テレビ局を辞めて漫画家を目指す、初老?の松ちゃん。 近所?に越してきた若夫婦のレストラン開業の手伝いを依頼されて?
Mr.Bike BGで大好評連載中の東本昌平先生作『雨はこれから』第78話「青の戦士」より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集:楠雅彦@dino.network編集部

近所?の若夫婦の手伝いを約束させられた松ちゃん

コーヒーカップ 50セットだって?
いや、そりゃあ窯で焼き物の真似事はしてるさ、だけどひとさまにお譲りできるような出来栄えのものはとてもじゃないが作ったことないよ。なに勝手に請け負ってんの?

「勝手に注文とったの、まだ起こってんの?」とリナは少し逆ギレ気味に言うが、私としては50セットもこなせるか、とても自信がなかった。怒るより先に、若夫婦たちの期待に応えられるかどうか心配だったのだ。

人生の大先輩からのアドバイスも素直に受けられず??

愚痴をこぼすのは私の主義じゃない。主義ではないが、この年になると歳上の友人は数少ないし、とても貴重だ。私はついコーヒーカップセットの話を行きつけのカフェ 炉煎のマスターに漏らしてしまった。

すると、マスターは破顔一笑して、いいんじゃないですか、と言った。「若い夫婦が頑張っているんでしょ?応援してあげたらいいじゃないですか」

ボードレールよりランボー

「そこまで達観したくないんです」と私は言い返した。少しムキになっていたのかもしれない。
私とて、若夫婦を支援してやりたいという気分がなかったわけじゃない。ないのだが、私だってまだ若い、というか青年時代の気分をそのまま引きずって生きているのだ、年嵩の余裕をみせるより、無我夢中で若さゆえの無鉄砲さを発揮して生きていたいのだ。

ボードレールの生き方より、ランボーのように生きたかったのだ。誰か、今からでも遅くないよと言ってくれ、年齢は関係ないよと言ってくれ。

楠雅彦 | Masahiko Kusunoki

車と女性と映画が好きなフリーランサー。

Machu Picchu(マチュピチュ)に行くのが最近の夢。住みたいぜ!