年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき または観なくてもいい?映画作品を紹介。
美人女優 ニコール・キッドマンが捨て身の“野良犬刑事”を演じる『ストレイ・ドッグ』。

潜入捜査の最中に恋人&パートナーを失った女の復讐劇

美人女優として知られるニコール・キッドマンが汚れ役に挑戦。

彼女が熱演するのは、過去に行った潜入捜査の失敗からトラウマに悩まされる女性刑事ベル・エリン。特殊メイクで自慢の美貌を隠し、心労と睡眠不足に苦しむあまりに見る影もなく老けてしまった姿をスクリーンに張り付ける様は、同じく生まれながらの美貌を持ちながらそれに頼らない演技力と存在感を証明した、シャーリーズ・セロンを彷彿させる。

恵まれた容姿に頼らず(それだけに依存していたら、賞味期限が短すぎる?)、アクションをこなしシリアスな役からコミカルな役柄までなんでも演じられる多彩な演技派女優へと成長した女優、という意味では年下のシャーリーズ・セロンに水をあけられているように思うニコール・キッドマンだが(2人とも長身で、クールな美貌を誇ったという意味でポジショニングとしてはよく似ていると思う)、意識の高さでは決して引けをとっていないように感じる。

本作の彼女は、のちに恋仲に陥る男性捜査官と共に銀行強盗団に潜入したものの、結局犯罪を未然に防ぐこともできなかったうえ、恋人を死なせてしまう辛い結果に終わったため、やさぐれてしまう女刑事の役を、ハードボイルドなスタイルを徹底しながら見事に演じている。

不要なシーンは贅肉なんだと割り切ってほしい

本作では、かつての“失敗”を取り戻そうとする女刑事が、過去に潜入捜査に失敗した強盗団のボスとの対決に挑む?というあらすじが用意されているのだが、どうも全体的にぼやけていてストーリーに集中できないのが残念だ。主人公以外の登場人物が皆なんとなく曰くありげに描かれるのだが、そうした伏線は何一つ拾われずに、最後まで到達してしまうからだろうか。

そもそも映画作品は、脚本、演出、俳優の三拍子が揃って構成される芸術だと思うが、本作においては演出面で色々仕事しすぎて全体を台無しにしてしまっているような気がする。

ストーリーはいい、俳優(≒ニコール)も頑張っている、尺も90分強でコンパクト。なのにぼやける。
つまりは演出が悪い、ということなんじゃなかろうか。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。