年間100本を超える映画・ドラマ(連続シリーズを含む)作品を消費することから、1/100の映画評と名づけた連載。
世界が滅びる、逃れようのない死が半年後に迫っているよ、と予言されても信じない、あるいは気にしせず目の前の些事に拘泥し続ける人々の虚しいほどの阿呆さ加減を、シリアスとコメディの狭間で描いた異色作。
ジェニファー・ローレンスとレオナルド・ディカプリオ、さらにはメリル・ストリープやケイト・ブランシェットなどのトップスターが登場。

半年後の破滅の回避より、目の前の快楽の有無にこだわる人々の姿

地球を一撃で破壊する巨大隕石が近づいている。なんらかの対処をしなければ、半年後に巨大隕石は100%の確率で地球に激突する。

そんな破滅的な観測結果を発見し、その暗い事実に慄く天文学者(レオナルド・ディカプリオ)とその教え子(ジェニファー・ローレンス)は、ホワイトハウスをはじめ、隕石の衝突の回避策を検討できそうな当てを探し続け、テレビなどのメディアでも危機を訴えるが、誰もまともに彼らを扱おうとはしない。

映画をはじめ、これまでにさまざまなカタチで破滅への危機が描かれ続けて人々の神経は麻痺しており、さらにたいていは“誰か”が命を懸けてその危機を回避してくれる。人類はそんないるかどうかもわからないヒロイックな存在をなんとなく信じ、真の危機に対して不感症になっているのかも知れなかった。

大統領でさえも中間選挙対策を優先し、隕石がもたらすであろう恐るべき結果に無関心なことに無力感を募らせる2人だったが、どんなに必死に訴え続けても、誰も聞く耳持たないという切なすぎる真実にやがて絶望し、諦念の想いに蝕まれていく。

本作は、そのタイトル(Don't Look up。つまり ぜったい空を見上げるな、という意味)に象徴されるように、見たくない苦い真実にはフタをして、無かったことにしてしまえばよい、目の前の甘い蜜を舐め続けようという、刹那的な生き方に陥った人類を嘲り批判する、かなりブラックなコメディ映画である。

太り過ぎのディカプリオに幻滅?

本作では、冒頭に述べたように、レオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスという美男美女のスターを主役に配しているだけでなく、米国大統領役にメリル・ストリープ、人気テレビMCにケイト・ブランシェットなど、ピンで主役を張れる俳優たちをもって脇をがっちり固めている。

つまり非常に金のかかったメジャー作品であることは間違いないのだが、僕としてはそれとは関係なく、ディカプリオの太り方がとても気になった。彼は世間知らずで多少ウブな中年天文学者を演じ、世界的な発見(人類を滅ぼす隕石の衝突という暗い事実。さらに言えば実際に発見したのは、彼の教え子である女子学生なのだが)をしたことで、上にも下にも置かれないほどの人気と知名度を浴びて有頂天になってしまう。そんな様子に、太ったディカプリオの容姿はハマっているとも言えるのだが、やはりカッコいい人はカッコいいまま、デブという言い方は失礼極まりないかも知れないが、デブでもカッコいいのはごくごく稀。カッコいい人には鍛え抜かれた体型を維持してもらいたい、それが義務だろと思った次第。

この役柄に合わせての、役作りだったのかも知れないが、肥大化したレオ様の姿は、地球の暗い運命よりも暗く切なく見えてしまった、それが本作における僕の感想なのは、本筋から遠く離れて、映画内の多くの人々のように空を見上げて事実確認することを怠っている、ということなのかもしれない。

(ちなみ、ジェニファー・ローレンスも半年後の恐るべき破滅への恐怖と、その恐怖を人々と共感することができない苛立ちを上手に表現していたが、彼女自身の魅力が存分に出ていた、というほどではなかった?)

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。