出は尾椎の棘突起の折れたものが付着していただけということが発覚されたのです!
その特徴がなければ『ディプロドクス』という恐竜なんです。全長は33mと予想されます。だんだん短くなっていきますね。
というわけで、新種のセイスモサウルスという恐竜はいなくなり、セイスモサウルスだと思われてた子はディプロドクスとなったのでした。
それに気付いたのが「恐○くん」。セイスモサウルスが好きな人には申し訳ないからあんま言わないで欲しいと言っていたのですが、新しい発見にまんざらでもなさそうだったのでw軽く伏せておきつつ匂わせておきます。
2006年には論文が出て、セイスモサウルス完全終了です。お疲れ様でした。
いやはや、恐竜あるあるですね。シノニム、待ったなし!
トロオドンがメインの恐竜展ではトロオドンが会期中に消えてましたし、名前が消えるのであって化石が消えるわけではないのでいなくなったからってそんなに落ち込むことはありません。
あるあるですので。では!
生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。